「BMW × 天才バカボン」のコラボレーションに見る、高級ブランドが「下に降りてくる」コミュニケーション

2019年11月から開始している、BMWの1シリーズの新しいコミュニケーションは、天才バカボンとコラボ。
コンセプトは「もしも多忙なママを手助けしてくれる天才的なクルマが現れたら、バカボンたちの日常は一体どう変わっていくのか?」というもので、バカボンのキャラクターたちが1シリーズの機能をライフスタイルを通じて説明していくような仕掛けになっている。

参考:BMW公式サイト 天才バカボン&BMW うちのクルマは天才なのだ。
https://www.bmw.co.jp/ja/all-models/1-series/5-door/2019/bmw-1-series-special.html

個人的な感想としては、キャラクターとのコラボレーションのやり方としてはうまいと思う。2014年にメルセデスベンツ(Aクラス)がスーパーマリオとタイアップした時はとても驚いたが、それから数年経った今、BMWがソーシャルメディアを意識したストーリー設計をしていることが印象的だった。

ベンツがマリオの画力を意識したクリエイティブだったのに対して、BMWは、画力だけでなく、文脈を意識したクリエイティブになっている。BMWの方がすぐれているということではなく、世の中やマーケティングのトレンドが変わってきており、今、ベンツもBMWはちゃんとメディア・ユーザー環境を意識したコミュニケーションの編集作業を行っている、ということだと思う。

ちなみに、TwitterやFacebookコメント等を見ると、賛否両論あり、一部のオーナーからはブランド毀損だ、やめてほしい、という強めの批判もあったり、女性からのウケは芳しくないという声も聞くが、概ね好意的な意見が多いように思う。

おそらくBMWのマーケッターとしては、属性によって態度が異なることは問題ない、というか賛否両論あることを前提としてプランニングしていると思う。しかし、難しいのはこの後の評価である。見るべきは2点。

一つは、プロモーションの全体設計。この仕掛けは認知を高める施策であり、このプロモーションを通じて、実際にプロダクトやブランドを理解してもらえているか、そして、買ってみたいかも(販売店に行ってみたい)と思わせられているか。(←このプロモーションの全体設計の話は今後のノートで深く掘り下げたいと思う。)

もう一つは、本キャンペーンのターゲット外へのコミュニケーション。これも非常に重要で、すべてのプレミアムブランドのマーケティング担当者が常に悩んでいることだと思う。(もし悩んでいないなら悩むべきことだと思う)今や、多くのプレミアム、ラグジュアリーと言われるブランドが新しい層の取り込みに苦労している。長年の歴史を通じてブランドを築いてきた企業が、新しい世代を取り込む必要が出てくるのは当然の流れである。高級車においては、そのブランドのエントリーモデルとして、BMWなら1シリーズ、ベンツならAクラス、ポルシェならマカン、カイエン(←ポルシェはエントリーでも1千万近いのだが。。)がある。

エントリーモデルのコミュニケーションとして、既存のオーナーを意識した上で、新しい層にリーチしないといけないので、必ず否定的な意見が生じるのは仕方がないこと。でも、それをしっかり今までの歴史やクオリティを守った上でのコミュニケーションを行うことは、プレミアムブランドのマーケッターに確実に求められているのだが、意外に簡単ではない。

バカボンを活用したこのプロモーションは、ターゲット外のユーザーにどのように受け止められているか。従来のBMWファンに対するケアはどうか?今後の活動+データに注目したいと思う。
「はじめてのBMWはこれでいいのだ。」というコピーは、主要ターゲット向けなのか、既存オーナー向けか、それとも販売店への説得なのか、何となくユーザー向けというよりは、マーケッター自身に言い聞かせているような切なさを筆者は感じてしまう。

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