映画「バービー」を観ましたが面白かったです

あまり具体的な内容には触れず、抽象的なことが多めだとは思うけれど、ネタバレもあるので嫌な人はご注意を。


映画「バービー」を観てきた。
まずめちゃくちゃ笑えたし、ストーリーもおもしろかった。2時間退屈しなかった。
コメディだな〜というのが導入からとてもよくわかり、最後までちゃんと笑わせてくれた。
話の筋は、自分は「バービーたちの世界に対してケンがクーデターを起こす話」というふうに受け取った。

ただどうしてこんなに世界中で上映禁止になったり、批判的な意見が出るのかはよくわからなかった。
多少嫌がる人がいるのは理解できるが、なんというか……こんなのジョークじゃん、という感じ。こういう言い方は本当はあまり好きじゃないけれど。

たしかに社会風刺の色は強い思う。
しかし男女が社会で受ける扱いの差という根深い問題をいじり倒して笑いに昇華したポジティブで生産的な映画だったし、ただの男性批判にならないよう設定や構成、表現の仕方がかなり考えられていたという印象だ。

「男女の対立」ではなく「バービーたちとケンたちの対立」というふうに少しズラして描いているのがうまい。
ケンは結構「男社会」という言葉を使っていたけれど、バービーのほうは決して女社会とは言っていなかった。

バービーランドを女性優位の社会として描くことで、現実の男性社会の風刺にしていたんだと思う。
バービーランドでおまけ扱いされていたケンたちは、人間界での女性たちと同じ役回りを演じていた。

バービーランドと人間界では男女の社会的立場が逆転している。
男社会で良しとされている価値観(男らしさや男のロマンなど)がこの作品では笑いのネタにされているので、表面だけを見れば「男を馬鹿にしてる!」と思う人はいるかもしれないが(ものすごく上っ面しか見れないのだと思うが……)、役回りとしてはケンたちのほうが人間界の女性の立場を表していたと思う。
しかも全身全霊で笑わせにきながら、終始説教臭さを出さず、攻撃性も極力排除して見せていたのが本当にすごい。
個人的にはケンに一番拍手を送りたい。

2時間ずっと笑わせてくれて、コメディ映画としてすばらしかったけれど、思ったより女性讃歌というわけでもなく女性の生きづらさをはっきりと言葉にするので観ていてしんどい部分もあった。
でも基本はずっと笑えるし、女性しか楽しめない映画でも、男性が見て不愉快になる映画でもなかったと思う。
(あれを見て「自分が攻撃されている」と感じる人は普段の行いを見直したほうがいい)

男女の対立というより「バービーにとって最適化された世界は、バービー以外の人には合わないよね」というだけの話に見えた。
もちろんバービー以外の人でもその世界が心地良いという人はいるし、ケンたちが途中で作った男性主体の社会のほうが心地良いと感じる女性もいるだろう。
最終的には「バービーの世界」を取り戻すことをハッピーエンドとして描きながらも、そういう人たちの存在がちょこちょこ肯定的に描写されていた(多分……)のも最近の映画らしいと思った。

男社会がいいとか女社会がいいとか、そういう話ではなかったと思う。
どんな世界が心地いいか、なんて人によって違うのだし。

多様性と呼ばれる世界のことを考えると、もうすべてを多数決で決めていい時代じゃないんだと思う。
多数決で決めるべきところと、合理性で考えるべきところと、そのどちらも使うべきではないところがある。
使うべきではないところでそれを使うと、ただの暴力になってしまう。

映画「バービー」への世界の拒否反応はワクチンを打ったときの副反応みたいなものなのかな、と思っている。
世界が免疫をつけようとしている、みたいな。

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