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マネー・MMT

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MMTのルーツは新左翼思想
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#小林慶一郎

MMTは財政金融政策ではなく雇用政策の理論

現代貨幣理論(MMT)がわかりにくい/紛らわしいのは、その本質が労使の勢力均衡と「インフレなき完全雇用」を実現する雇用政策の理論であるにもかかわらず、財政金融政策の理論のように見せかけていることが一因ではないかと思われる。 MMTでは、企業は労働者を安く雇いたいので、売り手市場にならないように常に失業者のプールが存在する状態を保とうとするとされる(→恒常的なデフレギャップの存在を含意)。 しかし、失業は本人にとっても経済社会にとっても損失なので、公的セクターが社会的に有益

自国通貨建てでも「国が支払えなくなる」の意味

この番組で、森永卓郎の「国が自国通貨で支払不能になることはない」との趣旨の発言に小林慶一郎が不明瞭な反論をしていたが、本題ではなかったために議論が打ち切られたので、小林に代わって「国が支払えなくなる」ことを説明してみる。 例えば、日本政府が「国民1人当たり月30万円(2020年価格)を定額給付するために全額を国債発行→日本銀行の直接引き受けで賄う」政策を恒久的に続けると宣言して開始したとする。 GDPの約80%に相当する通貨供給の継続は必然的に激しいインフレを引き起こすの

BI財源論争:小林慶一郎×森永卓郎は小林の勝ち

この番組で、森永卓郎の「国債を70兆円発行→全額日本銀行が買い取り→国民に定額給付」を半永久的に続ける案を、小林慶一郎が「かなり同意できない」としたことから、財政破綻するか否かのミニ論争が起こった。 議論が噛み合わなかったのは、両者の破綻の定義が異なるためである。 森永の定義は債務不履行(デフォルト)なので、国債は自国通貨建て→中央銀行に買い取らせる→破綻はあり得ないことになる。 一方、小林の定義は「価格が上がって本来人々が求めていた消費財の価値を政府が保証できなくなる