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激闘J2の8年間を場所ごとに振り返る。

はじめに

 激闘のシーズンが終わり、余裕のある週末を迎えている反面、物足りなさも感じている今日この頃。契約更新のお知らせが思うように出てこないもどかしさを感じつつ、来シーズンの開幕カードも発表され、いよいよJ1での闘いが目前に迫っていることを実感している。
 さて今回は、激闘J2の8年間を自分なりに見てきた中で、場所ごとに印象に残っているエピソードを挙げながら振り返っていきたいと思う。「こんなこともあったな」と一緒に振り返ることができたら幸いである。というわけで、しばしお付き合いいただきたい。

ソユースタジアム

 昇格が間近に迫った 2023年10月14日、7月の豪雨災害で延期となっていたアウェイ秋田戦が行われた。試合前の時点で、この試合では昇格も優勝も決まらないことはわかっていたが、多くのサポーターが秋田まで足を運び、昇格に大手をかける貴重な勝利を掴んだ。前年にものすごく悔しい敗戦をしていただけに、この勝利は格別すぎた。結果的にこの一勝が背中を後押しし、この翌週、熊本の地で昇格を決めることになる。

NDソフトスタジアム山形

 「この試合があったから今がある。」と言っても過言ではない。2019年11月24日、J2残留をかけて挑んだシーズン最終節。選手入場時に肩を組んで「Love me tender」を歌った時の光景は今でもよく覚えている。
 試合は0-1でリードされる苦しい展開で、一時は降格権に足を踏み入れた時間もあった。そんな中、下坂晃城の同点ヘッドとロメロフランクの勝ち越しゴール。これは本当に泣けた。今でもYouTubeでこの試合のハイライトは時々見ている。

ユアテックスタジアム仙台

 2023年11月12日、町田を愛し、町田に愛された男、太田宏介の現役ラストマッチ。交代の際、我々サポーター席に向かって、胸のエンブレムに拳を当てながら走っていく姿に心を打たれた。FC町田で育ち、FC町田ゼルビアで現役を退いた太田宏介、その姿はいつまでも色褪せることはないだろう。町田に戻ってきてくれたことに、改めて感謝したい。

いわきグリーンフィールド

 2023年3月26日、大雨と強風が吹き荒れるいわきグリーンフィールド。跳ぶたびに足元の芝の斜面が崩れていく。試合内容も含めタフすぎた一戦。そんな中、途中出場の黒川淳史が87分に値千金のゴール。全てが報れた瞬間だった。

正田醤油スタジアム群馬

 2022年7月10日、ゼルビアアカデミー出身の男、樋口堅がJリーグデビューを飾った。アカデミー出身として、多くの期待を背負う彼のデビューにサポーターは喜びに包まれた。そんな彼は今、JFLの沖縄SVに期限付移籍中。これまでの何倍も成長して帰ってくるのを待っている。

栃木県グリーンスタジアム

 「ラスボス栃木」と呼ばれるほど相性が悪い栃木。遠征帰りに食べる佐野ラーメンはおいしかったが、試合の記憶は苦いものが残る。そんな中、ポジティブな要素があったのが、2021年夏の闘い。期待されながらも、もがき苦しんでいた悩めるストライカー鄭大世が移籍後初ゴール。そして後半には、当時、特別指定選手だった新米ストライカー佐藤大樹がJリーグデビューを飾った。思えば栃木の地では1つも勝てず。いつか必ずリベンジを果たしたい。

NACK5スタジアム大宮

 2022年8月20日、通算で7年監督を務めた相馬直樹監督と対戦相手として相見えることになった。プレーオフ出場圏内を射程圏内に捉え、緊張感のある闘いが続く中、見事に勝利を収めた。この試合でヒーローとなったドゥドゥは、サポーターのパイフラを自ら振り喜びを表現した。しかし、誰が予想しただろうか、8月のこの試合での勝利が、シーズン最後の勝利となったことを。

