土佐塾中学高等学校/藤澤佑介さん
2024年11月15日&22日放送
今回のお客様は、土佐塾中学高等学校の総合学習主任で、体験塾【役に立たない塾】主宰・藤澤佑介さんです!
▶ 海外留学で開眼!
子どもの頃は、ミニ四駆やファミコンに夢中になり、中学生になるとバンド活動を始めて、軽音楽部がある高校に進学した藤澤さん。高校2年生の夏から一年間、アメリカに海外留学しますが、事前オリエンテーションで経験した初めてのワークショップに感動!それまでの価値観が揺らぐほどの衝撃を受け、同時にそのワークショップをリードしていた方に憧れたそうです。
もともと父親が自宅で塾を経営し、母親もエレクトーンの先生をしていたことから「教える」ということに興味は持っていましたが、海外留学で異文化に触れるうちに、やはり自分は教育に関心があるということが分かって、自然な形で先生を目指すことにしたそうですよ。
▶ ハワイで繋がった高知との縁!
その後、英語教師を目指してハワイ大学の大学院に進んだ藤澤さん。ここで今に繋がる高知とのご縁がありました!
実は、ハワイで有名なアラモアナセンターから歩いて10分のところに「マキキ教会」という全米最大の日系教会があるのですが、その建物がどこからどう見ても「高知城」なのです!
実はこの「マキキ教会」は、ハワイへ移住してきた高知県出身の日本人・奥村多喜衛さんによって1904年に建てられたもので、故郷の高知城そっくりに作られた建物になっています。日本のお城を模した教会は世界広しと言えどもここにしかないそうですよ。
藤澤さんがハワイ大学の大学院に在籍していた当時、ちょうど「マキキ教会」が100周年を迎える時期で、もう一度高知との繋がりを見直したいとの想いから、若い世代の交歓留学を行う企画が持ち上がりました。
そのとき、藤澤さんはハワイの受け入れ側として活動。そして交歓留学生として高知からやって来たのが土佐塾中学高等学校の生徒10人でした。藤澤さんはそのときの体験が今でも忘れられないと言います。ハワイに来た生徒たちが短期間にガラッと変わる様を目の当たりにし、「これは素晴らしい!これからもこんなお手伝いができたら」と思って、それまで縁もゆかりも無かった高知県に飛び込む決心をしたそうです。つくづく人生ってご縁だなあと感じますよね。
▶ 教育現場で感じることは?
英語教師として教壇に立って約20年。日々生徒たちと向き合う中で、藤澤先生が感じていることをお話しいただきました。
実は7~8年くらい前から、それまで行ってきたアプローチが生徒に響かなくなってきていることを感じ始め、コロナ禍のタイミングで一旦立ち止まって「これでいいのかな?」「本当はどんな風に在りたいのかな?」と考えてみたそうです。
そして、いま思っていることを敢えて言葉にすると
【 軍事的な世界観から ワクワクと冒険の世界観に変わっていきたい! 】
(少し変な言い方かもしれませんが…)
かつての教育現場は《叱責と懲罰》の色が濃かったと思います。
先生が生徒に「これをやりなさい!」と言って、出来なければ怒る ─。
そんな常識の中で、一部の生徒に対しては上手く行くけど、その下に多くの上手く行かない子どもたちがいる。でも何となくそれで現場が回っているからそのままで行く。そんな排除の論理が働きやすい土壌があったように思います。ただ自分が親になり、子どもが成長していって、自分の子どもをそんなところに入れたいか?と考えたところ、いや待てよ!となったそうです。
こうして辿り着いたのが《ワクワクと冒険の世界観》!
コロナ禍で授業の形が一変し、それまで普通に出来ていたことが出来なくなる体験をしたことで、以前にも増して「学ぶことって楽しい!」と実感するようになったそうです。藤澤先生は、生徒にもそんな想いを持って欲しいし、「世界は変えられる!」と思って欲しいと考えています。先日も国政選挙がありましたが、自分たちの一票を「こんなんじゃ変わらない」と思うのか、「これでもしかしたら世の中が変わるかも?」と思うのかは大きな違いがあります。自分が起こした一つのアクションが何かを変えるきっかけになることにワクワクして欲しい。それが今の願いなんだそうです。
▶ 異文化交流も継続中!
今から20年前に始まった、土佐塾中学高等学校とハワイとの異文化交流事業は今でも続いています。【 Rainbow Connection 】と名付けられたこの交流事業では、毎年3月後半に、主に中学2~3年生の生徒14人ほどが参加しています。現地の若者たちと一緒にキャンプをしたり、ホームステイしたり、約10日間いろんな体験をします!
14~15歳の多感な中学生たちが、自分の感性のボリュームをMAXにしてただただ思いっきり楽しむ!そんな経験が、その後進んでいく道の指針になったり、支えになるかもしれませんね。
▶ 正直&ポジティブ!
生徒たちと向き合ううえで心掛けていることについても伺いました。
藤澤先生が大切にしているのは … 【 正直&ポジティブ 】!
