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東京23区でLGBTsが住みやすい街③中野区

1月の記事「LGBTsならではの資産形成とは? 専門家に聞いてみました!」(こちら)を読んでくださった方から、「東京23区でLGBTsが住みやすい街を知りたい」というご意見をいただきました!

前々回は渋谷区(こちら)、前回は新宿区(こちら)をご紹介しました。今回は再び、「LGBTQあるいはそうかもしれないと思う方々の、キャリア(仕事への思い)・人生設計」を応援する社会保険労務士・キャリアコンサルタント・ファイナンシャルプランナーの永井均さん(こちらにお話を伺います!

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「アカーは知ってるでしょう?」

永井さんから出て来たのは、LGBTsとって重要な名前でした。もちろん私も知っています。NPO法人アカー(こちら)は私にとってレジェンドのような、レガシーのような、それでいて現在もなお歩みを続ける大先輩たちが作り上げた団体です。

「中野区にはアカーの事務所があるんです。僕にはそれが一番のポイントだったんですよ。僕は東京に出るまでの約10年間、年に数回アカーのイベントに参加させていただいていました。ずっと地方に住み、クローズドなゲイだった僕にとって、初めて接するLGBTsの支援グループがアカーだったんです」

アカーは1986年に設立された市民団体「動くゲイとレズビアンの会」の現在の名称です。HIV/エイズについての啓発活動、検査・早期発見・早期治療を目的とした診療所の開設、相談事業、調査事業などを展開し、性自認・性的指向に関する偏見や差別を解消するための研修も行っています。

アカーに関して一番有名なのは「府中青年の家事件」です。田舎の高校生だった私はこの出来事を図書館の本で読み、東京にはこんなに行動力と信念のある団体が存在するのかと、感動した記憶があります。

「府中青年の家事件」は「東京都青年の家事件」とも呼ばれる損害賠償請求訴訟を指します。1990年、東京都教育委員会が管理する宿泊施設「府中青年の家」を利用した「動くゲイとレズビアンの会」のメンバーが、団体同士の紹介の場で活動内容を話したところ、他の利用者から侮蔑的な言葉をかけられたり、入浴を覗かれるなどの嫌がらせを受けました。

そうした団体に職員を介して抗議した上で、数カ月後にもう一度申し込みをすると、なんと「動くゲイとレズビアンの会」の方が利用を拒否されたのです。これは同性愛者への差別的な扱いだとして、1991年「動くゲイとレズビアンの会」は東京都を相手取り、東京地裁に損害賠償を求める訴訟を起こしました。肯定も批判も含め社会からのさまざまなリアクションを受けながら、この裁判は1997年に原告の勝訴が確定しました。

この結審で私にとって印象的だった判決文の一部をご紹介します。

都教育委員会を含む行政当局としては、その職務を行うについて、少数者である同性愛者をも視野に入れた、肌理の細かな配慮が必要であり、同性愛者の権利、利益を十分に擁護することが要請されているものというべきであって、無関心であったり知識がないということは公権力の行使に当たる者として許されないことである

東京高等裁判所 平成6年(ネ)1580号 判決

教育委員会や教員はLGBTsについて知っておかなければいけないと明記した、ひとつの起点だったと、今でも私が大切にしている文言です。この裁判をきっかけに司法試験を受け、弁護士になったメンバーもいらっしゃいます。日本のLGBTsにとっても、私個人にとっても、この事件は大きなインパクトを与えるものでした。

さて、大変長くなってしまいましたが、永井さんのお話に戻ります。

「もうひとつ、僕が中野区に憧れた理由は、中野区がとてもLGBTsフレンドリーな街と聞いていたからです。渋谷区や世田谷区でパートナーシップ制度が制定されるようになったのは僕が上京した後ですから、それを考えてもすごい街だったんですね。日本のカストロか、と思っていましたから(笑)」

自治体がLGBTsフレンドリーな姿勢を制度的に示すことで、住人の安心感はずっと上がるんですね。

「だからね、当時の僕は中野区にはゲイがたくさん住んでいると思い込んでいたんですよ。だからゲイの友人ができたらいいなと思って、中野区に住むことを決めたんです。そして僕の想像は必ずしも思い込みだけじゃなかった。駅からアパートまでの商店街を歩いていると、『あっ、あの人ゲイじゃないかな?』って直感的に感じる人を見かけるんですよ。僕は地方のクローゼットのゲイだったから、そういう仲間がいると感じるだけで嬉しかったなあ。レズビアンやトランスジェンダーの方もいました。そういう方々との出会いは初めてでした。

それに、上京後しばらくたって、『中野LGBTネットワークにじいろ』(こちら)にも参加させていただきました。中野区に同性パートナーシップ制度を策定するためにできたグループですが、すでに同性婚の必要性も説いていました。そのとき大変お世話になった方々とは、今でも連絡をとらせていただくことがあります。本当にありがたいことです。僕が中野区に住んでよかったと思っている点ですね」

そんな永井さんは今、大阪府大阪市でLGBTsの人生の設計そのものを支援する社労士・キャリアコンサルタントとして活躍されています。

「時間はかかったけど、ようやく自分のやりたいことと正直に向き合えるようになった、それに気づかせてくれたのが中野区という街と人々です。今でも上京することがあったら、必ず中野通りを歩きに行って、仕事を辞め東京に行こうと思ったときの自分を思い出し、原点を忘れないようにしています」

皆さんはどんな街に住みたいですか? その街の魅力はどんなところですか? ご自身に合った街を見付けるために、プリンセススクゥエアーは引き続き情報発信をして参りますね!

今回お話を伺った永井さんの事務所はこちら

永井均 ながいキャリア社労士事務所→こちら
〒531-0076 大阪府大阪市北区大淀中2-1-1 小川ビル4F
ヨリドコワーキン内 Mobile:090-6754-4402

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