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会話の記録9

「これはなんだ と、なんだこれは の違い?」
「うん。あなたはだれだ だれだあなたは。これは意味が通じない?」
「だれだあなたはって、あんまり言わないよね」
「あなた と だれは釣り合わないのか…?」
「釣り合わない?」
「どこだここは ここはどこだ」
「どこだここは は、あんまり言わないよ」
「言わないか。これはなんだ なんだこれは。この例が特殊なのかな。」
「なのかな。」
「なんだこれ だと体言止めだけど、なんだこれは にすると体言止めじゃなくなっちゃう?」
「これは は名詞じゃないのか」
「なんの話しをしてるんだ」
「これはなんだ の時は、これが何かを知りたい」
「うん」
「なんだこれは の時は、この不思議さはなんなんだという驚き?すごい!とか」
「哲学はどっち?」
「どっちもあるよね」
「なんだこれは の哲学もあるの?」
「ないかな?」
「哲学ってなんか落ち着いてる感じするけど」
「確かに。でも哲学は驚きからはじまるって言ってたし」
「確かにそういう時もあるね。」
「うん」
「個人的には、なんだこれは の哲学の方が好きかもしれない」
「確かに、なんだこれは の方が発見な感じがするかな」
「うれしい気持ちがある」
「なんだこれはって思うとき、あった?」
「"ないはないあるはあるのか"を考えてた時はそれに近かったかも知れない。発見があると笑ってしまうのか」
「うん」
「真理を見つけたかもしれないと思って、笑ってしまうのか」

「じゃあ未来は存在しないのに、なんで未来って言葉があるんだと思う?」
「確かに。…過去にとっての今が未来だから?」
「なるほどね。過去=現在=未来ってこと?」
「そういうこと。」
「じゃあ今も未来ってこと?」
「今も過去にとっての未来。今は過去の未来だった。」
「なるほど」
「今は昔 って言うじゃない?昔ばなしで」
「言うね」
「今は昔って、今からしたら昔のことっていう意味ですか?」
「どの視点で今って言ってるの?誰目線で今って言ってるの?」
「語ってる時?」
「あー語り部。語り部か…」
「今は昔、おじいさんとおばあさんが二人で住んでいました。今からしたら昔の話っていうのを、今は昔 っていう言葉にまとめてるのかな?」
「え、そういうことなの?」
「ちょっと調べてみて」
「調べるって何を?」
「今は昔 がどういう意味か」
「調べちゃっていいの?」
「うん。私はもう予想を立てたから。君も予想があるなら調べる前に言って」
「同じ気はするけど…。今にとったら昔…今って私たちの今ってこと?」
「うーん。語り手の今。まーでも、読む人を想像してるから…。でもそれを語ってる時ですら、未来の人が読むことも想像してなかったのかもしれない。未来にとっては今も昔、今は昔 ってこと?今は今も昔、今も昔。」
「調べるか」
「お願いします」
「今となってはもう昔のことだが」
「合ってるじゃん」
「合ってるね」
「それを、今は昔 だけに省略しちゃうのすごいね」
「ね」
「今は昔ってそのままの意味だと、今=昔になっちゃうじゃん。」
「ね、相当面白いね、この言葉。」

「宇宙から地球を見たときは、空は邪魔しない?」
「そうだね」
「地球から宇宙を見たときは、空が邪魔をする?」
「そうだね。空ってなんだ?」
「見ようとしてるから?地球からは宇宙を見ようとしてない?空を見ようとしてるから空が見えるの?」
「そうだよね。」
「宇宙を見ようとしたら、宇宙が見えるわけじゃない?」
「うん」
「宇宙から地球を見るときは地球を見ようとしてるから地球が見えて、宇宙から空を見ようとすると空は見えない。なんで?」
「わかんない。でも夜の空の方が宇宙に近い感じがするよね。」
「うん、確かに。やっぱり夜がいいね」
「そうなのか?」
「夜の方が好きだよ」
「でも夜の空と昼間の空が同じ空だとは…」
「あーなるほど。それは面白いね。では、境目はどこ?」
「んー。地球以外の星からは空は見えないのかな?地球以外の星には空はないのかな?地球以外の星にとっての空はないのかな?」
「んー、そうだね。それは分からない。」
「どうして、空はきれいなのかな」
「きれいだと思っているから、きれいなんだよ。」
「でも不思議じゃない?だって空ってさ、信じられないくらいの回数見てるわけじゃん?だけど夕焼けとか見たときにさ、未だにすごい新鮮にわーってなるじゃん。」
「なるね」
「それが不思議なんだよね。身近にあるきれいなものって感覚が麻痺しそうな感じするけど、空はいつになっても新鮮にきれいって思っちゃう。」
「確かに。なんでだろうね」
「空って意味わかんないよ、絶対」
「なんで?」
「だって今こう話してるだけでも、既にいくつかの神秘的な問題が出てきた。」
「そうだね、なんでだろうね。」
「空ねー」
「生まれて、空を見ないで生きていける?」
「でも目が見えない人もいるからね」
「そうだよね。」
「そう、そういう絵本があったんだよ。ヨシタケシンスケの『みえるとかみえないとか』って。目が見えない人はどんな世界を生きてるのかって。そういう絵本があって、よかったんだよ。」

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