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過去最大の「ワニの口」は杞憂

コロナ不況対策で国の財政の「ワニの口」が拡大したことを懸念する記事(⇩)だが、財務省の見通しの数字は杞憂であることを示している。

2020年度の一般会計歳出は国債の借り換えに回る債務償還費を除いても160兆円と、2010年代の80兆円強の2倍近くに急増し、2021年度も90兆円を上回ることになる。この歳出を賄うための新規国債発行額も2020年度は空前の110兆円超、2021年度も2013年度以来の40兆円超となる。

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2021年度末の普通国債残高は990兆円に達する見通しだが、日本国は貸し手よりも長く存続する永続的存在なので、満期になった国債は借り換えを繰り返して債務の完済を半永久的に先送りできる。従って、国民が公的サービスの対価として支払う「国民負担」としては発行時の金利と利払費だけを考慮すればよいことになるが、国債の大量発行にもかかわらず金利は超低水準で利払負担も微増に留まる見通しである。なお、現在の国債金利は日本銀行のyield curve controlによって引き下げられているが、それがなくても低水準であることは確実である。

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この動画の44:00~で藤井聡が「債務対GDP比」を財政規律に用いることに賛成しているが、財政の持続性は債務のストックの国債残高ではなくフローの利払費と発行時の金利なので、これも適切ではない。

財政破綻とは「借入を原資にした支出が過大になる→財・サービス不足が深刻化する→悪性インフレが止まらなくなる→債務不履行and/or超緊縮財政政策に追い込まれる」ことだが、現在の日本経済はそのような状況からは程遠い。財政破綻を懸念するよりも、財政支出を出し惜しみして経済が回復不能な打撃を受けることを懸念するべきである。

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