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映画「白鍵と黒鍵の間に」感想

ジャズピアニスト南博の回顧録を映画化した本作

主人公は博と南
時代は1988年
場所は東京、銀座

博はジャズピアニストを目指しているが
銀座のキャバレーでは、ジャズなどプレイする機会もないし
プレイしてもそもそも客は誰も聴いていない

そんな状況で博は「おれはいったい何をやっているんだ」と思う

一方、南は高級クラブでピアノを弾いている
しかし、だれもその音楽を聴いていない
映画の中では海外からきたボーカルの女の子へ南自身が
「バンドはクラブにある花瓶と同じ存在でなければいけない」
と言うのだ

そんな状況の南も「おれはいったい何をやっているんだ」と思う

博と南には、ピアノの師匠がいる
宅見先生は言う
「ノンシャラントに」

ノンシャラントに弾くとはどういうことなのか
博と南は銀座の繁華街で迷宮に入り込んでしまう



タイトルにある「白鍵と黒鍵」は隣り合う鍵盤である
しかし、隣り合っているのに半音の違いがある
この違いは、博と南という3年間の隔たりに相当しているのだ

1人2役という設定が一夜として描かれる異色の作品たらしめている

終盤、いよいよ進退窮まった南は
ビルとビルの間へと堕ちていく
そこには死んだはず?のアイツと会長がいるのだが
もうひとり、浮浪者風の南と対峙する
南と南が対峙することで自分がやるべきことを
再認識した浮浪者風の南はビルとビルの間を抜け出して
まとっていた厚手のコートなどを脱ぎ捨てて走り出す
母親に母子手帳をもらい、アメリカ留学へと旅立つ

この浮浪者風の南が3年間の銀座での南博なのだろう
まとっていたコートなどを脱ぎ捨てることで
迷いや不安を脱ぎ捨てているように見える
そして、ジャズの本場アメリカへと旅立つのだ

ビルとビルの間に堕ちる前、
クラブで留学用のデモテープを強引に収録するシーンでの
クリスタルケイ、松丸契、池松壮亮らのバンド演奏は
とても美しいシーンだった

場末のキャバレーのギター弾き曽根役の川瀬陽太
南と博の母親役の洞口依子
クラブの店長役の杉山ひこひこ
冨永作品の常連たちが見せる芝居も必見である



とまあ、とりとめもなくいろいろ書いたけど
いろいろ考察したりできる、なんどでも味わえる作品でした






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