絶食と老化
東北地方の地震の被害に遭われた方に、お見舞い申し上げます。
また論文を出すことができた。Yoshimori Lab、絶好調と言って良い。メンバーの頑張りのおかげである。嬉しく、またありがたいことだ。プレスリリース
生命科学研究の世界では、優れた論文を出すことが唯一無二の評価となる。いくらテレビやネットに出ても、本がベストセラーになっても、論文を出さないと研究者としては評価されない。
そしてここで言う論文とは、信頼されている学術誌に投稿され、数名の同じ分野の専門家による審査(ピアレビューという)をパスしたもののことだ。
膨大な実験を積み重ね、そのデータを解釈してストーリー(仮説)を組み立て、それを英語で論文に書き投稿して、審査員に言われた追加実験を行うなどして再審査を受け、ようやく日の目を見る。
労力と時間のかかる作業だ。この論文のシステムについては、拙書『ライフサイエンス』で詳しく述べている。
今回の論文では、脂肪細胞のオートファジーに関する新たな発見を報告している。食事を取れず飢餓状態になると、脂肪組織から中性脂肪が放出され、肝臓がそれを取り込んでケトン体を作る。ケトン体は緊急時の栄養として使われる。
その仕組みは判っていなかったが、我々は、絶食時にはオートファジーが促進され、脂肪の蓄積を指令するたんぱく質を分解するので脂肪が放出されることを突き止めた。
興味深いのは歳を取ると普通に食事を摂っていても同じことが起こることだ。絶食時には脂肪細胞から脂肪放出は栄養源となるケトン体産生に必要だが、老化の場合は栄養はあるので脂肪肝という病気の原因になってしまう。
なぜ絶食していないのに老化するとそんなことが起こるのかはまだ分かっていないが、その研究が進めばお年寄りに生活習慣病が多い理由がわかり予防や治療に役立つかもしれない。
この研究は、今ハーバード大に留学中の元大学院生のMountainRoom君が行った。彼は3つの論文を立て続けに発表した。見た目のおっとり感と裏腹に超優秀。MountainRoom君、おめでとう、よくがんばった。
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