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「ARゲームは”F1”と同じ」。コンシューマー・スマホゲームの元ディレクターに聞く「ARゲーム開発」は何が違う?

こんにちは!Pretia TechnologiesにてHR Managerをしています、田中です。

Pretia Technologiesには、神保町で公開中の「ある珈琲店からの挑戦状」など、AR謎解きゲームを開発するチーム、Entertainment & Media Divisionが存在します。そのチームにてプロダクトマネージャーを務める2人のメンバーにインタビューを行いました。

前職にて家庭用ゲーム機向けゲームを作ってきた竹本さん、スマホゲームを作ってきたGiuseppeさん、それぞれから見るARの面白さ、難しさを語っていただきました。ARを使ったエンターテインメントに興味をお持ちの方、必読です!


インタビューを受けてくれたメンバーのご紹介

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Pretia Technologies Inc. Game Designer 竹本聖隆(Masataka Takemoto)/ Masa
任天堂株式会社で、ゲームデザイナー、コーディネーターとして17年従事。2021年プレティア・テクノロジーズに入社後、エンターテインメント部門のProduct Managerとして開発に携わる。


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Pretia Technologies Inc. Project Manager Giuseppe Parisi / Giuseppe
ワンダープラネット株式会社にて、約5年間、ゲームデザイナー・運用ディレクターを務める。2021年プレティア・テクノロジーズに入社後、エンターテインメント部門のProject Managerとして開発に携わる。


ゲームづくりでも、全く違うゲーム領域の2人がARゲームを作りはじめた理由

ーまずはお2人の自己紹介をお願いできますか?

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Masa:入社当時から2Dの有名なコンシューマーゲームのチームで企画職をしていました。有名なタイトルでしたが、入社当時はもうあまり売れないだろうと思われていて、そんなに期待されていなかったんですよね。なのでわりと自由に楽しくゲームづくりをやらせてもらっていました。だた、そのタイトルが結構売れちゃって…。新しいゲーム機で新作を作る際に「このシリーズは売れて当たり前だよね」という空気感になって自由に作るのが難しくなりました。
入社してから会社には長くいたのですが、仕事自体にはやりがいはあるものの、立場的にもなかなか自由に新しいものが作れないなと感じはじめて、そのタイミングで誘ってもらって、Pretiaに出会って入社を決めました。誘ってもらったときにCEOのYuさんに会社ビジョンをきくような機会があって、そのときに質問したことに的確に答えてくれて、創りたい世界観がもうあるのがすごくいいなって。そこからは迷わずに決めました。

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Giuseppe:来日して、日本の大学で文化人類学を研究していました。その過程でゲームを研究課題にしたいなと思っていたのですが、気づいたらゲームを作る側になっていました(笑)。最初のキャリアとしては、日本のスマホゲームをイタリアも含めて海外市場にローカライズするところから始めて、実際にゲームを作るという仕事が楽しいなと感じるようになったんですね。
Masaさんのようにコンシューマーゲームもとっても好きだったのですが、自分の仕事としてはスマホゲームを作っていて。あるゲームについては、日本のコンテンツをそのまま海外に出すのではなく、各リージョン向けにだすコンテンツを作る仕事もしていました。ただ、ゲームをゼロから作るような仕事も多かったですね。
積極的に転職活動していたわけではないのですが、あるときPretiaからスカウトが来ました。面接を進めるのと並行して自分の知らなかった領域であるARについて少し勉強していたのですが、素人ながらにARゲームを作るというのがユーザーにとって失礼だなと思うようになって、一度入社を断ったんです。でもCEOのYuさんが追いかけてきて…(笑)。話しながら改めてAR市場の大きさを認識し、今ARゲームに自分が関われば、将来ものすごく面白いサービスをつくれるだろうなと腹落ちして、入社を決めました。


思わぬ”積み重ね”が、ゲームづくりの思想につながっている

ーコンシューマーゲームとスマホゲームという、ゲームづくりでも違う領域が同チームにいらっしゃるんですね。

Giuseppe:そうですね。開発期間も結構違うんじゃないかな。スマホゲームだとキャラデザインに5-6ヶ月くらい。クエストは1-2ヶ月、イベントごとに3ヶ月の開発が入ってくる感じでしたね。たぶんスマホゲームはコンシューマー向けより短めだと思いますが、Masaさんはどうでした?

Masa:全然違いますね。1タイトルに5-6年とかかかるものもありました。なので、リリースしたらすぐに次回シリーズをを考え始めるというような形で。プレイヤーが好きなこの要素を残したいと思っても、残しすぎると新しい発見がなかったりとかで、調整を入れていると今度はゲーム機の方が新しくなってまた開発が伸びて…という感じで、めちゃめちゃ大変そうでしたね。


ーそんなお2人とも、歴史をたどると大学時代からゲームを作ろうとしていたわけではないんですよね。それでも今グローバルを舞台にゲームを作られている。

Masa:そうですね。Giuseppeさんの文化人類学の研究ってゲームづくりに生きてます?

