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【プリズンライターズ】本と宇宙人になったカエル・書評 Vol.5「正義が眠りについたとき」

こんにちは!今年の夏は大変な暑さですね。コロナウィルスの方は、日々感染者数が増すものの、社会の方は久々の行動制限の無い夏を満喫しているのではないでしょうか?
暑い夏、冷えたビールを“ぐいっ”と飲むなんて社会にいればいつでも当たり前のことですが我々受刑者、こと無期懲役には夢のまた夢。たかがビール一杯なのに、どんな苦労を重ねても、どんな努力をしても出所するまでは飲めません。

地球温暖化が原因なのか年々猛暑日が増え、今年から酷暑日なんてのも出来ていますが、我々、受刑者は作業で汗だくになっても入浴日以外は風呂もシャワーも入れず、舎房に戻ればそこは無料のサウナとなっていて、この先どうなることやら。受刑者のくせに何言ってんだ!と、お叱りの声が聞こえてきそうですが、刑務所という所は慣性の法則が働いて“死人”でも出ない限りなかなか変わらないんですよ。せめて社会通念に合った環境で生活させて欲しいものです。これから先“ゆとり世代”だの“草食男子”だのが入って来たら生きて行けませんよ。

こんな暑い日は少しでも“涼”を感じるためにホラー小説でも読むしかないですネ。でも今は、S・キングや瀬名秀明位じゃ団扇をあおぐ右手の熱も冷めませんョ。誰か!ゾッとするほど“涼”を感じる作品知りませんか?

こうして投稿文を書いていても、身体中汗だくで紙が手にへばり付き頭がボ――ッとしています。 
あれ?サユリさん“カエルが宇宙人になっちゃった”これって正にホラーですよネ(笑い) ギャ――ッ!

では今回は「正義が眠りについたとき」(ステイシー・エイブラムス)を紹介します!


「 正義が眠りについたとき」ステイシー・エイブラムス


 米国司法界の頂点で“法の下の平等な正義”を守り抜く連邦最高裁判所。裁判は長官を含めた9名の判事で審理を行い、過半数意見が判決となる。判事は終身制で大統領が任命することから保守派とリベラル派のバランスが崩れる事があり国民の関心事になっている。実社会においても、銃規制や同性婚などの判決は日本でも大きなニュースとなり、人工妊娠中絶の判決は記憶に新しい。

 本作はその連邦最高裁判所が舞台となる。主人公は連邦最高裁判事の1人であるハワード・ウィンのロー・クラーク(法律事務員)として働く優秀な女性、エイブリーだ。気難しい判事に少しばかり内心で毒づくも忠誠を尽くして激務をこなす。いずれは大手法律事務所に就職して大金を稼ぐことを夢見ているのだが司法界にとって致命的な欠点となる薬物中毒の母、つまり犯罪者の存在を隠しながら何とか乗り切ろうとしている。

 物語は彼女の師、ハワード・ウィンが昏睡状態に陥ったことから始まる。最高裁では、ある企業の買収に大統領が中止命令を出した件の是非を審理中で、ハワードの意見によって判決の行方が左右すると見られていた。そんな矢先、判事はエイブリーを法定後見人に指名した上、謎の暗号を残して自ら薬物を摂取して倒れたのだ、

 突然の出来事に困惑するエイブリーだが、昏睡状態の判事の命、そして自身の命まで何者かに狙われた事で、反骨精神に火がつき暗号解読に走るのだ。託された暗号は、政府を転覆しかねない極秘情報だと知り、危険は覚悟の上、自身の能力だけを武器に見えない敵に立ち向かう。

 エイブリーが解き明かした驚愕の真実とは・・・・・。

 本作の一番の魅力は、何と言ってもエイブリーの人物造形にある。エゴが少し位傷付いても気にしないが心は常に正しい位置にあり、目標を達成するまで決して諦めないという武器まである。しかし、母には脆く、親子の絆がどの様な展開になるかも見所の一つだ。

■「 正義が眠りについたとき」ステイシー・エイブラムス
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A99さんの過去の投稿 :

本と宇宙人になったカエル・書評 Vol.4「そしてバトンは渡された」
本と宇宙人になったカエル・書評 Vol.3「自由研究には向かない殺人」
本と宇宙人になったカエル・書評 Vol.2「あなたを愛してから」
本と宇宙人になったカエル・書評 Vol.1「生か死か」

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