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映画「アシスタント」感想

映画の半分は音であるとある映画監督は述べました

映画「アシスタント」を観ていて、BGMとして音楽が全く使われていないことに気が付きました。音楽がないと劇中の環境音がとても気になります。

主人公のジェーンが毎朝一番に出社して点ける蛍光灯の音、コーヒーメーカーの音、コピー機の音、電話の呼び鈴、コピーした資料をまとめる金具を取り付ける音、資料を各テーブルに配る音、誰かが電話してる声、受付からの大きな内線の呼び鈴、会長の飲むアイスコーヒーを作るための氷を砕く音、先輩が置いていったコップとお皿を洗う音、会議室での打ち合わせ後に残ったコップや皿を運ぶ音、残ったドーナツをつまみ食いする音、タイピングの音、先輩が投げてくる紙屑が後ろの壁に当たる音、会長の机に残った消しゴムのカスを捨てる音、人事部の部長が差し出してきたティッシュボックスが机を滑る音、会長が服用している薬の瓶を補充する音、会長が打った注射器を片付ける音、会長の部屋から漏れ聞こえてくる会話、などなど

これらはすべてノイズです

しかし、このノイズ(普段は耳が無意識にシャットアウトしている音)がジェーンの体に徐々に、雪が降り積もるように少しづつ降りかかってきているように思えます。
これは観客にも同様に降りかかってくるもので、ジェーンが感じているであろう気分を感じることに。

映画プロデューサーのアシスタントがする仕事なのか?そうじゃないよな、と思うような雑用がほとんどですね
これはジェーンの1日の出来事ですが、およそ2ヶ月(正確には5週)浴び続けていたジェーンは爆発しそうになり、自分の意見を出そうとします。(正確に2回)。すると、なぜかすぐ会長の耳に入り、内線でブチギレられ謝罪文をメールすることになるのですが、返信のメールでは別人のように優しい言葉がつづられています。なんか「辞める!」って言いにくい。。さらに会長の運転手からは「会長がジェーンのことを褒めていた」と。ほんとかよ!アシュレー!励まそうと思って出鱈目言ってんじゃないの!
時折降ってくるアメ。。


BGMを使ってさらに緊張感をあおることもできるのでしょうが、キティ・グリーン監督はそうしなかったのは、これらのノイズが十分すぎるほどジェーンと観客にプレッシャーを与えていると判断したからだと思います。

映画において音、音楽はムードを作り出すために非常に重要なものですが
そのことを明確に計算して作られていると感じました。

そりゃ、出社はウーバーだったけど、帰りは歩きでトボトボ帰りたくなりますよね


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