フクダ電子アリーナ

 2023年6月3日、フクアリ劇場。スコアレスのまま試合はロスタイムに突入、しかし、ここから素晴らしいドラマが待っていた。91分、これまでの鬱憤を晴らすかのような沼田駿也の移籍後初ゴール。これでもか!と言わんばかりの雄叫びに胸が熱くなった。さらに96分、今度は藤尾翔太にも移籍後初ゴールが飛び出す。思えば、このあたりから「藤尾無双」が始まったなと。

国立競技場

 「私達は、本気だ。」の言葉が街中に溢れ、小田急線新宿駅にも巨大ポスターが掲出された。2023年7月9日、J2初の新国立開催試合はクラブ、サポーターの努力により、クラブの歴代最多入場者数を3倍以上上回る38,402人の観衆を集めた。
 試合は、開始早々に藤尾翔太が挨拶がわりの先制弾。さらに、安井拓也の移籍後初ゴールで2点を先行。しかし、後半は攻勢をかけるヴェルディの勢いを止められず、悔しい引き分けに終わった。
 しかしクラブにとって、この試合を成功させたことは大きな財産になった。コレオの実施に向けた多くのサポーターの協力、新宿行きの臨時ロマンスカーの運行など、この試合に向けて尽力された全ての人への感謝を忘れてはならない。

味の素スタジアム

 「東京クラシック」そこには数々の熱い戦いがある。そんな中、印象に残っている2つのエピソードを挙げてみる。
 まずは2018年5月3日、守護神・福井のJリーグデビュー。2015年のJ3時代から125試合に渡りスタメン出場を続けていた絶対的守護神・高原寿康に替わり、大卒ルーキーの福井光輝が起用された。この試合以降、福井はスタメンに定着し、今日に渡りゼルビアを支えている。ゼルビアにとって一つの時代の幕開けとなった。
 次に2020年6月27日、新型コロナ蔓延による、およそ4ヶ月の中断を経て迎えたリーグ戦再開後の初戦。開始3分、エース・平戸が決めたゴールはゼルビアのJ2通算200ゴールに。リモートマッチと言えど、日常を一つ取り戻した瞬間だった。
 来る2024年、東京クラシックをいつかJ1で、という思いを持ち続けていた中で、それが遂に実現する。両チーム同時昇格というのも、何かの運命かもしれない。

デンカビックスワンスタジアム

 2021年12月5日、大学3年生ながら特別指定選手としてチャンスを掴んだ平河悠がJリーグデビューを果たす。今やパリ五輪を視野に入れるスピードスターだが、彼自身は決して注目されていたわけではなく、着実にステップアップしながら、自らの足で道を切り開いてきた選手だ。パリ五輪そしてA代表へ、多くのサポーターが彼の行末を期待している。

石川県西部緑地公園陸上競技場

 2020年9月9日、我らがキャプテン奥山政幸にプロ初ゴールが生まれる。加入から4年目のゴールということもあり、待望のゴールに胸が熱くなった。ただ、これ以降、毎年ゴールを積み重ねてきたキャプテンだが、なぜかキャプテンが決めた試合は勝てないというジンクスも。そんなジンクスは2023年4月29日、ホーム熊本戦で破られることに。

JITリサイクルインクスタジアム

 2019年8月4日、キング平戸太貴のゼルビア復帰。2017年に鹿島からの期限付移籍で加入した平戸は、2018年に8ゴール17アシストの活躍を見せ、同年オフに満を持して鹿島へ復帰した。
 残念ながら鹿島で思うように出場機会を得られず、2019年夏、完全移籍で町田に復帰。シーズン当初から空き番だった背番号10が用意され、キングの復帰に我々は歓喜に包まれた。
 復帰後の初戦となったこの試合でスタメン起用され、試合前のアップでは、半年ぶりに歌う平戸のチャントに湧いたのを覚えている。
 そんな平戸だが、2022年にはキャプテンを務めるなど中心選手として活躍し、その活躍が認められ、ゼルビアより1年早くJ1の舞台に羽ばたいた。来シーズンの対戦が今から楽しみである。

