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共通テスト「情報Ⅰ」試作問題などの感想 (2022/11/09)

2022 年 11 月 9 日,大学入試センターは「令和7年度大学入学者選抜に係る大学入学共通テストの 問題作成の方向性及び試作問題等について」を公表しました.

2025 年 1 月からの新たな出題科目「情報」については

が公表されました.これらを見て,解いて,感じたことを note にまとめてみることにしました.一問一問を丁寧に味わっていきます.各問題がどんな意図で出題されているのか,すなわち生徒は授業を通してどんな力を身に着ける必要があるのか,という観点に特に重きを置いていきます.

なお,そもそも情報Ⅰでどのようなことを学ぶのかについてご存知ない方は,拙文で恐縮ですが 「情報Ⅰ」のパソコン実習まとめ|主体的・対話的で深い学びの実現のために も併せてご覧ください.

概要「情報」

試作問題の各問が学習指導要領のどの部分と対応しているか,どのような出題意図であるかが書かれています.また,試作問題『情報Ⅰ』と試作問題『旧情報(仮)』は問題の一部が被っているのですが,その対応関係もわかります.

Python 風 DCNLの簡単な仕様も載っていますが,こちらは後述します.

試作問題『情報Ⅰ』

第 1 問

第 1 問は小問集合になっています.

問 1 - a:SNS,メール,Web サイトを使用する際の注意点が問われている身近な問題です.情報セキュリティや知的財産権などいろいろな範囲の理解がこの 1 問で問われていて凄いです.😄

問 1 - b:インターネット上の情報の信ぴょう性を確かめる方法が問われているのですが,ちょっと不満です.0, 1, 2 は情報の信ぴょう性の評価方法として明確であるのに対し,3 は「比較・検証してから判断する」とぼやっとしていて結局のところ判断の方法を書いていないように感じます.「書籍や複数の Web サイトに掲載されているかどうかで判断する」なら明確度は同じくらいになると思いますが,こういう書き方をすると今度は「全部偽サイトだったら? 情報が食い違っていたら?」といったツッコミが入るのでしょうか.そもそも出題に無理があったのかもしれません.🤔

問 2:パリティチェックに関する問題です.前提知識が無くても解けるように誘導が丁寧になってはいますが,知らないと考察するのに時間もかかるし合っているか不安になりそうです.知っていたら瞬殺できます.情報Ⅰの教科書 (の少なくとも何冊か) には載っていますが,概要の文書によれば「問題文から読み取った内容を踏まえて考察すること」を想定しているようです.😲
さらに,情報通信ネットワークの分野からの出題がたったこれだけでというのは少ないように感じました.🤔

問 3:論理回路や真理値表がこんなにしっかりと出題されるとは.各素子の真理値表などが載っているとはいえ,論理回路の入力と出力の考え方や,3 入力 OR を 2 入力 OR の組み合わせで表現する設計のテクニックなど,前提スキルを持っていないと解けないと思います.加算器を自分で作ってみるような活動を授業内できちんと行っていたかが大きく影響しそうです.😲
話題はとても身近です.こういった例を知ると情報的な見方が日常にも及んできますよね.😄

問 4:「究極の 5 つの帽子掛け」初めて知りました.情報デザインの分野はどうやって問題を作ったら良いのか難しいと思いますが「誰かの理論を引っ張ってきて,それを当てはめてみる」というのは典型的な良問出題パターンになりそうです.😄

概要の文書にも書かれているように,第 1 問全体を俯瞰すると 4 つの領域からバランスよく出題されています.😄
その結果として「(1) 情報社会の問題解決」からの出題が試験全体から見ると少ないようにも感じられますが,学習指導要領によればこの領域は「科目の導入として位置付け」られており,他の領域の基礎になっているとも考えられるので,問題無いのかもしれません.

第 2 問 - A

二次元コードに関して生徒と先生の会話を読み小問に答えます.もっと身近なあちらの呼び方の方が商標登録されているのは有名ですね.

