【俺得】飛び級しながら教育職員免許状を取得する方法
個人的な背景
弊学科 (学士課程のこと,と捉えても問題なし) では中学校教諭の一種免許状 (数学),高等学校教諭の一種免許状 (数学,情報) が取得可能です.
弊専攻 (修士課程のこと,と捉えても問題なし) では中学校教諭の専修免許状 (数学),高等学校教諭の専修免許状 (数学,情報) が取得可能です.
弊専攻にはいわゆる「飛び入学」(以降飛び級と表記) の制度があります.この制度を利用する場合,学士課程を 3 年終えたタイミングで「退学」し,修士課程に入学します.学士課程を卒業せず,学士の学位はもらえません.
さて,飛び級しても教育職員免許状は取得できるのでしょうか?
こんなことをしている人は日本全国探してもほとんどいないのではないかと思います (いたら仲良くさせてください).
大学の教職担当の先生や事務にも相談しましたが,「飛び級すると学士の学位がもらえない」といった辺りがうまく伝わっていないようで,あまり満足のいく回答が得られません.誤った回答をされて責任問題になるのもお互いに嫌です.
というわけで,教育職員免許法などに基づいて正しく確認を取ります.たぶん誰の役にも立たないと思うのですが,自分のような物好きな方にとっては超刺激的だと思うので,よければ最後までご覧ください.
一種免許状の取り方 (取れない)
教育職員免許法を見ていきます.
別表第一が大学の教職課程で免許を取得する場合です.「一種免許状」の「基礎資格」として次のように書かれています.
別表第一には次のような備考も書かれています.
「文部科学大臣が学士の学位を有することと同等以上の資格を有すると認めた場合」も免許が取れるようです.なるほど,文部科学大臣のところに行って直談判すれば良いわけですね (なわけ).この文言の種明かしはまた後で.一旦置いておきます.
学士の学位が取得できないので困りました.でもとりあえず一種免許状の取り方を引き続き見ていきます.
別表第一に「大学において修得することを必要とする最低単位数」の「教科及び教職に関する科目」が「五九」と書かれており,これについての備考は次のようになっています.
要約すると「教科及び教職に関する科目は文部科学省令で定められたものを修得する」「他の大学などで修得した単位も使える場合がある」といった内容です.
前者 (文部科学省令) については,教育職員免許法施行規則の形になっており,修得しなけばならない科目が次のように記載されています.
教職課程に詳しい方なら一度は見たことのある一覧表です.
ただし,この表は何度か改訂されています.直近の大きな変更は令和三年八月四日文部科学省令第三五号で,多少話題にもなりました.「各教科の指導法(情報機器及び教材の活用を含む。)」が「各教科の指導法(情報通信技術の活用を含む。)」になったり,「教育の方法及び技術(情報機器及び教材の活用を含む。)」が「教育の方法及び技術」及び「情報通信技術を活用した教育の理論及び方法」になったりしています.
弊学でも入学後にこれらと対応する科目の内容が改められました.でも,在学中に制度が変わってしまったら,古い制度に対応する科目が使えなくなってしまうのでは? 安心してください.教育職員免許法施行規則には次のような附則がついています.
「これらを卒業するまでに次の表の第二欄に掲げる科目の単位を修得する者」は卒業しない人には関係なさそうですが (むしろ卒業しないから OK?),「令和四年三月三十一日までに第二欄に掲げる科目の単位を修得した者」のおかげでどうやら令和四年三月三十一日までに取ってしまった単位は有効なようです.良かった.
(令和 4 年 4 月 1 日以降に修得した教科教育法の単位もあるのですが,あれらは新規則対応だったのでしょうか・・・? どのみち卒業してないから OK ということになると信じます.)
後者 (他の大学などで修得した単位も使える場合がある) について,ありがちかもしれない誤解として教職課程は一つの大学で取るものだという考えがありますが,そうではありません.編入学や科目等履修生などの制度で複数の大学において単位を修得した場合,それらを組み合わせて免許状を取得することが可能となっています.
ただし,特に「教科に関する専門的事項」については「一般的包括的な内容」を含むものでないといけないため,複数大学の単位を組み合わせようとすると面倒なことになりそうなイメージはあります.
どうしても一種免許状が取りたいなら
とにかく一種免許状が取得できないことの原因は「学士がない」ことにありました.
