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マネー・MMT

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MMTのルーツは新左翼思想
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2019年12月の記事一覧

MMTerと積極財政派の事実誤認

年末なので、MMTer、積極財政派・反緊縮派が「目から鱗」の誤りを犯している二点について再掲する。 一つ目は、政府が国債を発行して財政支出をすると同額の民間預金が生まれるというMMTerの主張について。 政府が赤字財政支出をするにあたって国債を発行し、その国債を銀行が購入する場合、銀行は中央銀行に設けられた準備預金を通じて買う。この準備預金は、中央銀行が供給したものであって、銀行が集めた民間預金ではない。そして、政府が財政支出を行うと、支出額と同額の民間預金が生まれる。つ

ただの紙切れの1万円札に価値がある理由

意識高い系の国会議員がカルトに引っ掛かったようである。 株券(現在は電子化されたので紙切れではなくなっているが)に価値があるのは、その企業が将来に稼ぎ出すキャッシュフロー(稼ぐ力)に裏付けられているからである。同様に、銀行預金に価値があるのも銀行の資産(貸出や有価証券)の「稼ぐ力」に裏付けられているからであり、中央銀行券に価値があるのも中央銀行の資産(国債や外貨等)に裏付けられているからである。 日本銀行が発行するマネー(銀行券と当座預金)の主な裏付け資産は国債だが、国債

現代貨幣の創られ方とMMTの事実誤認

現代のマネーは素材(紙やプラスチック)そのものはほとんど無価値の銀行券や、銀行の帳簿上の情報で物理的実体のない預金の信用貨幣だが、何らかの価値のある「資産」が裏付けになっている点では、金貨や銀貨など素材に価値がある実物貨幣(商品貨幣)と変わりがない。 例えば、普通の勤め人が銀行から住宅ローンや消費者ローンを借りる場合には、銀行はその勤め人の稼得能力を裏付けとして預金通貨を発行する。 From an economic viewpoint, commercial banks

銀行の信用創造/MMTの国債廃止論

マネーに関する記事を三つまとめて取り上げる。 銀行は無から預金を創造しているのか銀行がバランスシートを両建てで拡大させる信用創造では、預金は無(out of thin air, ex nihilo)から創られるのではなく、資産から創られるという内容である。 When banks create money, they do so not out of thin air, they create money out of assets – and assets are far

MMTの教祖ミッチェルのデタラメ日本経済分析

MMTの教祖ビル・ミッチェルがまた日本経済に関して無知をさらけ出した記事を書いていたので、また指摘することにする。以前の記事と重なる内容になることをお断りしておく。 前編では1972年の調整インフレ論に言及しているが、これは1998年にクルーグマンが"It's Baaack"で提唱した"managed inflation"とは全く別物であり、なぜ取り上げているのか意味不明である。 クルーグマンへの批判も的外れである。 Krugman also claimed that

れ新の「新規国債発行可」の説明を書き直してみる

れいわ新選組の山本太郎代表が動画の1時間46分頃~で通貨システムについて(おそらく、俗流MMTに基いて)説明しているが、「日銀当座預金」「預金準備率」「信用貨幣論」など素人には馴染みがない用語が頻発する上に、矛盾点・不正確な点もあるので、成功しているとは言えないようである。 そこで、関係者でも支持者でもないが、「国の借金」が1100兆円を超えていても、国債増発→財政支出拡大を正当化できることの一般人向けの説明を考えてみる。これまでの記事の内容のまとめ直しであることをお断りし