問 1:常識問題という感じがします.概要の文書によれば知的財産権に関する知識もベースにして考察することを想定しているようですが,実際は常識や会話文の読解力に依存する部分の方が大きく,情報Ⅰの学習の達成度の程度を判定できているのか疑問が残ります.②も例えば管理を厳密にして質の低いコードやスキャナが出回らないようにしたことで,その良さが利用者に正しく伝わったという説は無理なく立てられるのではないかと思います.🤔

問 2:どうすれば解けるのかわかりません.⓪は問題文と明らかに矛盾しているので省けますが,残りが難題だと感じました.位置検出アルゴリズムの説明が不足しているように思います.3 つある二重の正方形のそれぞれで二次元コードの角度を推定してその平均を取る,とかであれば①もあり得ると思います.③は何を正しく読み取れないのか,すなわち二重の目印なのか二次元コード全体なのか,不明で判断に困ります.正解は②ということになっていますが,多くのプリンタはドットを並べて印刷しているのでベクター形式の円形の方が印刷しやすいのではないかと素人ながら思ってしまいました.選択肢の作り方が良くなかったのではないかと思います.🤔

また,次のようなご意見もありました.

問 3:これも出題意図が曖昧ですが,強いて言うならデータの活用の問題でしょうか? いくつかの選択肢には疑問が残ります.⓪の「比例」というのが y = ax に限らない日常的な増減関係の表現だと捉えれば,⓪も誤りではないように思います.④の「より多くの情報が必要となる」も怪しく,前出のパリティビットのようなものを付加しているだけなら別に本質的な情報量は増えていないようにも思います.🤔

問 4:答えを一意に絞ることができないように思います.雑な表記で申し訳ないのですが,
オ ≦ 29 ≦ カ
^  ^  ^
||  ||  ||
33 ≦ キ ≦ ク
と考えた際にカとキが 33 と 37 で絞り込めません.
さらに,解答群からちょうど 1 回ずつ選択することが問題文から読み取りづらく,無駄にセルサイズを変更するミスリーディングまで入っています.🤔

次のようなご意見もありました.

※ 追記:2022年12月23日に問題文が一部訂正され,「復元能力7%と 30%のそれぞれにおいて 作成された二次元コードのセルの数は,Ⅰ~Ⅲの文字列で異なっていた。また,」という文言が追加されたため,答えが一意に定まるようになりました.

さらにこれは余談ですが,図 4 においてページ上部のヘッダとブラウザのタブがくっついてしまっている,レベル Q とレベル H の間のラジオボタンがほぼ中央に配置されていてどちらのものかわかりにくい,ウィンドウ左上の 3 つのボタンのうち中央のものがモノクロ化で視認できなくなってしまっているなど,情報デザインの観点から好ましくないのではないかと思われる点がいくつもあります.🤔

出題意図が不明瞭で選択肢を絞り切れないなどツッコミどころが多すぎて悪問と言わざるを得ないのではないかと思ってしまいます.🤔🤔🤔
自分の知識不足も疑われるため,お気づきの点がありましたらやさしくご指摘いただけると幸いです.

第 2 問 - B

文化祭の模擬店について 1 日目を踏まえて 2 日目の運用を改善するという身近な話題です.1 日目の記録をもとに客の行動の分析とシミュレーションを行います.(記録係をする暇があったら客の対応を手伝ったら・・・というのは禁句でしょうか.)

問 1:表 1 の人数の合計を求めたら 50 人だったのですが,最初の 50 人の客からどうやって 50 回分の到着間隔を求めたのか謎です.1 人目の客に到着間隔という概念はあるのでしょうか.
階級値で考える部分などは理由も明確にしていて,生徒がデータの活用の発表等を行う際にも表現の参考になりそうです.😄
問題の解答はそこそこ難しいです.問われている語彙の定義を確実に確認し,落ち着いて表を見て,丁寧に図に書き込みをしていく必要があります.

問 2:棒グラフから読み取れないことを選ぶ問題ですが,複数の棒グラフ間の関係性も見る必要があります.不正解の選択肢 (つまり棒グラフから読み取れること) は分布の特徴を理解するうえでどれもとても良い気づきだと思います.①だけ筋が悪いことはデータの活用に熱心に取り組んでいたらすぐ気づけるかもしれません.😄

問 3:前の問のように分布に対して「ピークはどこか」「散らばり方はどうか」といった見方を持っておくことで簡単に解けます.ちょっと希望的観測にはなりますが.😄

話題が日常的で,モデル化とシミュレーションの方法やグラフによる可視化にも無理がなく,高校生の等身大という感じがします.授業での学びが活かせる素晴らしい問題だと感じます.「モデル化とシミュレーション」と「データの活用」を組み合わせた出題は典型パターンになりそうです.😄

第 3 問

支払う小銭の枚数とお釣りの小銭の枚数の総和が最小となるなるような払い方を見つけるプログラムを生徒と先生が書いていきます.

