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経済産業省のトランスジェンダー女性職員のトイレ利用に関する裁判、その後に思うこと

「生物学的に云々言う人ほど生物学を理解していない」と言ったのは、がんゲノム研究で博士号を取得している友人です。「自分の専門性に自負があるからこそ他人の専門性に頼ることができる」と言ったのは、ある大学教員です。専門家として研究すればするほど、他人の専門性に対して謙虚になれるものですね。

さて、7月11日に、経産省がトランスジェンダー女性の職員のトイレ利用を制限したことは違法という最高裁の判決が出ました。

トランスジェンダー “女性用トイレの使用制限”違法 最高裁

11日の判決で最高裁判所第3小法廷の今崎幸彦裁判長は「職員は、自認する性別と異なる男性用トイレを使うか、職場から離れた女性用トイレを使わざるを得ず、日常的に相応の不利益を受けている」と指摘しました。
そのうえで、職員が離れた階の女性用トイレを使っていてもトラブルが生じていないことなど今回のケースの個別の事情を踏まえ、「人事院の判断はほかの職員への配慮を過度に重視し、職員の不利益を軽視したもので著しく妥当性を欠いている」としてトイレの使用制限を認めた人事院の対応は違法と判断し、判定を取り消しました。
5人の裁判官全員一致の結論で、判決を受けて、経済産業省もトイレの使用制限の見直しを迫られることになります。
性的マイノリティーの人たちの職場環境に関する訴訟で最高裁が判断を示したのは初めてで、ほかの公的機関や企業の対応などにも影響を与えるとみられます。

https://www3.nhk.or.jp/news/html/20230711/k10014125111000.html

このニュースに対し「生物学的男性が女性トイレに入って来るなんて怖い」という発信がSNS上で活発になっています。この「生物学的男性」という言葉が独り歩きしていると感じるので、プリンセススクゥエアーLGBTs担当なりに、この判決について考えることを書かせていただきます。

原告は10年以上前から服装や戸籍の名前を女性的なものに変更し、女性ホルモン投与も行っています。そして省庁職員として数十年働いてきた経歴があり、職場の人間関係が出来上がっています。また他のフロアの女性トイレを使って問題が起きたことはありません。戸籍の性別を変更するには「生殖機能を永久に欠くこと」という条件があり、健康上の理由からこの手術はしていない、という状況です(ちなみに戸籍の性別変更に当たり、名前を変えることは条件ではありません。産まれたときに付けられた名前のままでもOKです)。

「ある日突然現れた男性にしか見えない人がトランスジェンダーを名乗って女性トイレに入ってきた」のではなく、長年に渡って性別移行の手続きを踏んでいる人が、生活実態に合わせるために働くフロアの女性トイレの利用を求めた、という背景があります。

そんな中、先に挙げた「生殖機能を永久に欠くための手術をしていない状態」を「生物学的男性」と呼ぶネットニュースの多いこと。そうした発信をされる方は、ご自身の性染色体の検査をしたことはありますか? 性ホルモン値を測ったことはありますか? ボイストレーニングで声を変える練習をしたことはありますか? 私はどれも経験していますが、やったらやっただけ思うんです。「生物学的に云々」はヒトの身体的特徴の一部を表現しているに過ぎないと。

その「一部」だけを取り上げて不安を煽るようなニュースに、トランスジェンダー当事者はますます追い詰められます。想像上のトランスジェンダーと実際のトランスジェンダーの乖離が起こっている、あるいは起こしている人がいます。不安を掻き立てられている人もある意味被害者です。誰もが安心して生活できる環境を作るために情報発信することが、ALLY(アライ)として私たちに求められていることだとも思います。

トランスジェンダー当事者のリアルな生活を伝えるために制作された無料冊子「トランスジェンダーのリアル」が第7版を迎えようとしています。もし「なんとなく怖い」と感じている方がいらっしゃったら、「本当に怖い奴だった」あるいは「意外とフツーだった」を、ご自身の手で、目で、確かめていただけたらと思います。

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