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第5章〜病舎看護係編 第4犯〜川越少年刑務所大運動会

前回は刑務所の「慰問」というイベントについて書きましたが、今回は運動会についての記事になります。
今回も頑張って書いていきますので、最後まで宜しくお願い致します。

運動会と言うと中学3年生以来である。
他の刑務所でも運動会はめちゃくちゃ盛り上がるのだが、川越のような少年刑務所では盛り上がり方が異常である。
クレイジーで済むなら話は早いのだが、たまにサイコパスになってる奴とかいる。

ところで、少年刑務所は基本、毎日40~50分くらいの運動時間が設けられている。
晴れてたらグラウンド、天候不良なら体育館、どこも使えなかったら各工場で地獄の筋トレタイム。
ちなみに参加不参加は各自の自由だが、難病にでも罹っていない限り強制参加である。「体調不良」と言ってみんなの前でボコられてる奴もいた。
もちろんオヤジ連中は見て見ぬ振り。てかまだ「監獄法」という明治時代の法律だった頃は、オヤジに殴られてる哀れな受刑者も結構いた。
シャバでも刑務所でもイジメはこうやって大ごとになって行く。。。
そして運動に関しても同じだ。決して手抜きは許されない。ちんたら走ってたら、とりあえずボコられる。

一体何が彼らをそこまで駆り立てるのか?
経験し、冷静に考えられる今となっては、残念なことに気持ちが良く分かる。

というわけで強制参加の運動で毎日ゲロ吐くまで走ってたらみんな現役時代を軽く凌駕する肉体を手に入れられる。
そんな肉体を存分にアピールできる機会が運動会と言うわけだ。

川越少年刑務所は受刑者総数1000人を超える刑務所だ。
工場受刑者だけで1000人以上いる。その全員がグラウンドに集結して、年に2回川越ナンバーワン工場の名誉をかけて熱い戦いを繰り広げる。
種目は
・100m走
・1500m走
・スウェーデン走
・750m×3+1000mリレー
・綱引き
・障害物走

だったような気がする。

出場チームは
・1工場
・2工場
・3工場
・4工場
・5工場
・6工場
・7工場
・8工場(職業訓練工場「自動車整備科」)+9工場(少年工場)
・10工場
・11工場
・12工場
・経理A(炊場、営繕)
・経理B(掃夫全員、看護係、内掃、釈放前指導)
・経理C(洗濯、図書、舎内掃)

の14チームだ。

俺ら病舎看護係は「経理Bチーム」に入っている。
俺が入所する前は経理Bチームの優勝が多かったようだが、ここ何年かは優勝から遠ざかっていたらしい。
受刑者の気合もさることながら、なぜかオヤジ連中の気合の入り方がけっこう異常である。
本当かどうかは知らんが、オヤジ連中が囚人やチームの着順を賭けていたようだ。

オヤジの財布事情なんてウチら囚人には何の関係もないけど、なにやら全力でやらないといけない雰囲気になっているので、みんな死ぬ気で頑張っていた。

俺は川越で5回、八王子で2回運動会に参加した。
川越では2回は綱引き、1回は応援団長だった。
しかしなぜか1500m走という、けっこう重要だししんどい種目に2回出場させられた。
もちろん、そんな注目を浴びる重要な競技に望んで出場したわけではない。普段から短距離走でなく長距離走で本領を発揮していたのを見つかってのこと。
完全にオヤジの独断と偏見によるエントリーだ。今だったら「パワハラだ〜」と息巻いて出場を拒んだと思う。
刑務所という場所柄、拒否権なんて一切ない。任命されたら引き受ける他ない。

一秒でもタイムを縮めるために、陸上経験者に話を聞いたり本で勉強したり呼吸法とかやり始めたり軽くするためにメシを抜いたり、制限下で考えられる事は全部試した。
あと死ぬほど走った。めっちゃゲロ吐いた。でも胃の中カラッポだから胃液しか出んかった。

んで結果はケツから3位と、ケツから優勝

hahaha
才能と人選ミスが見事にシンクロした結果っすよw
世の中努力しても一般人に埋もれてしまう典型的な例ですわ。
こう言うのもなんだけど、俺かなり頑張ったんすよ?
そん時俺工場で一番の古株だったから、下の子達もわりと本気で心配してくれるくらいまでは追い込んでたし。
あと、なんかみんなの圧とかヤバ目だったし、オヤジいくらか賭けてたっぽいし。

ただ、オヤジが俺のベストタイムが表示されたストップウォッチを見てからというもの、明らかに俺はチームポイントの対象外になった。

ちなみに俺の1500mベストタイムは5分ジャストくらいだった。
20代の男性平均よりは早いけどそんなでもないってWikipediaに書いてた。
川越トップが4分20秒
比較対象を置くと、女子高校生の日本ランキング2位が4分20秒。

200mトラックだったら周回遅れになるね。
しかも路面のコンディションは最低である。一応整備するが、ひどい凸凹を慣らす程度なので、大会でも普通にコケる
そんな中、体育館シューズに毛の生えた程度の靴で走るのだ。

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さて、そんな記念出場みたいな2回もあったけど、イベント事は心底楽しめる
そういやサッカー大会でも優勝したし、ソフトボール大会でも準優勝したな。
そう考えたらウチのチームって悪者の中でもトップクラスの運動神経が集まったみたいだね。

そんな中でも残念なことに、と言うか予想通り俺の結果は散々だった。
ただ驚いたことに誰一人責めてくる奴がいなかった。後で聞いたら頑張って練習してるの見てたからだって。
努力は結果だけじゃなくて、みんなの心に対して報われる時もあるのだと知った。


久し振りで、更に長文でしたが、今回も最後までお付き合い頂きありがとうごいます!
今年はダレずに更新していきますので、今後とも宜しくお願い致します。

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