些細なことですが,第 2 問 - A の会話文は話者の生徒と先生に名前が付けられていたのに対し,こちらでは S と T で表記されています.その問を担当された先生の違いが表れていますね.

問 1:早速関数が出てきました.関数は情報Ⅰのプログラミングで押さえておきたいポイントで出題は必然ですが,難度的に大問の最後の方に出てくるかと思っていました.一方で,設計の観点では早めに関数に切り出しが方が良いので,最初から出てくるのは自然だと思い直しました.授業でもきちんと扱っておかないと,問題文を読解できずに大問を丸ごと落とす可能性がありますね.😲
長い会話文をきちんと理解し,関数の概念も会得していれば解答は簡単です.😄

問 2 前半:「もう少しヒントが欲しいなぁ」と先生にねだる生徒,可愛いです.日本の硬貨の場合は貪欲法が使えますが一般にはナップサック問題に帰着されるので,先生がヒントを出しているのは適切です.DNCL の整数の割り算の記号について説明している点もそうですね.特に割り算の余りの演算は生徒には慣れないもので,授業でもまさにこういった例を使って説明しているのではないかと思います.そうだとすれば,授業での学びが活かされる問題です.😄
ただ,Scratch だと整数除算の演算子が無いので初見になって辛そうです.そもそも情報Ⅰにおいて制御構造ではなくこういった細かな演算子の概念を習得することが目標となっているのかはわかりません.🤔

問 2 後半:[キ] は問題文中にある配列の添え字が 0-origin であることの説明を読んでいるか問うているような面もあり,ややこしいのであまり好きではないです.情報関係基礎の DNCL でも 0-origin と 1-origin が混在していました.今回の概要の文書には添え字は 0 からと明記されており,これから Python 風 DNCL で作られる入試対策問題で演習してきた生徒は間違えないのかもしれませんが.Python,JavaScript は 0-origin.VBA はどちらでも.Scratch,高校数学の数列は 1-origin.嫌ですね.[ス] の複合代入演算子 += を使わない辺りは学び方の好みが分かれそうです.学ぶ演算子の種類を減らすべきか,楽でモダンな書き方を取り入れていくべきか.😲

問 3:よくある最小値の線形探索のプログラムです.これも min 関数を使えば条件分岐を見かけ上無くせるという指摘はありそうです.出題されている書き方を授業で扱っていれば簡単に解けます.😄

本問の内容はいたって標準的だと思いますが,その標準を示してもらえたという点でとても有用だと思います.繰り返しの中に条件分岐が入る入れ子まで書けるようになるべきとか,降順の繰り返しも使うとか,関数の利用と定義の重要性だとか,そう言いつつ min 関数を使わない古い実装方法への理解も必要だとか,情報Ⅰでどこまで学ぶべきかがかなり明らかになった (それもそこそこレベルが高い) と言えると思います.😄

第 4 問

スマートフォン・パソコンなどの使用時間について,国が公開しているオープンデータをもとに分析していきます.

問 1:欠損値や外れ値の扱いについて注意が書かれています.現実のデータを扱う以上,授業でもこういった点は丁寧に押さえたいですね.仮説を立てる部分ではやはり複数の表を見比べる必要が出てきます.複数の資料を活用する能力は必須となってきていますね.解答は簡単です.😄

問 2:箱ひげ図の読み取りです.数学科においては,今回の新学習指導要領改訂で箱ひげ図が高等学校「数学Ⅰ」から中学校第 2 学年に移動されています.本問は新課程で学んだ中学生でも解けるような簡単な問題になっていると思います.情報Ⅰの出題として物足りないかもしれませんが,現実の探究活動においては簡単なことでもできることから着実に進めていくのは大切だと思います.そこで見つけた仮説が次の分析に繋がりますし.解答に際しては選択肢で問われている時間を図に線で引いたり,選択肢の文の誤りの部分に下線を引いたりすると解きやすいと思います.😄

問 3:またも箱ひげ図です.選択肢の文面が正確性にかなり気を使って書かれているのが伝わってきます.何が図示されているのか理解できれば解答は簡単です.😄

問 4:散布図に負の相関がみられるそうで,負の相関の解釈が問われています.相関の定義を知っていれば簡単です.😄
ここで注意すべきなのは「読み取れることを答えよ」ではなく「負の相関の解釈を答えよ」という問題文になっている点です.これを見落とすと選択肢が絞れなくなります.

