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ものっすごい洗練された映画でした。「ひつじのショーンUFOフィーバー!」

今日はこの映画が最高だったという話をします。
「ひつじのショーン UFOフィーバー!」です。

日本の予告編は説明がウザいので、英語版にしました(↑↑)ぜひ英語版の予告編見てみてください。
 
公式サイト
https://twitter.com/shaun_movie
 
もしかして「ひつじのショーン」を知らない、見たことがない方は、
「え、だってこれ子供向けのクレイアニメーションでしょ」
「大人が見るものじゃないでしょ」

……とか思うかもしれません。 
 
そうでなければ、ドラえもんとかクレヨンしんちゃんみたいに、映画版だけは大人が見られるように作っているのかしら、と思うとか?
 
いやいやいや、テレビシリーズも映画も。ひつじのショーンは子供も大人も楽しめる作品です。
もっと突っ込んだ言い方だと、子どもと大人が、違った観点で楽しめるアニメ
 
あのね、普通の作品みたいに「子供向け」とか「カップル向け」とか、対象を絞り込んでいないんですよ。クレイアニメなのに、そういうところが稀有な作品なんです。
 
何しろ、この作品は、セリフが一切無いのです。
正確に言い直すと、意味のあるセリフがひとつもない
登場人物の行動と「■☆%〇T!」とか、意味を持たないモニョモニョ喋りで、すべてを説明する。
つまり、キャラクターたちの行動の理由や意味を想像するのは見ている我々なんです。
 
ここ、ひつじのショーンの大原則です。
この大原則を押さえていただいたところで、この映画がどうすごいのかの話に移ります。 

ストーリーをざっくり説明すると、この映画。
英国に不時着したUFOと宇宙人。牧場に迷い込んできたその宇宙人と仲良くなった、主人公のひつじのショーンが、彼女(?)をなんとか宇宙に戻してやろうと奮闘する話です。
ストーリーは、定番ですよ。定番で王道です。 

でもね、まず画面のつくりかたが絶妙なんです。
いわゆる絵コンテの切り方が上手すぎるの。
 
不時着する宇宙船を、その辺のおじさんと犬が目撃するシーンから始まるんですけども、上空から見たアングル、地上から見たアングルに、クローズショットにロングショットを、きっちり使いこなす。
この絵コンテ描いた方(監督かな)は、映画というものを知り尽くしていますね。
 
クレイアニメーションって、粘土を動かしてつくるじゃないですか。
だから、だと思うんですよ。最も効果的で、最も良いシーンに絞って作りこむ。だから、無駄がない。
最初から最後まで。アクションシーンから、そうじゃないシーンも、すべて、洗練された画面づくりを見ることができます。
映画ってこういうものだよね。ああ、こういうのが映画だよなあ~、と思わせてくれる、実に洗練された傑作です。ひつじの粘土アニメなのに。 

はい、そして映画を知り尽くしている、と言ったのは。
定番の映画(洋画)のオマージュがてんこ盛りなんです。
 
ストーリーからして、「E.T.」だったり「2001年宇宙の旅」が目立つオマージュですけども、こっそり「エイリアン」ネタが混ざってたり。随所随所に小ネタが仕込んである。
オマージュの仕方も、モロ出しじゃないんですよ。自転車か、と見せかけて違ったものに乗り込んだりね。
ある時はひっそり、ある時はばっちり、うまーく本編に入れ込んである。本当にセンスを感じる。素晴らしい。 

で、ちょっと中身の話に戻りましょうか。
この映画、セリフが一切ないって言いましたよね。
ショーンも「■☆%〇T!」、宇宙人も「〓〇◎▼A$!」まったく話通じない。言葉が全く通じないし、二人が何を言ってるか観客もわかりません。
だけど、観客は二人が一生懸命、会話をしようと努力していることがわかる。それで、一緒に宇宙船を探しにいくところで、二人が仲良くなることがわかる。
 
「E.T.」だったら、主人公の少年がセリフをしゃべるから、それで観客は片方の言葉はわかりますよね。でも「ひつじのショーン」では、両方とも何話してるか分かんない。分かんないのに、交流が生まれて、二者が仲良くなることがわかる。
これこそ、まさに異文化同士のコミュニケーション。すごくリアル。
セリフがないからこそ、異文化とのコミュニケーションというテーマが活きてきて、リアルに感じるわけですよ。 

で、この映画。ストーリーは定番で王道だって言ったじゃないですか。
じゃあ何で引き込まれて面白いのかっていうと、ひたすら映画をつくる技法が上手いってことなんですよ。
もっと具体的にいうと、
伏線の張り方が上手くて、間の取り方も上手いの。
ほんとに丁寧な伏線(それもそれほど長く間を置かないタイプの)が散りばめられていて。きっちり回収しながら話が進んでいく。
長く間を置かないから、分かりやすい。子供にも、これはさっきのアレだ、って分かる。気持ちいい。
 
そして間の取り方っていうのは、いわゆるテンポがいいってことです。
変な間があって、うっかり観客が我に返ることがないように、緩急つけたテンポでつくられている。
ひつじのショーンは、クレイアニメですけど、もともとアクションシーンに定評がありますんでね。
アクションシーンが面白くて、子供も大人もクギづけですよ。

……というところで。
思ったままに押しポイントを書き殴ってみましたけど、
要するに、映像をつくりこむ技術、ストーリーテリング、すべてが上手いんです。
物語ではだれも死なないけど、面白い。……あのね、だれかを死なせて物語を盛り上げるなんて、簡単なんですよ。人の死を使って物語を盛り上げるのが悪いとは言わないし(自分もやるし)それはそれで、いいんだけど。
でも、人の死を使わずに、物語を盛り上げるってすごく難しいことですよ。
「登場人物を殺さない」っていうのは、ある意味では“制限”なわけです。安直な生死に逃げずに、面白い話を書けるのはすごいこと。 

わたしは、ひつじのショーンをつくってるアードマンスタジオ大好きで、数えたらたぶん25年ぐらいファンを続けているんですけども。こんな年になっても、これほど高い技術のある映画を見せてもらえて、涙出るほどうれしかったです。 

オススメです。
とくに洋画を見慣れている方に、オススメです。
この記事を見て、気になったら、ぜひぜひ見てみてください。 

そして、映画版は前作もあるので。
(これもセリフがないのに大変複雑なストーリーで、実に面白いので見てください)
それもよかったら見てみてください。 

おしまい。


 

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