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【プリズンライターズ】東北の某刑務所の話… Vol.2

東北の某刑務所の話… Vol.1」を読んでいただいた方、ありがとうございました。

 今回は刑務所内での1日の生活をお話したいと思います。

 私は東北の某刑務所に務めている者ですが、全国にある刑務所によって色々と違うことが沢山あります。
私が務めている刑務所では、平日の起床が全受刑者6:50、休日の起床が全受刑者7:20です。
例外は私達の食を作ってくれている炊場で起床時間が2時間位早いです。

 就寝時間は全受刑者21:00ですが、大晦日だけ、NHK紅白歌合戦を23:45まで見られて、24:00が就寝時間となります。この就寝時間21:00というのが早過ぎで、大晦日以外、毎日10時間程の睡眠をとらされるので、年々、年寄りの多くなってきた受刑者達は早起きの人が多く、朝早く起きて布団の中で悶々としている人が沢山います。

 なので、朝早く起きてしまって布団に潜って本を読んだりしている人がいます。
就寝時間中に本を読んでいるのが職員に見つかると、連行され、入独となってしまいます。
就寝時間中に本を読むことを、暗闇の中で本を読むので刑務所用語で闇読といいます。

 刑務所によっては、朝、明るくなると本を読んで良い刑務所もあるそうです。
平日6:50に起床後、布団をそれぞれ決められたように畳み、決められた順番で重ね、決められた位置に置きます。
その後、顔を洗い歯を磨き、職員の点検よーいの号令で正座または安座をして職員の点検を待ち、点検後、食事をして工場へと出役です。

 休日は7:20に起床後、平日と同じように布団を畳み、点検食事をして自由時間となります。
日曜日、祝日は朝9:00から刑務所が録画してくれたVTR(洋画・邦画・ドラマ)を見せてくれます。
朝は眠くて機嫌が悪いからなのか、けっこう喧嘩が多い時間帯です。

 なかには工場担当が嫌とか、工場で揉め事があったとか、他にも理由があって出役せず、朝部屋に残って作業拒否をする人もいます。工場に出役をして職員の検身を受け舎房着から工場着へと着替え、整列をし点呼朝礼などをし、割り当てられた作業をします。

 新入りはだいたい、その工場の基本的な楽な作業をさせられ、仕事が出来る人だとみなされると違う部署に割り当てられます。

 私が務めています刑務所での一般工場の作業は、印刷工場、洋裁工場、木工場、革靴工場、袋折りなどが主な工場です。
作業中、無断交談、余所見は禁止で、職員に見つかると一発連行となります。
作業事故を無くすためのルールなので仕方がないと思うのですが、時間が気になって、時計を見ただけでも余所見とされるのは止めてほしいものです。

 中には意地悪な職員もいまして、工場に入ってくる扉を大きく音が鳴るように閉めてビックリさせ、扉の方を見たら余所見でハイOUT。または扉からこそっと入ってきて無断交談、余所見している人を捕まえようとする。
十人十色、受刑者に色々な人がいるように、職員にも色々な人がいるということです。

 今はコロナ時代なので工場でのマスク着用が義務づけられており、無断交談をしやすいですが、中には無断交談をしていて頷いたせいで無断交談がばれて捕まった人達もいます(笑)。

それから、お茶休憩、運動などを経て、やっと楽しみな昼食となります。
昼食の中でも一番人気は、パンの日の甘シャリ(汁粉、煮豆)で、その日は普段テンションが低い人でもテンションが高いくらいで、皆楽しみにしています。
普段飲めないパンの日のコーヒーも人気です。あと人気なのは、麺の日とカレーの日です。

パンの日は、皆それぞれ、パンを加工・調理をし工夫をしながら食べます。
それでは、多くの人がやっているコッペパンの食べ方は、まずテーブルに私物または官物のチリ紙を敷き、コッペパンの裏側を半分くらいくり抜いて、舟の形にします。
その舟の中にマーガリンなどジャム類、甘シャリを入れ、くり抜いたパンを元に戻して甘シャリパンを、最後に食べるためにチリ紙の上に置いておきます。

