岸田首相の手のひら返し

以前にも書いたが、第二次安倍政権や岸田政権が発足後に「グローバル資本大歓迎」に転向した理由について再度書く。

そもそも、岸田政権の発足当初は「新しい資本主義」を掲げ、「金融所得に課税するなど、富裕層の負担を増やし、分配する」と言っていた。
それがいまや「資産運用特区を作り、資産運用立国を目指す」と言っている。手のひらを返すとはこのことで、当初とまったく異なる政策を推し進めている。

金融ビッグバンをはじめとする構造改革とは、日本経済をウォーラーステインがいうところのインターステイト・システムに組み込むものであり、ほぼ完了している。このシステムは金融資本主義(株主資本主義)によって動いているので、それに逆らう政策を行うことは極めて難しくなっている。

われわれが観念的に抱いてきたもうひとつの誤解は、国家主権にかんするものである。近代国家は、完全に自律的な政治体などでは決してなかった。つまり、国家というものは、ひとつのインターステイト・システムの不可欠な一部として発展し、形づくられたものである。インターステイト・システムとは、諸国家がそれに沿って動かざるをえない一連のルールであり、諸国家が生きのびていてゆくのに不可欠な合法化の論拠を与えるものである。

史的システムとしての資本主義』p.72

「これらの運動」とは労働・社会主義とナショナリズムの二つの運動で、どちらも自国の民衆・労働者の厚生を高めることを目指しているが、「あまりにも制約が多すぎる」ために骨抜きにされてしまうわけである。岸田首相の転向もこれに当たる。

しかし、これらの運動は、国家権力を掌握するという当面の戦略に成功を収めた途端に、資本主義的「世界経済」の枠内にある国家権力には、あまりにも制約が多すぎるという現実を思い知らされることになった。せっかく手にした国家権力を行使しようとしても、インターステイト・システムが作用していて、運動のほんらいの存在理由であった「反システム」の傾向を後退させる以外にないことになったのである。

『史的システムとしての資本主義』p.93

ペイルルヴァッドの見立ても同じである。

こうした収益性の追求の過程において、国家自体も大きく自治・統治権を失った。国家の統治する領土は、各国が移動する資本を誘致しあう場所と化した。

世界を壊す金融資本主義』p.110

これ👇は日本政府が消費税に固執する理由でもある。岸田首相への圧力は財務省よりもっと上からかかっている。

ヨーロッパでは、20年来、消費に対する税金である付加価値税(TVA)と労働に対する税金である所得税は増税されてきた。これらの税の対象となるものに共通する性格は、移動が簡単ではないということである。一方で、国家は気軽に移動できる資本に対しては減税している。資本に対しては減税、労働に対しては増税。企業に対しては減税、サラリーマンに対しては増税。すなわち、国家もまた、金融資本主義のさらなる強化に加担しているのだ。

『世界を壊す金融資本主義』p.111
ここでの所得税は勤労所得税と給与税(≒社会保険料)を指すと思われる。

Anywheresには減税、Somewheresには増税が、金融資本主義が席巻する世界のトレンドである。

日本が消費税を導入した1989年は44カ国だけが消費税を導入していましたが、いまは175カ国に及び、日本以外の国は軒並み経済成長して、国民の所得も上がっています。消費税は経済成長に悪影響を及ぼしてはいません。

これ👇が改革の成果。

JPX「株式分布状況調査」

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