サンプロアルウィン

 2018年8月18日、ともに上位を走る中で迎えた松本山雅FCとの6ポイントゲームはスコアレスのまま後半アディショナルタイムに突入。目安は4分。時計の針が93分を回ったところで、ペナルティエリアの少し手前で鈴木孝司が倒され、フリーキックを獲得。キッカーは平戸太貴。緊張感がスタジアムに走る。思いをのせて放たれたキックは、鮮やかな放物線を描き、ゴールに吸い込まれた。スピード、コースともに申し分なかった。そして、試合再開とともに試合終了。まさに野球でいう「サヨナラ勝ち」の松本の夜だった。

IAIスタジアム日本平

 2023年8月19日、ある意味、シーズンのターニングポイントだったとも言える大一番。序盤に古巣対戦に燃える髙橋大悟の恩返し弾と、エリキのゴールで2点を先行するも、前半37分、そのエリキが負傷交代。これまで18ゴールを挙げていた大黒柱の離脱、首位を走るチームに激震が走った。
 しかし、翌週のホーム山形戦では、エリキ不在を感じさせない5得点による快勝を見せた。「Always with ERIK」を胸に、これまで以上にチームが一つになるきっかけになったのではないだろうか。エリキの復帰は来年5月頃の見込みだが、戻ってきたら「おかエリキ」で迎えたい。

ヤマハスタジアム

 2023年4月12日、平日ナイターというタフなスケジュールの中、両チームの思いがぶつかる大熱戦が繰り広げられた。この試合、新加入の藤原優大がスタメンに抜擢され、恩師黒田監督の前で一定のパフォーマンスを見せたが、両チームの選手によって繰り広げられた乱闘の当事者として退場処分を受ける。
 しかし、出場停止が明けて以降、藤原はシーズンを通して安定したプレーを見せ、大一番となった野津田での対戦でも勝利に貢献した。ジュビロとは来シーズンもバチバチとした熱い闘いが見られそうだ。

シティライトスタジアム

 2022年はプレーオフをかけた闘いの中、色々な意味で差を見せつけられ本当に悔しい思いをした。しかし、2023年はそのリベンジを果たす快勝。首位独走に拍車をかけた一戦となった。古巣相手にPKを止めてみせたポープウィリアムの活躍も光った。

維新みらいふスタジアム

 レノファ山口FCは2015年のJ3を共に勝ち抜き、2016年にJ2昇格を達成した同期である。両チームの対戦は引き分けがなく必ず決着がついたのも、何か因縁を感じる。優勝を決めた翌週に行われた今年のアウェイ戦では、「ガード・オブ・オナー」で迎えてくれたことに感謝したい。そして、またいつの日か、J1の舞台で対戦したい。

ポカリスエットスタジアム

 吉尾海夏、彼は2020年から2シーズンにわたって、横浜F・マリノスからの期限付移籍で在籍していた選手である。そんな彼が、レッドカードを受け退場となったのは、2020年のアウェイ戦でのこと。涙を流しながらピッチを後にする姿が印象的だったが、その後、彼はしばらく出番を失ってしまう。
 ただ、ここで彼は終わらなかった。2020年の終盤に存在感を見せ始め、2021年にはチームトップの10ゴールを挙げ、満を辞してマリノスに復帰した。ゼルビアを去った後も、彼のことを追っているサポーターも多い。最近ではコンスタントに出場機会を得ており、彼の熱烈なサポーターも喜んでいることだろう。

ニンジニアスタジアム

 このスタジアムでスーパーゴールを決めた選手といえば、ドリアン・バブンスキーである。2018年から3シーズンに渡り在籍し、先に挙げた山形戦では残留を手繰り寄せるロメロフランクのゴールをアシストするなど、要所要所で印象的な活躍を見せた選手である。
 そんな彼は今、スイスの名門グラスホッパーに在籍し、北マケドニアの代表選手にまで駆け上がっている。元ゼルビア戦士の活躍はやはり嬉しいものだし、SNS等で今後の活躍を見守りたい。