問 5:ついに来ました回帰直線です.残差といった用語も説明付きで出てきており,残差をもとにまた新たなグラフを作成しています.軸も変わって正規化もされており,グラフが何を意味しているのか理解するのが大変です.ラスボスという感じがします.外れ値の定義や残差の符号を丁寧に追えば解けます.😄

全体的に標準的な出題で,難易度も少しずつ上がっていく解きやすい構成になっていたと思います.😄
ただ,出題内容にやや偏りがあるように思います.学習指導要領では「データの収集,整理,分析及び結果の表現の方法を適切に選択し,実行し,評価し改善すること」となっています.つまり探究活動全体のプロセスを行うことが求められているわけです.この観点から見ると,例えば「こんな仮説が立ったのだがどんなデータを収集すれば検証できそうか」「元データの表はあるのだが,どんなグラフに整理すると良さそうか」「グラフにしてみたのだが仮説を検証できなかった,なぜか,ここから手を加えるならどうすればよいか (評価と改善)」といった出題があっても良いのではないかと思います.本問はあまりにも分析の部分ばかり出題されているような印象を受けます.🤔

なお,元データを確認すると,外れ値の定義が不自然である可能性も見えてくるようです.生態学的誤謬についても指摘されています.

第 4 問 (参考)

どういうわけか第 4 問だけ参考問題があってもう 1 題遊べます.

エアコンとアイスクリームの売り上げと季節の関係性を調べていきます.花子さんが授業で与えられた課題に取り組むという探究活動に即した設定になっています.

問 1:折れ線グラフの読み取りです.季節性がよく表れた面白いグラフで,選択肢の内容もその特殊性を踏まえています.😄

問 2:移動平均についてその幅をいろいろと変えたグラフの中から 12 か月のものを選ぶ問題です.最も周期性が取り除かれているようなグラフが 12 か月移動平均だとわかります.他の選択肢も特定できるのでしょうか? 移動平均は感染者数を表す際にも用いられるなど身近になっており,生徒にも知っていてほしいところです.教科書には載っていなかったと思うので,授業内の雑談力が試されるかもしれません.😄

問 3:こんな分析手法があったのかと感心しました.問 2 の解答の根拠がこここにあるという感じです.😲

問 4:これもこんな手法があったのかと思いました.問 1 の解答をさらに発展させて予測にまで結び付けようとしています.😲

問 5:複数のグラフを並べて複雑に図示されています.さらにそれを関係図に落とし込んでいくのが問です.関係図は授業で扱っているのでしょうか.初見でも落ち着いて状況を理解して解くことが求められます.😄

参考問題の方の第 4 問は小問ごとの繋がりがより明確です.前の問を踏まえて新たに出てきた仮説を検証している,あるいは前の問の答えを補強しているという問題解決のサイクルが見て取れます.問題を解く際も全体のストーリーを踏まえることが重要ですね.😄

余談ですが,このデータはかなり面白いなと思いました.アイスクリームは人間の欲求の赴くまま,暑いときにたくさん売れるのに対し,エアコンは夏真っ盛りになる少し前がピークになるんですね.夏になってから買っても手遅れで,施工待ちになるかもしれません.そういった生活の感覚を持っていると身近な話題の問題は間違えづらくなるのかもしれません.

全体を通して

身近な話題からの出題も多く難易度も適切で,授業内の活動がそのまま活かされるような良問が多かったのではないかと思います.入試対策にこだわらず日頃から問題解決の活動に取り組んでいることが重要ではないかと思います.😄

大問構成を見ると,
第 1 問:小問集合 (各領域から 1 問ずつ)
第 2 問 - A:情報のデジタル表現 (?)
第 2 問 - B:領域横断的な問題解決 (データの活用,モデル化とシミュレーション)
第 3 問:プログラミング,アルゴリズムによる問題解決
第 4 問:データの活用による問題解決
と整理できます.分野別に見ると,
・情報セキュリティ (『旧情報(仮)』では出題)
・情報のデジタル表現 (『旧情報(仮)』では多い)
・情報通信ネットワーク (『旧情報(仮)』では出題)
・データベース
辺りは出題が少ないか全くない状態でした.どうしても問題数の関係で 1 回分の試作問題には入れ切れなかったのではないかと思いますが,上記の一部分野は『旧情報(仮)』の試作問題に含まれており,そのような問題を『情報Ⅰ』でも出しうるというメッセージなのではないかと感じます.第 1 問,第 2 問の内容は流動的で,この枠で年ごとにシャッフルしてまんべんなく出題するのではないかと予想します.