そしてもう一本のパンの調理にとりかかり、やきそばの日はやきそばをパンにはさんだり、人それぞれ工夫をして食べ、最後に甘シャリパンを食べます。最後の甘シャリパンは,皆大事そうに食べてます。十人十色という言葉がある通り、パンの食べ方も十人十色です(笑)。

社会でも楽しい時間というのはあっという間に過ぎてしまいますが、刑務所の中では楽しい時間というのはより早く過ぎてしまい、パンを食べ終わりますと皆、あ~あ、終わっちゃったという顔をしています。
刑務所の食事のことは次の機会にでも詳しくお話したいと思います。


それでは、作業中での事をお話したいと思います。

作業中に用便、他の人との交談をしたい時は、黙って担当台の方に向かって右腕をまっすぐ上に挙げます。
担当が手を挙げている人を見つけますと、何々と名字を呼んで、呼ばれた人は「担当台、お願いします」と言い担当台へ行き、用便、又は担当に用件を伝えます。
他の受刑者と作業の話をしたい時、呼ばれた後、その場で「誰々と作業交談願います」など用件を言い、「よし」と許可が出たら、帽子を取って話をします。

なかには手を挙げていて見ているのに何回か無視する担当もいますし、用便を願いでるとぐちぐち言って用便に行かせてくれない担当もいます。生理現象なので仕方がないのに、何で行かせてくれないのかと理解に苦しみますし、パワハラなのではと思います。

私が思う今の刑務所は、再犯をさせないため色々と学ばせるのではなく、職員によりますが、ただ上から押さえつけ罰せられたそれぞれの刑を過ごさせるだけと、そんな気がします。

平日、入浴があり、1番風呂の日は入浴が午後1:30位と早く入浴をして、その後はそれぞれ自分の舎房へと戻り、職員の点検まで自由時間となります。その日が入浴に当たらない場合は、夕方16:00まで作業をして、順番に足洗いをして工場着から舎房着へと着替え還室となりますが、寒さが厳しい冬の足洗いは、寒くて足が冷えてしまい、かなりきついです。

その後、舎房(部屋)に戻り、点検の号令で点検を受け食事をしテレビが始まる19:00まで自由時間(余暇時間)です。
自由時間は、勉強をしている人、小説を読んでいる人、写経をしている人などなど、人それぞれ有意義に過ごしております。

私が務めています某刑務所は、テレビの時間が平日は19:00から21:00まで、祝祭日、土日は昼間13:00から15:30まで、夜は19:00から21:00までです。映るチャンネルは、自由チャンネルですが、全てのチャンネルが映るわけではありません。刑務所によっては、17:00から21:00までテレビが見られる施設、18:00から21:00までテレビが見られる施設があるようで、そういう話を聞きますと、刑務所での数少ない娯楽なので羨ましく思います。

あとは21:00になったら寝るだけですので、毎日同じ事の繰り返しです。
刑務所という所は、毎日同じ事の繰り返しでして、毎日変わらずに生活が送れているという事は、落ち着いて生活が出来ているという事なので、同じ事の繰り返しは幸せなことなのかもしれません。

あくまでも私個人の感想なのですが、最近の若い職員は、言葉遣いが悪く粗を見つけようと努力をし、注意をする事を生きがいにしているかのような若い職員がちょくちょく散見されます。
中には親身になって話を聞いてくれる職員方達もいるのですが、えばるのと指導するのは違くて、勘違いをしてるんじゃないのって思われる方々もおります。

そんな所へ来たのは、あなた自身のせいではないのって言われますと何も言えませんけど…(笑)。

ここまで、この「東北の某刑務所の話… Vol.2」を読んでいただきまして、ありがとうございました。
おもしろ、おかしく書きたいと思うのですがなかなか難しく、思い通りに書けません。
それでもいいと思い、読んでいただければ嬉しいです。それではまた。

              2023年11月19日 記


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