そういえば学士の代わりに「文部科学大臣が学士の学位を有することと同等以上の資格を有すると認めた場合」というのがありましたね.これは学位授与機構の制度のことだと思われます.
おそらく世間的な認知度は高くないと思うのですが,実は大学に 2 年以上在学するか,高専や短大を卒業するなど,ざっくり言えば大学 2 年生相当まで学修し続けると,プラスアルファの学修によって学士の学位が取得できるようになります.
飛び級の場合についてもご丁寧に QA が示されています.
普通に授業を取って 124 単位集められれば,レポート作成 (12 ~ 17 ページ)と事務手続きだけで済むことになります.
学士が手に入ってしまえば,(状況がややこしいので大学からの一括申請はできませんが) 個別に都道府県の教育委員会に申請を出せば教育職員免許状が取得できるはずです.
また,これを言うと元も子もないのですが,放送大学などの通信制大学で学士を取得することも考えられます.教職関係の単位は修得済みになるはずのため,学士取得に必要な科目だけ履修すれば良いはずです.どのくらい大変なのかはわかりません.
現代社会はそれなりに良い社会で,学んだことが無駄になるということはそうそうなさそうです.だいたい何とかなる,という気持ちです.
とはいえ追加の負担を避けられるなら避けた方が良いので,やはり普通に (既に普通ではないが) 免許が取りたいですね.
専修免許状の取り方 (取れる)
世間的にはあまり知られていないと思うのですが,普通免許状には「二種 (短期大学士相当)」「一種 (学士相当)」「専修 (修士相当)」があります.地域によっては昇進や管理職になるために専修が必要という話も聞こえてきます.普通は一種を取ってから専修を取るなどするもののはずですが,実はダイレクトに専修免許状を取得することも可能なのです.
教育職員免許法を見ていきます.
先ほども見た資料です.「専修免許状」の「基礎資格」として次のように書かれています.
「学士と修士の学位を有すること」とは書かれていません.また,「一種免許状の基礎資格を有すること」などとも書かれていません.学士は要らないのです.なんで学士を書かなかったのかわかりませんが,まさに自分のためのような文言です.ありがとう昔の偉い人.
別表第一に「大学において修得することを必要とする最低単位数」の「教科及び教職に関する科目」が「八三」と書かれており,これについての備考は次のようになっています.
要するに修士課程で「教科及び教職に関する科目」を 24 単位以上修得しなければなりません.専修免許状関連でよく見る 24 という数は条文に明記されているのではなく 83 - 59 で計算して出てくるものなんですね.そしてこの 24 単位はすべて,教育職員免許法施行規則により「大学が独自に設定する科目」に振り分けられています.
まとめると,専修免許状を取るための一つの方法は
修士の学位を有すること
一種免許状を取得するために必要な単位 (59 単位) を修得していること
中学校の場合は
教科及び教科の指導法に関する科目 28 単位
教育の基礎的理解に関する科目 10単位
道徳、総合的な学習の時間等の指導法及び生徒指導、教育相談等に関する科目 10 単位
教育実践に関する科目 7 単位
大学が独自に設定する科目 4 単位
高等学校の場合は
教科及び教科の指導法に関する科目 24 単位
教育の基礎的理解に関する科目 10単位
道徳、総合的な学習の時間等の指導法及び生徒指導、教育相談等に関する科目 8 単位
教育実践に関する科目 5 単位
大学が独自に設定する科目 12 単位
(専修免許状を取得するために必要な単位) - (一種免許状を取得するために必要な単位) = (大学が独自に設定する科目 24 単位) を修得していること
大学院で修得しなければならない
というわけで,学位がなくても専修免許状をダイレクトに取れます.めでたし.
ところで急に存在感を出してきた「大学が独自に設定する科目」とは何なのでしょうか? 教育職員免許法施行規則には次のように書かれています.
要するに,教科の専門的事項か教育の基礎的理解に関する科目の 2 パターンがあります.弊専攻では教科の専門的事項の方しか独自に設定されていません.教科が変われば当然独自に設定される科目も変わります.
つまり,数学と情報の 2 つの教科の専修免許状を取得する場合,修士課程で合計 48 単位修得しなければならないということです.弊研究科では卒業要件となっている専門科目の単位のうち研究を除いたものが 24 単位となっています.他の学生の少なくとも 2 倍の授業を取らなければならないということです.地獄は続きます.
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