配点のバランスについてより詳細には次のようになっています.

試作問題『旧情報(仮)』

旧課程の「社会と情報」「情報の科学」を履修した人を対象とした経過措置として 1 年だけ「旧情報(仮)」が出題されることになっています.その試作問題です.いつになったら(仮)は取れるのでしょうか.

「社会と情報」「情報の科学」に共通する必答問題とそれぞれ固有の内容に対応した選択問題があります.高校生時代にどちらの科目を履修したかとは関係なく選択問題を選べるようです.

第 1 問 - A (必答)

小問集合です.

問 1 - a:『情報Ⅰ』の第 1 問 問 1 - a と同じ (インターネット利用の注意点).

問 1 - b:『情報Ⅰ』の第 1 問 問 1 - b と同じ (情報の信ぴょう性).

問 2:『情報Ⅰ』の第 1 問 問 2 と同じ (パリティチェック).

問 3:モールス信号です.2 進数に見せかけて実は無音の区切りがあるからそうではないというモールス信号の性質が会話文によく表れています.授業内で実際にありそうな受け答えです.😄

問 4:動画のデジタル表現に関して通信量などを計算するよくある問題です.ビットとバイトとか,倍率の楽な計算とか,授業で練習していれば解けます.😄

全体的に旧課程らしい構成ですが,『情報Ⅰ』の方でも出題されうる内容なので,生徒は差分も追加で解いておくと良いと思います.

第 1 問 - B (必答)

『情報Ⅰ』の第 2 問 - A と同じ (二次元コード).

第 2 問 (第 2 問・第 3 問のいずれかを選択)

情報の科学の履修を想定した選択問題です.

『情報Ⅰ』の第 2 問 - B と同じ (文化祭の模擬店).

第 3 問 (第 2 問・第 3 問のいずれかを選択)

社会と情報の履修を想定した選択問題です.

画像素材の利用や公開に関する知的財産権が扱われています.

問 1:フリー素材の利用規約を読み取る問題で,高校生に限らずすべての人が解けてほしい問題です.😄

問 2:各権利の名称と意味を理解していれば簡単に解けます.

問 3:CC について説明を読んで理解し,ちょっとした計算をします.簡単です.

大問全体を通してひねりもなくとても簡単です.現実に即しています.知的財産権ばかり出しすぎにも思いますが.

第 4 問 (必答)

家庭でのネットワーク構成や情報セキュリティなどを扱います.頑張って描いたと思われる手書きの図まで出てきて本格的です (筆跡で作問者がばれないのでしょうか?).

問 1:ルータの名称と働きを答える問題です.知っていれば解けます.😄

問 2:SSID が何であるかを答える問題です.知っていれば解けますが,少し細かくてそこまで授業で扱っているかどうか疑問です.

問 3:ルータで設定できる情報セキュリティ対策を尋ねる問題です.ルータの管理画面に繋いだ経験があるなどすれば解けますが,普通の高校生には難しいかもしれません.

問 4:通信量や情報セキュリティについて誤りを見つける問題です.これは簡単に解きたいところです.😄

ただし,丁寧に見れば次のようなご指摘もありました.

問 5:暗号化や盗聴について正しい説明を選ぶ問題です.生徒は①と②で迷うかもしれません.

問 6:ルータの WAN ポートと LAN ポートの違いを知っているかの問題です.WAN や LAN といった用語は扱っていると思うので推察して解きたいところです.😄

問 7:文字数や記号数をもとにパスワードの個数を計算します.情報セキュリティの授業の導入としても使えそうな話題です.😄

問 8:情報セキュリティ対策として自動ロックや多要素認証を知っているか問われています.生徒にも身近な話題だと思うので簡単です.😄

問 9:機密性,完全性,可用性について適切な対応策を選びます.定義が書かれているので簡単です.😄

問題数がかなり多いのですが,一問一問はそれほど考えることもなく,知っていればすぐに解けます.思考というより知識や常識を問われているような印象です.

第 5 問 (第 5 問・第 6 問のいずれかを選択)

情報の科学の履修を想定した選択問題です.

『情報Ⅰ』の第 3 問と同じ (釣り銭のプログラム).

第 6 問 (第 5 問・第 6 問のいずれかを選択)

社会と情報の履修を想定した選択問題です.