教師という立場を必要以上に意識してしまうと、自分が感じている不安や怖さを表に出せないことが多かったそうです。しかしそんな想いも、正直に出してみると、本音の部分で生徒と繋がれる気がしたんだとか…。例えば、「これ、僕もやってことがないから不安なんだけど、ちょっと力貸してよ」というような言い方をすると、生徒からも「うん、分かった!」と、これまでとは少し違う反応が返ってくるんだそうです。今はこれがお互いにとって良いのではないかと感じているそうですよ。
また藤澤先生は、常々「ポジティブでいたい」と考えているし、ポジティブは周りにも伝わっていくと感じています。【 正直&ポジティブ 】、先生と生徒だけでなく、親と子の場面においても大事なキーワードかもしれませんね。
▶ 役に立たない塾って?
実は藤澤先生は【役に立たない塾】と題した体験塾も主宰しています。
本来「学ぶ」って楽しいはずなのに、そう思えなくさせているのは何か?
そんなことを考えたときに「誰かの役に立たないと自分の存在価値が無い」というプレッシャーがあるのでは?という考えに行き着いた藤澤先生。
そこで「誰かの役に立つということを一度手離して、自分が本当に大切にしたいことに目を向けてみませんか?」という想いでつくったのが【役に立たない塾】。大人も、子どもも、自分らしく学ぶ楽しさを取り戻す体験を提供しようと、不定期に学び・遊びに関するイベントを企画しています。
そんな【役に立たない塾】の体験イベントとして実施しているのが、一般社団法人「みつかる+わかる」の代表理事・市川力さんが提唱している《Feel度Walk》です。(フィールドウォークと読みます)
《Feel度Walk》は、参加者が地域を歩いて、面白いもの・気になるものを探し、それを撮影。参加者同士でスケッチして共有することで、観察力などの感度(Feel度)を高める効果が期待されている活動です!
【役に立たない塾】では、これまでに《Feel度Walk》を4回開催してきました。最初は、2023年12月の高知市土佐山地域。2度目は高知市追手筋の日曜市。その後、高知市鏡庁舎周辺、そして鏡川上流域・鏡吉原でも開催しました。鏡川流域での開催が多いのは、藤澤先生が高知市主催の「鏡川流域パートナーシップ事業」に関わっているから。2023年に受講生として参加した際に、遊びを企画するワークショップがあって、以前から興味を抱いていた《Feel度Walk》をやりたい!と思ったんだそうですよ。
2023年8月に鏡川上流域で開催した際には《Feel度Walk》にプラスして、スマホアプリ「Biome」を活用した動植物の調査も行いました。
「Biome」は、写真を撮ると、それが何の生きものなのか、何の植物なのかをAIが判定して教えてくれるというもので、しかもそれをポケモンのようにコレクションできるという楽しいアプリ!その中の一つのクエストとして『鏡川流域いきもの図鑑をつくろう2024』というものがあり、参加者の皆さんが撮影した動植物が図鑑にどんどん登録されました。
藤澤先生が《Feel度Walk》をとおして感じていただきたいのは、普段は見過ごしてしまいそうなものに目を凝らし、それを面白がる力を養うことで、毎日がもっと楽しくなるということ。子どもたちはもちろん、大人の皆さんにも、ぜひ参加していただきたいイベントです!
▶ 歴史探検イベントも開催!
11月4日には【役に立たない塾】の新しい企画として、歴史探検イベント《朝倉城跡・歴史探検ハイキング》を開催しました。
歴史と自然の鏡川流域里山探検ツアー第1弾として開催されたこのイベントでは、高知大学のすぐ西にある標高102mの朝倉城跡を探検し、歴史に想いを馳せたり、草花を楽しんだり、身体を動かしたり、いろんな楽しみ方をしたそうです!
参加者は、小学4年生の子どもから、おじいちゃん・おばあちゃん世代、さらには、ほっとこうち・今橋さんまで(笑)およそ10人ほど。敢えて強めのガイドをせず、それぞれが感じるものを大切にして、気になるものを自由に散策できるようにしました。
朝倉城跡には実際に建物があるわけではないのですが、在りし日の姿に思いを馳せてみると、かつての石垣が見えて来たり、ここにあったであろう堀を感じたり、また城が攻められたときにはここから攻撃したんだろうなあと想像したり…。イマジネーションの楽しさを堪能できたようです。
今回は第1弾として開催しましたが、ぜひ第2弾を企画したいと考えているそうですので、興味がある方は【役に立たない塾】のnoteページや、藤澤先生のSNSをチェックしてみてください♪
▶ 今後の夢は?
土佐塾中学高等学校の現役教師であり、【役に立たない塾】の主宰でもある藤澤先生に今の活動のやり甲斐を伺いました!
最後に藤澤先生の夢を伺いました。
■ ワクワクと冒険の世界観に生きられる喜びを増やしていきたい!
そういう風に生きられる瞬間が少しでも増えていけば、人生の見え方が全然変わってくると思うし、やり甲斐を持って生きられるのではないか?そういうことに貢献できたらと思っていますと語ってくださいました。
「学ぶって楽しい」「日頃、見過ごしてしまいそうなものを面白がる」。藤澤先生の言葉には、人間としての本質的な部分に訴えかけるパワーと、自分を枠に当てはめず自由でいいんだよ!という優しさが込められているような気がします。【 正直&ポジティブ 】がモットーの先生の活躍をお祈りしております。これからも学ぶ楽しさを伝えていってください、ふじぽん!!