Giuseppe:どうだろう。そもそも自分は、人にとってゲームとはなにか、社会的にゲームがどんな意義があるかみたいなことを研究してたんですよね。その中で、たとえば日本人と欧米人とでは「あるゲームについてこんなふうな違う遊び方をしている」とか、ゲームをアートとしてとらえて、国や民族間で比較することが多いんです。そんな研究姿勢が、文化の差を考えた上でサービスを考える姿勢につながっているというのはあるかもしれませんね。

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Masa:へぇー。僕ももともとゲームには関係ない専攻だったんですよね。ビジョンサイエンス(視知覚)という研究をしていたんですけど、それは例えば、人はどのように色や形を認識するのか、この色や形を見るとどうしてこんな風に感じるか?みたいなことを研究していました。
今考えると、自分のゲームづくりの発想は、「視知覚の観点から、こういう見え方だと人はこうしたくなるはず」とか、そんな風にゲームに生きているなぁと感じたりしてるんですよね。

Giuseppe:おもしろい!スマホゲームを作るときは、とくにグローバル展開を考えるときに、各市場に向けたコンテンツを作るときには割と慎重になるんですよね。これはアメリカではかなりウケているけど、台湾では全然ウケないとかざらにあって。そういう勘所がついたとかは、文化人類学が生きているところでもあるかなぁ。

Masa:そうなんですね。僕の前職では、グローバルに展開しているので「一部地域だけで売れるものはやめよう」という方針だったんですよね。それもあり、発想自体は結構難しかったんです。尖った発想から始まるものの、あっちの地域にもこっちの地域にもわかるものになるよう配慮していくと、結局なんだか丸いもの、無難なものができあがるというのは結構悩みでしたね。誰かの100点よりも、全員の80点を目指すような形で仕事をするのが会社の思想だったので、それがちょっと苦手で(笑)。
Pretiaに誘ってくれた太樹さん(Lead Game Designer/鈴木太樹)とはそこの感覚が近くって。もちろんARの面白さも感じていましたが、それ以上に「誰と働くか」のほうが自分にとっては重要でした。それもあってPretiaに入社を決めました。


「ARをつかって、”説明がいらないもの”をつくる」

ー実際にARという領域でゲームを作ってみて、どんな風に感じていますか?

Masa:新卒当時、新しいゲーム機で当時自分が制作に関わったタイトルの説明員としてイベント会場に赴いたことがあるんです。そのときに2歳くらいのお子様を連れたご家族がいらっしゃったのですが、たまたま体験の順番になった時にご両親が不在で、僕が1対1でその2歳の子に操作説明をしたんですよね。でも、全然目の前の子に操作をわかってもらえなかったんです。その時の経験で、言葉がいらない、説明がいらないものを作りたいなとずっと思っているんですよね。

コンシューマーゲームを作っていた時代は、「現実的に面白いと感じたことを、架空にどう表現し落とし込めるか」を常々考えていたのですが、ARのほうが面白さをそのまま表現できると思っていて、考えるのはより楽なのかなと思います。

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休日にふと感じた面白いことをよくメモしてそれをゲームに落とし込むにはどうしたらいいのかを考えたりするのですが、たとえば、「今、景色に何か違和感を感じた、面白い」という”感覚”をゲームに落とすのに、ARは現実とリンクしているからこそ「違和感をダイレクトに作り表現できる」というのはかなり大きいし、面白い要素だと思いますね。”説明がいらないものを作る”という自分の思想にもつながっているなとも感じます。

「スマホゲーム以上にユーザーが本当に面白いと思えるものを作る必要がある」

ーGiuseppeさんは?

Giuseppe:自分はどちらかというと、ARのゲームづくりのほうが難しいなと感じますね。簡単なARはすぐに作れるんですけど、それはプロダクトにならないことのほうが多い。実際のプロダクトとして成り立たせていくためには、中長期で遊んでもらえるものを考える必要があって、そこが難しいなと思いながらプロダクトを考えてますね。
技術的にもゲームのジャンルとしても、今はまだ可能性が限られているけれども、これからもっと成長していくだろうと思いますし、そこを考えていくのが面白いポイントだとも思っています。

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ーコンシューマーゲームやスマホゲームと、ARゲームの違いはどんなとこにあるでしょうか?