ベスト電器スタジアム

 2017年4月8日、奇跡の大逆転勝ちを達成した伝説の試合。1点ビハインドの中、退場者を出したゼルビアは10人での戦いを余儀なくされたが、「アビスパキラー」中島裕希が、およそ10分でハットトリックを達成。最後まで諦めない気持ちが見えていたし、サッカーは何が起こるかわからないことを痛感させられた。

トランスコスモススタジアム長崎

 長崎遠征は本当に楽しい。諫早駅からスタジアムまでの「おもてなしロード」で地元の方からたくさんの「おもてなし」を受け、試合前から最高の気分になれる場所。しかし、試合になれば楽しかったことはいったん忘れて応援に集中しなければならない。ましてや、優勝を目指しているチームが3試合無得点中であればなおさらである。というわけで全力応援した結果、Jリーグ参入後最多の6得点差勝利。記憶にも記録にも残る勝利となった。

レゾナックドーム大分

 「こいつらすごいです。」この言葉は、3-4で敗戦となった2018年のアウェイ戦後に相馬監督が語った言葉である。いったい何がすごかったのか、それは2人の退場者を出しながらも最後まで諦めず、1点差まで追い詰めたからである。
 「絶対に死なないチーム」この頃のゼルビアはそう例えられ、どんな相手でもどんな展開でも、ハードワークを惜しまず、最後まで闘い続けた。そんな相馬ゼルビアの姿が色濃く見えた試合だった。

えがお健康スタジアム

 2023年10月22日、J1昇格決定。コールリーダーの言葉を借りれば、熊本に集まった約500人のサポーターは、J1昇格の証人となった。
 最初にゴールネットを揺らしたのは熊本だった。しかし、オフサイドによるノーゴール判定。これで流れが傾いた。水を得た魚のように息を吹き返したゼルビアは、前半終了間際に宇野禅斗が鮮やかな弾丸ミドルを決める。
 後半に入るとさらに攻勢を強め、52分には髙橋大悟、61分には下田北斗のゴールが生まれる。そして、刻一刻と迫る歓喜の瞬間。
 試合はいよいよロスタイムに突入、表示は5分。「Los Del Azul」 が始まって、さすがに涙を堪えることが出来なかった。本当に夢のJ1の舞台に立てるんだなと。気づけば多くのサポーターが泣いていた。
 そして迎えた歓喜の瞬間、この日ベンチ入りすることが叶わなかった選手も含め、選手・スタッフ陣の歓喜の輪が広がった。本当にこれまで応援してきてよかったと思える瞬間。我々はこの日を一生忘れることはないだろう。

タピック県総ひやごんスタジアム

 2020年12月20日、我らがキャプテンとしてチームを引っ張ってきた「闘将」李漢宰にとって、現役ラストマッチとなった。シーズン終了後に引退を発表したため、この試合が最後の試合になるか、我々には分からなかったが、おそらく本人は引退を決めた上でこの試合に臨んだことだろう。
 「自分がいなくなっても、康太と裕希がいれば大丈夫」という言葉は今でもサポーターの胸に刻み込まれている。チームがどんなに変化しても、このチームに在籍し支えてきた歴代の選手たちのことを忘れずに、これからも闘っていきたい。

町田GIONスタジアム

 最後は我らがホーム野津田。来年はJ1のチームを迎え、数々の激闘がこの場所で繰り広げられると思うと、今からワクワクが止まらない。これまで築いてきた歴史と同様、これからの物語の全てを作っていくのは我々自身。どんな時も変わらず、いつも我々のすぐそばにある野津田。歓喜の声で揺れ、蒼く燃え上がっている野津田をこれからもたくさん見るために、その時その時を大切に歩んでいきたい。

終わりに

 本当はもっとたくさんの場所を載せるつもりが、あまり長くなってしまっても締まりがなくなってしまうので、かなり削ることに。なので、こんなこともあっただろ!という方は是非教えてください。
 それでは、2024年がゼルビアにとって飛躍の1年になることを願って、最後はゼルビア締めでいきましょう。
 「タン・タ・タ・タン・タン タン・タン🎵」
 最後までお読みいただきありがとうございました!

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