プリコグたん

プリコグたん

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ドライ=もん(戯曲)

みさこ(以下、み)「プーたん、今年もイグに出すん?」 プリコグたん(以下、プ)「美沙子さん、その呼び方、やめていただけます?」 み「いいじゃないのよ。好きなように呼ばせろよ」 プ「はいはい、しかたないな」 み「去年はわたしの未来の演説をそのまま書き起こしたのを出したんよね。今年もそれでいくん?」 プ「あのね、今年は『自分がアホだと思うヤツ』ってテーマが指定されてんのよ」 み「じゃあ、わたしのじゃダメか」 プ「え、そんなことないと思うけど……」 み「どういう意味⁉︎」 プ「冗談

    • 終焉まできみは

       いつもの時刻にきみはアパートを出る。  九月の爽やかな空気にきみの心は動かされる。空は高く、微かな風が少しだけ冷たい。季節は確実に移り変わっていく、世界がどうであれ。  空に浮かぶ雲を見上げながら、きみは後悔している。いや、いつか後悔するだろうという予感に襲われている――なぜこんな素敵な日々を味わい尽くすことなく、ただやり過ごしてしまったのかと。  晩秋には乾いた落ち葉を踏んで公園を抜け、冬の朝にきりりと冷えた空気へと白い息を吐く。蕾の膨らみ始めた桜並木の様子を確かめながら

      • 永遠の微睡

         世界が夕陽の色に染まっていた。  見渡す限りのなだらかな起伏のある草原、遠くにはところどころに十メートルほどもありそうな樹が数本ずつ身を寄せ合うように葉を茂らせていて、夕焼けを背に影となって点在している。  唐突に「家族」という言葉が私の脳裏に浮かんだ。幾つかの樹々がひとかたまりの影を形成している有様からそれを連想したのかもしれない。  そして樹々からは少し離れてひとつのあずまやが地面に長い影を描いている。その傍には屋外用の小さな丸テーブルにチェアーが数脚。それから、ひとつ

        • 新地球党党首・松本美沙子の演説@きさらぎホール2023-10-09(録音からの抜粋)

          (パラパラとした拍手。どよめき。遠くからのヤジの声)  聞きたまえ、汝ら偽善者よ、身の程をわきまえぬエセ環境主義者よ――。 (一部からの歓声と拍手。咳払いが二度)  静粛に。 (小さく咳払い)  あなたたちは口先では「地球のため」という言葉を振りかざしていますが、実際には人間を含めた既存の生態系を維持することしか考えていません。それならば「地球のため」などとは言わずに「人類のため」、あるいは「現存する生物のため」とでも言ったらどうでしょう。そこに正義がないとはわたしは言いませ

        ドライ=もん(戯曲)