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マネー・MMT

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MMTのルーツは新左翼思想
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2020年12月の記事一覧

中野本の「貨幣とは、何か」を検証

中野剛志の信者ビジネス本の問題点を検証する2回目。1回目はこちら。 貨幣とは、何か。これについては大きく分けて二つの説があります。 一つは、貨幣が物々交換によって発展したという「商品貨幣論」です。しかし、この「商品貨幣論」は間違いであるということが、歴史学や社会学あるいは人類学の研究によって判明しています。 もう一つの貨幣の考え方は、「信用貨幣論」というものです。「信用貨幣論」とは、貨幣を「商品」ではなく、「負債の一種」と考える説で、結論から言えば、「信用貨幣論」が正しい

反緊縮派の日銀批判の妥当性

先日の記事の続編。要点を先に書くと、 リーマンショック後に米欧の中央銀行に比べて日本銀行の金融緩和が不十分だったように見えるのは、米欧では「取り付け騒ぎ」対策が必要だったが日本では不要だったため。日銀は景気対策として利下げしているので漫画の「『注視』するだけでほぼ手を打たなかった」は事実に反する。 「翁-岩田論争」は、当時、日銀スタッフであった翁邦雄と上智大学教授であった経済学者の岩田規久男との間で行われた論争である。 この論争が始まった時、おそらく日本の債券市場で実務

過去最大の「ワニの口」は杞憂

コロナ不況対策で国の財政の「ワニの口」が拡大したことを懸念する記事(⇩)だが、財務省の見通しの数字は杞憂であることを示している。 2020年度の一般会計歳出は国債の借り換えに回る債務償還費を除いても160兆円と、2010年代の80兆円強の2倍近くに急増し、2021年度も90兆円を上回ることになる。この歳出を賄うための新規国債発行額も2020年度は空前の110兆円超、2021年度も2013年度以来の40兆円超となる。 2021年度末の普通国債残高は990兆円に達する見通しだ

「MMT理論」を批判する有識者の誤解

財政・金融の「有識者」が知識不足を露呈している。 「MMT理論」からして問題だが、二点をピックアップする。 一点目は日本銀行が金利上昇(→国債価格下落)や株安によって債務超過に陥ると、大幅な円安→高インフレ→財政破綻になるというものである。 中央銀行の債務超過は、国が国民の税金を原資に補填しない限り、埋めることはできない。元来、世界最悪の財政事情にあったわが国において、異次元緩和という“事実上の財政ファイナンス”に手を染めた結果、目下のところは一見、平穏が保たれているよ