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【広報歴15年がまとめる】 PR・広報とは何か? 【基本のキ】

PRや広報の認知度は徐々に高まっているものの、まだまだマイナー部署、マイナー職種です。15年前でも今でもこんな質問を受けることがあります。

「広報と広告って何が違うの?」、「広報ってどんな効果があるの?」、「広報とPRって同じ?」

この記事では広報経験約15年の僕が、広報の本や実務を通して体験的に理解した広報の目的や役割について説明していきます。

広報と広告の違いは?

一番の大きな違いは、掲載内容をコントロールできるかです。広報の場合は、掲載決定権はメディア側にあります。そしてどのように掲載するかもメディアが決めます。企業の思惑とは関係なく、記事や番組が作られます。

一見デメリットのようにも思えますが、企業への忖度がないからこそ、受ける印象は客観的です。しかも、メディアと企業に利害関係がないからこそ、無料で取り上げられます。

「広報さん、タダで取り上げてもらえるならどんどん取り上げてもらう」という社内の声がありますが、掲載内容をコントールできないことの「代償」としての無料であることを忘れないでください。

一方、広告は有料で掲載スペースを購入します。掲載決定権は企業にあり、企業の思惑をそのままCMなどで表現することができます。そのため、とても主観的な印象を受けることになります。お金をかければかけるほど、広告スペースを購入することができますが、広告を大量投下すれば効果が出るという時代ではなくなってきています

効きにくくなった広告の補完としての役割を広報に求めている経営層もいて、広報部、広報担当の役割が良い意味では広がり、悪意味では広報にできないことを広報に求められるようになっています。

ポイント
広報と広告の違いを表す表現として、Love meとBuy meがあります。
広報⇒ Love me
広告⇒ Buy me

広報は、「私を好きになって」という好感、共感を求めるコミュニケーションの考え方であり、手法です。広告は、「私を買って」というより直接的な行動を求めるコミュニケーションの考え方であり、手法です。Love meとBuy meは感覚的に広報と広告の違いを理解できる表現だと思います。

最後に、広報と広告は対立するものではありません。ポジショニングというコンセプトを発表したマーケティングの第一人者のアル・ライズは著書の「ブランドは広告でつくれない」の中で、「ブランドはPRで作る。そのブランドを広告で維持する」と言っています。PRファーストのブランディングの大切さは、広報担当者には染みるものがあります。


広報とPRの違いは?

広報とPRの違いは何でしょうか。

一言で答えると、広報とPRは同じものです。

もともとアメリカで生まれたPRの日本語訳が「広報」と言われています。

なぜPRが広報という訳になったかは気になるところですが、PRはPublic Relations、つまり「社会との関係」をつくる活動のことです。「広く報じる」と書く広報とは、その言葉の持つ意味合いが違うように思われるかもしれません。

PRは社会のあらゆるステークホルダー(=利害関係者)との関係性を長期的に、継続的に、戦略的に、コミュニケーションという手段を用いて作っていくことが本質です。決して一方方向の伝達ではないのです。

一方、広報は、その言葉の通り、自社の製品やサービスを広く伝えたいという企業の意思が表われた言葉になっています。広報のオリジナルはPRという言葉なので、広報担当者は「ただ広く報じるのではなく、パブリックとのリレーションづくり」だということを常に意識してほしいです。


広報と広聴

PRに含まれている「社会との関係性」づくりをより意識する目的で、PR=広報+広聴と考えるとよいかもしれません。

広報との対比で使われる広聴ですが、目的は外の声を社内に伝えることにあります。広報部やお客様センターと違って、社内にいると外の声を聴く機会は限られます。経営層の周りには「YESマン」が多くなり、経営層に不利益な情報が伝わりにくい状況になります。そんな中で、広報担当者が記者の声を聴き、経営層に伝えることは経営者が判断を誤らないことにもつながり、会社に変化をもたらす起点にもなります。

最近は記者の声だけでなく、SNS上での一般の方の声を聴く「ソーシャルリスニング」も重要になっています。SNSでつぶやかれている自社や自社製品に関するコメントをしっかり把握していくことは、自社の方針や商品開発のヒントにもなります。

