精神科専門医試験・症例報告(ケースレポート)作成マニュアル【2024年最新版】

【ぽろにあの精神保健指定医&精神科専門医マニュアル】
精神保健指定医取得マニュアル①症例集め編
https://note.com/prideofpaulownia/n/n763a86c8d027
精神保健指定医取得マニュアル②ケースレポート記述編https://note.com/prideofpaulownia/n/na9ed2bd47fbd
精神科専門医試験・症例報告(ケースレポート)作成マニュアル
https://note.com/prideofpaulownia/n/n3f745d96cf28
精神科専門医試験・面接試験対策対策マニュアル
https://note.com/prideofpaulownia/n/n075c60d98898

 こんにちは。ぽろにあです。
 今回の記事は約35000字と、大ボリュームになってしまいました(汗)。

 この記事では、精神科専門医(以下、「専門医」)申請の際に求められる「症例報告」の作成・記述についての対策を書かせていただきます。
 症例報告の作成例も掲載します。
 
 さて、いきなりですが最初に言っておきます。

 よく、「専門医のレポートの方が精神保健指定医のレポートより楽」などと言う人がいますが、全くの誤りです!!!!

 実際、精神保健指定医(以下、「指定医」)がスムーズに取得できた人が、何人も専門医の症例報告では落とされています。

 この専門医の症例報告の作成、本当に大変なのです。

 簡単に言うと、「経験すべき疾患(病名)」と、「経験すべき治療場面」、「経験すべき治療形態」というのがあって、これらを組み合わせて、必要症例数を満たす必要があるのです。もう、これがパズル的な作業。

 内容の審査も実に細かい。診断に対しての疑義が出たり、経験場面の条件を満たしているかも厳密に問われます。

 ぽろにあとしては、指定医レポートの方が、所謂「型にはめて」書く部分が多いので楽でしたね。

 ですので、ぜひこの記事を参考にして、できれば一発でクリアしてください!!

 ※当たり前ですが、学会が出す「受験の手引」は、穴があくぐらいよく読んでください! 


1.経験すべき疾患についての総論(学会より2021年度からの変更点あり!)

 なんと、2020年12月付で日本精神神経学会より通達があり、「経験すべき疾患」の症例報告数などが変更されました。以下を参考にしてください。

変更前)
①[F2]統合失調症 2例以上
②[F3]気分(感情)障害 1例以上
③[F4][F50]神経症性障害、ストレス関連障害及身体表現性障害(摂食障害を含む) 2例以上
④[F4, F50, F7, F8, F9]児童・思春期精神障害(摂食障害を含む)(主治医としての初診時に18歳未満) 1例以上
⑤[F1]精神作用物質による精神及び行動の障害 1例以上
⑥[F0][G40, G41][F51, G47]症状性を含む器質性精神障害(認知症など)(精神症状のないてんかん、睡眠障害を含む) 2例以上(※1例は認知症を含む)
⑦[F6]成人のパーソナリティと行動の障害 1例以上

変更後)太字が変更点
①[F2]統合失調症 1例以上
②[F3]気分(感情)障害 1例以上
③[F4][F50]神経症性障害、ストレス関連障害及身体表現性障害(摂食障害を含む) 1例以上
④[F4, F50, F7, F8, F9]児童・思春期精神障害(摂食障害を含む)(主治医としての初診時に18歳未満) 1例以上
⑤[F1]精神作用物質による精神及び行動の障害 1例以上
⑥[F0][G40, G41][F51, G47]症状性を含む器質性精神障害(認知症など)(精神症状のないてんかん、睡眠障害を含む) 2例以上(※1例は認知症を含む)
⑦[F6]成人のパーソナリティと行動の障害、[F84]広汎性発達障害、[F90]多動性障害、([F84][F90]に関しては主治医としての初診時に18歳以上) 1例以上

 まず症例報告数が減った点はわかりやすいと思います。そして、⑦の部分、成人のパーソナリティと行動の障害以外でも大丈夫になりました。

 というわけで、変更自体は難化したというわけではないと言えます。

 どんな症例が必要なのかをきちんと把握しないと、症例集めもできませんので、上の内容は頭に叩き込んでおく必要があります。

2.経験すべき治療形態で注意すべきこと

 「経験すべき治療場面」には、以下の4つがあります。
①救急 1例以上
②行動制限 1例以上
③地域医療 1例以上
④合併症またはリエゾン いずれか1例以上

 ①救急とは、診療時間内外を問わず、興奮状態・意識状態・昏迷・自殺企図などのために救急対応を必要とした症例です。
 ②行動制限は、個室隔離や身体的拘束を行った症例です。経験すべき治療場面の「行動制限」を適用しない症例でも、行動制限をしたからといってケースレポートに使えないというわけではありません。必要症例に最低限行う分には問題ないでしょう。ただし制限度が最高に高い処遇である身体的拘束を、長期にわたり続けたような症例は合格率が低くなりますせめて1週間程度までにしておきましょう。隔離の代用として身体的拘束を用いたような記述は当然不可で、「興奮状態で落ち着かず、隔離室がないため拘束した」等と書くと、即失格です。隔離、身体的拘束の開始判断理由についてですが、単に「興奮」「不穏」や「暴力」だけだと、隔離はよくても身体的拘束の条件は満たさないと考えてください。身体的拘束を必要とする理由としては、「壁に頭を打ち付ける」など、隔離でも制限できない自傷行為により自己の生命の危険がある、などが説得力があります。指定医レポートの場合、隔離した場合は連日の診察、身体的拘束をした場合は毎日頻回に診察した旨を記載しますが、専門医の症例報告では不要と思います。
 ③地域医療とは、患者の精神科的治療を進めるうえで、地域の保健・福祉・医療資源との連携が重要であった症例です。重要なのは他機関との連携であり、他機関の利用について主治医として積極的に関わった経験です。この具体的な記載方法は各論で後述します。
 ④合併症とは、精神科に入院中の症例で、身体疾患を合併しており、他科により診療が行われたか、あるいは他科の指示を受けて精神科主治医が身体疾患の診療を行った症例です。リエゾンとは、他科において入院、あるいは外来受診中の身体疾患を有する患者で、精神症状が出現したために診療を依頼され、他科の医師と密接な連携をとって治療に当たった症例です。

 ※注意!※ 当然ながら単科精神科病院では、リエゾン症例は担当できません。ではどうするか。合併症と言っても、単科精神科病院では内科医がいなかったり、いても非常勤だったり、やはり難しい。そういうときは例えば以下のような方法もあります(私もこうしました)。

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