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映画「マッチ工場の少女」感想

女がマッチを擦るとき何かが起こる映画です!

タイトルの「~少女」はちょっとおかしい。
主人公のイリスは20代後半くらいに見える。
しかし、彼女の行動は「少女」と言っても差し支えないほどピュアなのです。だからこそ、ラストが苦しいのです。

イリスはマッチ工場で働いています。
映画のオープニングではマッチが作られていく過程を丹念に見せています。
すべてが機械化され、大きな音を出すマシーンによって整然とマッチが出来上がっていく、その様子は現代の労働者の姿に見えてくるのです。
ああ、苦しい。

イリスは仕事が終わると、義父と母親が待つ自宅へ帰って、慎ましい食事を作ります。ポテトとニンジンのスープとパンかな?不味そうです。
テレビからは中国の天安門事件を伝えるニュースが流れ、ますます重苦しい。そんな中、イリスは化粧をしてダンスクラブへ。

バンド演奏のなか肩を抱き合い踊る男女のなかにイリスはいません。
一人、相手を待つイリス。しかし、とうとう現れてはくれず、一人寂しく自宅へ戻ります。

こんな慎ましい生活は嫌だ!とばかりに給料日にウインドショッピングをして、高そうな?洋服をコッソリ買ってしまいます。
残りの給料を手渡すと母親は苦虫を噛み潰したような表情。。
コッソリしまっとけば良いのに、イリスは台所で洋服を嬉しそうに見ているところを義父と母親に見られ、「売春婦め!」とビンタをされ、「返品してきなさい」と言われるのです。これは酷い。

イリスは一人外へ。返品に行くのかと思いきや、コッソリ買った服に着替えてダンスクラブへ。
いつもと違う服装に髪型で男を待つイリス。
そこへイケメン風な男が寄ってきて、二人は踊り、一夜を共にします。
よかったね!イリス!
と思ったのもつかの間。イリスはその男の部屋を再び訪れます。男は「今日はダメ。次、家へ行くよ」と断るのですが、イリスはピュアなので、男が家へ行くと、イリスは見合いの衣装か!というような出で立ち、義父はスーツで食卓に座っています。頭を抱えて笑ってしまう男。。そうりゃそう。
イリスと親たち、飛躍が過ぎますよ!いくらなんだって。
案の定、男はイリスに「一夜のお遊びさ」と。相当落ち込むイリスに追い打ちをかけるように、妊娠が発覚。イリスは現実を受け止め、男へ手紙をしたためます。かなり丁寧なお手紙。
少しして、男からの返信は、「始末してくれ」の一行と堕胎用の小切手のみ。最悪です。狼狽えたイリスは外へ飛び出し、交通事故に。
男からの手紙を見て察した母親は、入院中のイリスに義父を通じて家を出ていくように伝えます。ああ、最悪。苦しい。

しばらく兄?のところへ居候するイリス。
しずかにマッチを擦って煙草を吸います。そして、薬局で殺鼠剤の「大」を購入。店員は効き目は?の問いに「イチコロ」と!
ああ、イリス!絶望したのだろうが、それだけはやめてくれ!
と思ったら!

なんとイリスは水に溶かした殺鼠剤を瓶で持ち歩き、男の部屋へ。
お別れを言いに来た、と言い、男がお酒の準備をしているあいだにグラスに殺鼠剤を注いだのです!イリス!そっちか!!
そして小切手を返したイリスは酒場でビールを注文。
言い寄ってきた男に笑顔を見せ、何も言わず男のグラスに殺鼠剤入りの水を継ぎ足すのです!ああ!その人は何も悪くないだろ!
ただ、破滅的な道を選んだときに男が寄ってくるんかい!という何とも言えないタイミングの悪さ。開き直ったからこそ、危険な香りを放つイリスに惹かれる男。ああ、悲しい、苦しい。。

そしてイリスが最後に行き着いたのは、義父と母親が住む自宅。
いつもよりも豪華な食事を準備するイリス。
そしてもちろん、二人が飲むお酒?の瓶には殺鼠剤入りの水を仕込んで、隣室でしばらく音楽に浸るイリス。。

退屈な日々を本を読んだり、ダンスクラブに通ったりして普通にすごしていたイリス。少し冒険したつもりが手痛いしっぺ返しに遭い、人生がくるってしまったのでしょう。タバコにマッチで火をつけるときのイリスの表情は恐ろしい殺人鬼には見えなかったなあ。


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