Giuseppe:前職ではスマホゲームを作る際、まずはKPIから考え始めていました。売上はもちろんですが、PUターゲットはだれか、ARPUはどこまで行けるか、クエストへの参加率なんかも追っていて。KPIを立ててゲームを作ることはそれはそれで賛成ですが、そのKPIを達成したとしても、そのゲームが面白いかどうかはまた別の話だなと思いますね。ユーザーは、そのスマホゲームが面白いからやっているというよりは、設計されたギャンブル性にハマっているからプレイするとか、なんとなく満足してもらえる工夫をしているから継続しているとか、そんな理由でプレイしてもらうこともあったんですね。
一方で、ARゲームは面白い・楽しくないと誰もやってくれません。まだ市場が小さいからこそ、ゲームであることの面白さや、ARならではの面白さから考えをスタートする必要があって、そこが全然違うなぁと思います。
技術的な問題も多くてネックになることも歯がゆくはありますね。こうしたいという企画はいくらでもありますが、現状だとこれはできないなと削ることもある。


ゲームにおける前提を揃える必要がなく、ゲームをどう面白くするかに集中するようになった。

Masa:Giuseppeさんはゲームの作り方が変わったんですね。僕はコンシューマーゲームを作っていた身からして、そんなに変わっていないかなと感じます。
家庭用のゲーム機でゲームをするときって、コントローラーを持って前に進むために、横スクロール型のゲームだと、十字キーを右に押しますよね。今でこそこれが当たり前になっていますが、そもそも家庭用ゲーム機で面白さを表現する前に「十字キーの右(3Dのゲームだと上)を押すと進む」という前提を揃えるということが大変なわけです。一方でARは現実を元にしているからこそ、人が前に進もうと思うと、自ずと足を前に出して手を振って…ってしますよね。これはものすごい利点で、操作説明がいらないんです。前提を揃える必要がなくなったので、よりゲームをどう面白くするかということに集中ができるようになったのは一番大きいなと思いますね。

Giuseppeさんが言っていた、技術的に難しいというのは僕も感じているところです。自分としては、面白さのために技術的にできる・できないはいったん無視して構想するようにしてます。技術的に難しくても、本質的に良いアイデアは技術者が追って作ってくれるだろうし、自分の発想が未来の開発の基盤になるといいなと思って発想していますね。僕たちが作っているのは大衆車ではなくって、F1みたいなレーシングカーを作ってるって感じ(笑)。

Giuseppe:F1ね(笑)。

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ー技術的な難しさ以外に感じる、チャレンジングなポイントはありますか?

Masa:ARゲームは、場所に紐付いているというのが特徴ですよね。その特徴で、一番狙っている面白さが出せているのかが手元ですぐにはわからないというのは結構難しいです。ずっとその場所で開発・調整するわけにもいかないので、そこの仕組みをどうにかして作りたいなと思っていたりして。

Giuseppe:そもそもARゲームに慣れている人が少ないです。だからこそ多くの人に使ってもらえるギミックをどう仕掛けるか、というのは思考する上ではチャレンジングですね。没入感やリアルな感じをどう出していくかは、自分たちの発想もそうですが、将来的に端末やARグラスなどハード面との両面で解決できるようになると思います。

Masa:僕が前職にいたときは、それこそ自分たちの会社はそういうものを作っていましたけど、個人的にはゲーム専用ハードを持ち歩いて周りに人がいる状態で取り出すのに抵抗があったんですよ(笑)。スマホに入ってて、たまたま暇だからやっている体にしたいんです。端末もARグラスも、あまりにゲーム機みたいな感じじゃないといいなぁ。プレイする人が空間認識のためにデバイスを使ってスキャンをしているときも、かっこいい感じのポーズになったらいいですよね。ブサイクじゃないようにしたいなって。


現実により戻りたくなるような、そんなAR体験をつくりたい

ー具体的に、どんなARゲームを作りたいかのアイデアはありますか?

Giuseppe:よくジョギングに行くんですけど、レーシングゲームも好きで、好きなものをハイブリッドにして「ARレーシングゲーム」をつくりたいなって思っています。
ARグラスを使って、決まったジョギングコースを走っていると、AR上では自分は乗り物になっていて、速さで競うのではなくて、障害物が出てきてポイントベースで競うみたいな。ヘルスケアっぽい感じにもなりますね。

Masa:面白いですね。僕は、「ARでできるから嬉しい(AR>現実)」という体験の一方向ではないものをつくりたいなと思っています。現実があるからこそ面白いAR体験をつくりたくて。ARのイメージって、「現実には無いものが見える」みたいなイメージがあると思うんですけど、その逆をどうにかやりたいなと思っています。例えば現実にあるものが見えないARみたいな、現実とARが両方あるから体験ができるみたいなことがあると嬉しいなと。
さっきのゲーム機の話と絡むかもしれないですが、デバイスをずっと見ている必要があるものをつくりたいわけではなくて。現実に戻る必要があったり、現実に目を向けたいなと思えるものをつくりたいんですよね。

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Giuseppe:それに近いものかもしれませんが、幽霊系のゲームはARでできないかなって思ってたりしました。街のあちこちにいて、クエストが与えられるみたいな。ゴーストバスターズみたいな?(笑)怖いような体験というよりも、見つけたら幽霊が幸せに成仏できるようなコンセプトとか面白そうですよね。

Masa:ホラー系だと、自分が寝ている間に、自分ではない人のARに自分が映っていてほしいなとか思ってます。行った覚えはないのに、「今日ここ歩いてたじゃん」とか言われてみたくって。そんな風に言われると実際に行ってみたくなるような仕掛けが作れないかなと思っています。


ーありがとうございました!


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