アンケートとその分析を中心とした問題解決全体の過程について問われています.

問 1:ブレインストーミングの会話文から良くない発言を選びます.なんちゃってブレインストーミングではなく,ルールをきちんと守って授業内で活動していれば解けますね.😄

問 2:Web によるアンケートを実施する際の注意事項のようなものが選択肢に並んでいます.授業内でアンケート実習を行っていれば解けますね.😄

問 3:調査の目的と照らし合わせてアンケートの原案に改善を加える問題です.アンケートを作る際中の活動にとても即しています.授業内でもアンケートの内容を振り返るような活動を行ってサイクルを回していれば解けますね.😄

問 4:アンケート結果の表を読み取る問題です.表が 4 パターンも並んでいて,丁寧に見ていく必要があります.正しい解釈を行う能力が問われています.😄

問 5:分析の目的と合わないグラフを作ってしまったという場面です.今あるグラフではなぜダメなのか,代わりにどんなグラフを作れば良かったのか問われています.まさに『情報Ⅰ』第 4 問の総括に書いたような問題が出題されています.😄

問 6:テキストマイニングの基本として単語の出現頻度を見ることを知っているか問われています.テキスト分析の経験があれば解けます.😄

問 7:不快な広告を減らす方法が問われていて正解が「フィルタリングを使う」なのですが,どこまで効果があるのかは疑問です.他の選択肢と比べれば選べはするのですが.🤔

問 8:わかりやすい発表資料作成に向けたポイントが問われています.これもぜひ解けてほしいところです.😄

全体の構成が素晴らしいと思います.情報を活用した問題解決のプロセスを最初から最後まで通しで扱っており,非常に参考になります.😄
ただし,幅広く様々な場面が出題されています.授業に際してはもちろん生徒が主体的にこういった活動に取り組むことも重要ですが,それだけでは偏りが生じる可能性があるため,教員が随時アドバイスを出して視野を広げさせたり,教員が予め用意した活動も併せて体験させたりする工夫は必要になってくると思います.限られた授業時間の中でどこまでたくさんの経験を積めるかか,教員の手腕が問われているように感じます.

全体を通して

差分の問題は全体的にかなり簡単だと感じます.

試作問題全体を通して

最大のポイントは『情報Ⅰ』と『旧情報(仮)』をセットにして初めて今回の試作問題を語れるという点ではないでしょうか.これらの両方を踏まえることでほぼすべての領域がカバーされますし,そういう意図だと思います.

共通テストは授業で何をどこまで学べば良いかの指標になると思います.今回の試作問題の多くはやはり身近な問題解決に重きを置いているのではないでしょうか.問題解決全体のプロセスを何度も経験し,様々な活動の経験を積んでおくことが一番の共通テスト対策になるように感じます.

また,いくつか出題の典型パターンになりそうなものが見えてきました.こういった良問は定期試験などでも取り入れて,より適切に学習を評価できるようになっていくと良いのではないかと思います.

おまけ:概要「情報」に含まれる「共通テスト用プログラム表記の例示」

情報関係基礎では長らく DNCL (Daigaku Nyushi Center Language) と呼ばれる疑似言語に基づいてプログラミングの出題がなされてきました.新科目「情報」でも疑似言語が用いられるという点は同じですが,その表記が (Python 風に) 一部変更になっています.

今回,概要の文書において Python 風 DNCL の表記が明確化されました.いくつか注意事項があるので確認しておくと良いのではないかと思います.例えばこんなものです:

  • 配列の添え字は 0-origin

  • 配列にはスライスもあるらしい

  • 整数除算の記号がある

    • 生徒には慣れない演算なので事前に慣れておいた方が良いのでは?

  • Python と同様にべき乗の記号 ** がある

  • Python と同様に論理演算子は and or not

    • 複雑な条件式も出題されるかも?

  • 関数名は日本語

  • 関数の定義の表記はない (関数を定義することはあるが,問題文で巧みに誘導される)

  • Python と同様に制御構造の制御範囲の示し方はインデント

  • 繰り返しの表現は inclusive

    • 間違いやすいので注意!

  • 繰り返しは降順もある

    • 授業でもやりましょう!

  • コメントもあるらしい (Python と同様 #)

それにしても疑似言語とはいえ仕様がたった 1 ページで語られるというのは凄いですね.限られたほんのわずかな表現の組み合わせでなんでも形にできるプログラミング,夢のようですね.

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