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映画「春画先生」感想


予想を裏切る!性愛の深淵へとあなたを連れていく映画でした!

オープニングシーンでまずやられました

緊急地震速報のアラームが鳴り響く中
喫茶店の店員である春野弓子が直立して揺れに耐えていると
すぐ横の席に座っている男性の手元には
江戸時代に密かに流行し、笑い絵と言われた「春画」が
置かれており、地震の揺れで手が動くとあられも無い男女の性器が
しっかりと見えてしまうのです
地震はまだ止まりません
春画を目撃した弓子の心が震えているように
画面は揺れ続けます

そして、春画を見ていた男性から
この絵に興味があるなら私を訪ねてきなさいと
名刺を渡されるのですが
同僚の店員からは「変人だから気をつけてね」と忠告をされる弓子
しかし、弓子はその男性の自宅へ出向いてしまうのです
家の門の前で逡巡する弓子
やはり帰ろうかとしていると
屋根の上にいたセキレイの一鳴きに誘われ
呼び鈴を押してしまうのです

ここに映画の半分までを表している演出術
ここまでのシーンで映画に惹き込まれていました

演出術以外にも芦澤明子さんのカメラでワクワクさせられました
弓子が帰ってこない春画先生への苛立ちを
亡くなった伊都さんの墓へぶつけたあと
その春画先生から電話がかかり会いにいくシーン
坂道を下ってくる弓子を捉えるカメラ
弓子が前を通り過ぎると同時に右へとカメラがパンする
そこには線路を越える陸橋が映る、と同時にカメラが疾走する弓子の
あとを追いかける、と同時に弓子のその向こうに通過する電車が横切る
弓子は左へ曲がり階段を降りる
それを上から見下ろすカメラ

タイミングやら動きやら全て計算されたダイナミックなシーンで
観ていてワクワクして「すげー」と言ったと思います。小声で。

また美術の安宅さんの仕事にも、さすがと言うほかありません
弓子の部屋は襖が少し開いていて
奥の部屋から覗く程度にしか見られません
物語は前後しますが
春画先生の編集担当者として
津村という男が弓子に近づきます
津村と共に大学へ資料を取りにいく用事を言われた弓子は
津村を避けながら、春画先生のためにと同行するのですが
春画先生と元妻の伊都さんの話が聞きたい弓子は
津村とバーで一緒に酒を飲むことに
そこで春画先生と伊都さんの「七日間のお籠もり」を聞いてしまい
身悶えする弓子、酒の酔いも周り
気がつくと津村と一夜を共にしていました
そのことにショックを受ける弓子ですが
さらに、その行為の最中の弓子の声を津村が春画先生に
電話を通じて聴かせていた、という何とも最悪な事実をさらっと
水色のいやらしいパンツ一枚の津村に告げられるのです
自分の部屋に帰宅した弓子は、部屋の襖を突き破るパンチをを炸裂させ
その穴から光が漏れて横たわりジタバタする弓子がいるという仕掛け
見事です

春画の勉強ができる映画かと思いきや
春画先生の極度の偏愛ぶりに振り回され、狂わされる弓子が
身悶えするシーンを何度も見ることに
そのたびにパワーアップ(吹っ切れる?ぶっ壊れる?)する弓子の
弾けぶりは演じる北香那さんの爆発する魅力となって観客を虜にするでしょう

塩田監督の作品ですから、まだまだ仕掛けやさりげない隠喩など
いろいろ楽しめる要素満載の映画でした

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