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キャプテンシーとリーダーシップの違い

人が集まって何かをしようとしたとき、それぞれが役割をもってみんなで歩調をあわせたほうが、うまく目標を達成できることがあります。

もちろん、あまり歩調をあわせすぎたり、自分の役割にこだわりすぎると逆効果になってしまう(官僚化)のですが、ほどよくバランスを保てれば組織全体が一体感をもって効率的に目標に向かうことができるので、一般的にはいいことだといわれています。

しかし、いろいろな人が集まっていると、それだけでたくさんの意見がでてきてしまい、それぞれ好きなことを好きなときに好きなだけやろうとしたり、逆に何もやろうとしない人が出てきたり、手を抜こうとする人がでてきたりして、うまく歩調をあわせられなくなってしまうことがあります。

そこで、ばらばらの目標を重要なものだけに絞ったり、みんなで計画をたてて意識をあわせたり、やる気を起こさせたりすることが必要になってきます。

キャプテンシーリーダーシップという言葉は、そのような目標の決定と計画の立案、実行に関する言葉なのですが、どういう違いがあるのでしょうか?

言葉が違うということは、意味が違うということですよね。さっそく紐解いてみましょう。

キャプテンシー:意思決定の任務を負う地位に期待された能力と権限のこと

そもそも、キャプテンシーという言葉は、「船長(captain)」という単語からきていいますから、地位に関係する言葉です。

なんらかの地位があって誰かがその地位にいるということは、当然その地位が必要な理由と、当人がその地位に就いている理由があるはずです。

そもそも地位が必要な理由は何でしょうか?

あらためて、なぜ地位があるのか?必要なのか?と問われても困ってしまうと思いますが、集団の行動と、その行動によって得られた利益などの結果に対して、誰が責任をもつのかという視点で考えてみることが大きなポイントです。

たとえば、会社組織は最終的には社長がすべての責任を持っていますが、社長は事実上営業、開発、生産、販売促進、人事・経理などのすべてをひとつひとつ細かく把握することができません。

そのため、営業なら営業の、開発なら開発のそれぞれの仕事に対して、誰かに自分に代わって指示や管理をしてもらう必要があり、適任者を選んで責任と権限を与えて結果をコミットさせることが必要となってきます。その与えられた責任を担うのが部長とか課長という地位なのです。

このように、地位とは集団の行動と結果に対して責任を与えられた「肩書き」といえます。

ということでキャプテンシーは肩書きと関係する言葉といえますが、この視点でとらえると「肩書き」の下にさらに役割分担された「肩書き」をもったメンバーが集まり、与えられた肩書きとともに目標をめざすことになります。

基本的に、メンバーは組織全体の行動から得られた利益を分け合えることで仕事に対するモチベーションを持ちますが、もしこの肩書きを持った人が計画通りの利益をだすことができなかったり、利益を公平に分け与えることができなかった場合、その「肩書き」に見合うだけの能力がなかったとみなされ追放され、他の人がその地位に就くことになります。

このような責任と行動の役割分担の実体が「組織」なのです。

このとき、キャプテンシーの強さや大きさは、地位の種類や高さとは関係ありません。与えられた肩書きの範囲の権限と責任が評価対象となります。

その地位にふさわしい能力を発揮すればキャプテンシーがあると称賛されるし、発揮しなければキャプテンシーがないという批判を受けることになります。

したがって、集団の目的の結果に対して、どのように責任をもっているかが重要な意味をもってきます。

リーダーシップ:メンバーの行動を促す能力と素養のこと

リーダーシップという言葉は、導く(lead)という単語からきていますので、集団がなんらかの目標にむかって行動をとる際にメンバー(フォロワー)を適切な方向やゴールに引率・牽引(リード)することができる性質のことを指します。

だから、キャプテンシーとはちがって、地位は関係ありません。地位に関係ないということは、どの地位でもリーダーシップを発揮できるということができます。

では、フォロワーを導くとはどういうことなのでしょうか?

それは、集団のメンバーに役割を理解してもらって、コンフリクトをおこさず目標にむかって行動してもらえるということです。

もうすこし具体的に言うと、リーダーの責任の大きさや権限と肩書きには関係なく、「この人のいうことなら、いうことを聞く」とか「この人だったら任せられる」と思わせる力のことです。

たとえば、ある業務の担当者がお客さまからの不満を聞いたときに、「本来あるべき対応方法としては、いままでの対応方法は間違っているのではないか?」と疑問を抱いて、解決するために関連する営業マンや開発に働きかけようとしたとします。

このとき、あるべき姿とのギャップを見つけ(問題発見)、解決策を提示し(問題解決)、メンバーに行動を促し最適な状態に導く力は、本質的には地位とは関係ありません。

もちろん地位が高いほうが解決が早くなるかもしれませんが、その人がリーダーシップをもっていたからにほかなりません。

重要なのは、問題意識があり、解決策をもち、行動に移せる能力と意欲があるかどうかです。つまり問題意識があって行動できる人はだれでもリーダーシップがあるといえるのです。

このように、リーダーシップとは、人を導くことができる能力や素養のことだということができます。

この視点でとらえると、仕事の速さとか正確さとか、どれだけの責任と権限をもっているかとかは、あまり意味がありません。

ばらばらの意見をまとめたり、やる気を起こさせるたりできるのは、かならずしも権限だけではありません。

むしろ、自分の権限と役割を超えて集団を動かす人間的な魅力とか、現状をただしく認識できる力とか、リスクをとろうとする勇気とかが問題になってくるのです。

つまりメンバーが行動するのは、発案した人の「肩書き」ではなく、発案した人が「誰」なのかに大きく関係しているということです。

簡単にいえば、一課長が会社を代表するキャプテンシーは発揮することはできないけど、だれでも会社を動かすリーダーシップは発揮できるということです。

さいごに

どんなに似ている言葉でも、言葉が違うと言葉の意味も違います。

キャプテンシーとリーダーシップの意味も、上のように違っていました。そういう意味では、ある集団においてキャプテンシーは発揮されていても、リーダーシップは発揮されていないことだってありえます。

たとえば社長のワンマン独裁会社などです。社長のキャプテンシーだけが発揮されていて、その他の社員はいわれたことしかしない会社は、現場のリーダーシップが発揮されにくい組織です。逆のケースもあるでしょう。

現場から改革を求める声がでてきて改善策もでてくるものの、それをまとめることができないマネジメントの弱い会社がそれです。

もちろん、「キャプテンシー」にはキャプテンという乗組員をまとめる組織のトップとしての役目も含まれているわけですから、当然「リーダーシップ」を発揮することも同時に求められています。

そうやって考えていくと、キャプテンシーとリーダーシップはどっちが必要か?より重要か?という問題は意味がないことがわかると思います。

組織のおかれている状況に応じて、発揮すべき力は異なるはずです。

もちろんキャプテンシーもリーダーシップも、両方とも発揮できている人材がたくさんいる組織がいちばんいいですよね。

あなたの組織ではキャプテンシーとリーダーシップはただしく発揮されていますか?

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