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黄色い家🏠

川上未映子著 黄色い家を読み終えました。
わたしなりの考察が書きたくなったので、ネタバレを含みます。
未読の方はご注意ください。

表紙の雰囲気や、sisters in yellowという英題からして、あんなに重たい雰囲気、苦しい気持ちになるとは思ってもみませんでした。


主人公の花は、スナックで働く愛の一人娘です。
しかし、愛は世間一般の母親とは違い、愛という名前が悲しいほどに、食べ物は適当に買って食べる、帰ったら愛は仕事に出ていきすれ違った生活、を送ることになります。
そんなある日、中学生になった花の隣に、起きたら知らない女性が母のパジャマを着て眠っています。愛がたまにスナックの女性を泊めたりしていたことから、この人もそうなんだろう、と不思議に思わず花は二度寝します。
そして、花が起きた時、女性はもうおらず、布団とパジャマがとても綺麗に畳まれているのを見て、花は見惚れてしまうのです。
花と愛の生活は、洗濯物が乾いたら取ってそのまま着る、そんな生活だったようなので、花にとってそれは輝いて見えたのでした。
その女性、黄美子さんが、花をある意味狂わせてしまう、彼女にそんな気持ちはないのですが、そんなお話です。

毒親、なんていう言葉がありますが、愛は世間で言うところのそれだったのかもしれません。
所謂ネグレクトですね。
娘よりも男、つまりいつまでも母親でなく、女性なのです。
愛は占いにはまり、占いの通りにしていたら幸せになれる(この場合、男と金の運に恵まれる)と信じており、そのために源氏名を変えたりもします。そして、ある日、少し家を空けるといって、出ていってしまいます。
そこでしばらく同居することになったのが黄美子さんです。

彼女はパジャマの一件でもわかるように、洗濯物は畳み、家をいつも掃除してくれていることに、花はある時気づきます。
そして黄美子さんに尋ねます。
占いで信じているものはあるか?と。
彼女は
四柱推命と風水はちょっとかな
と答えます。
風水に興味を持った花は、その後風水、特に金運に良いとされる黄色に執着していくようになります。
一見、これは占いにハマったように見えますが、お金への執着の始まりだったのです。

ネグレクトの最も恐ろしいと思う点は、
アイデンティティを持てない子に育つ
ということだとわたしは考えます。
子どもは親からいろんなことを、見たり聞いたりして知りますが、花にはそれが圧倒的に欠けており、普通であるとかないとかいう以前に、自分というものを持っていない子だった、という点がいちばん脆弱で、そこに憧れの黄美子さんが信じている、風水という名のお金への執着がしっかり根付いてしまったのではないか。
それが自分の生きる道になってしまったのではないか。

つづく

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