そもそも一方的な広報では、ターゲットの共感を得ることはできません。しっかりとニーズを聴いた上で、それに沿ったメッセージを発信することが大切です。


社外広報と社内広報

広報をまず2つに分けると社外広報と社内広報に分けることができます。

社外広報

一言でいうと、社外広報=企業広報+サービス・商品広報です。

詳しくは下に書きますが、広報と言えば7~8割くらいは社外広報のことです。

社内広報

社内広報は、その言葉の通り、社員向けの情報発信になります。目的は、社員に対して、自社のビジョンや経営理念を浸透させることで、会社へのエンゲージメントを高めることです。そのために、社内報を出したり、創立記念日や社内運動会といった社内イベントなどを行います。

最近は、社員の家族へのコミュニケーションも社内広報の重要な要素になってきています。家族に自慢できるような会社であれば社員のエンゲージメントも高まるからです。家族、特に社員の子どもを招待して会社のことを楽しんで理解してもらうファミリーディなどを実施する企業も増えてきています。


社外広報=企業広報+サービス・商品広報

社外広報も大きく2つに分けることができます。企業広報とサービス・商品広報です。

ポイント
企業広報:企業の魅力を伝え、企業と社会との関係性づくりが使命です。

企業広報は、社会全体や特定のターゲットに共感してもらえる企業ストーリーをヒト(社員や経営者)、商品、企業の取り組み(CSRなど)を通して伝えることにより、企業の魅力を高め、企業への信頼度を高まる取り組みです。

ポイント
サービス・商品広報:サービス・商品の売り上げ、ブランディングが使命です。

サービス・商品広報は、短期的には新商品や新サービスをアピールすること、すなわちプロモーション活動の一手法です。マーケティングの基本戦略となる4P(Product、Place、Price、Promotion)のPromotionに当たる部分です。

Promotionの中には、広告も含まれますので、この辺りが広告と広報をごっちゃにする原因かもしれません。

長期的な役割は、継続的な情報発信によって、新商品やサービスのブランドを確立していくことです。

「PRにはストーリーが大切」という理由は、短期的な露出の最大化をして認知を獲得するだけでなく、長期的にそのブランド好きになってもらうためです。逆に言うと、そのブランドが好きな人を増やす=ファンづくりには、ストーリーが必須ということです。


平時の攻めに対する緊急時の守りの広報=危機管理広報

「社外広報=企業広報+サービス・商品広報」は基本的には、平時に行う、攻めの広報です。企業や新商品の魅力を伝える「攻め」です。一方で、企業が不祥事を起こしたり、商品に対するネガティブな反応が起きた時に、守りの広報をして行うのが危機管理広報です。

危機管理広報の基本の1つ目は、「準備8割」です。平時にどれだけ危機が起きた時に迅速に対応できるかの準備をできているかがポイントです。

例えば、航空会社であれば飛行機の墜落を想定した「クライシスマニュアル」というものがあります。その中に、飛行機が墜落した時にどのようなコミュニケーションを取ればよいか、どのような情報を発信すればよいかということが書かれています。

事故が起きた時に迅速かつ透明性のある対応をすることで、事故後の混乱を最小限にして、企業のレピュテーションリスクを下げることができます。危機管理広報の基本の2つ目と3つ目は、「迅速かつ透明性のある対応」、「レピュテーションリスクを下げる」ことです。

前に話になりますが、雪印乳業で食中毒事件が起きた際に、記者会見後、エレベーターに乗り込もうとした同社の社長が、会見の延長を求める記者に対して「私は寝ていないんだよ」と逆ギレ発言をし、大炎上しました。

食中毒事件自体でなく、そんな社長がトップの会社への不信感が、雪印グループ全体に波及し、牛乳以外の雪印製品の全品撤去、経営悪化によるグループ解体・再編にもつながりました。そういった過去の企業の不祥事を教訓として、大企業を中心に危機管理広報が重視されるようになっていきました。

問題が起こってから対応する危機管理広報の前段階として、問題の火種ができそうな時に対応するのが「イシューマネジメント」です。問題を未然に防止するために、SNS上の監視などを行っている会社もあります。


まとめ
広報を分解し、それぞれの目的と役割を理解することで、広報をよく知らない人にわかりやすく説明できるようになります。それが、広報の社内理解度を高める第一歩になります。
そして、何より、自分が広報のどの部分を今やっているのかを理解しながらやることは、広報を体系的に理解しスキルを高めることに直結します。

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