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2024年「『黄金の刻』~服部金太郎物語」感想

2024年ドラマ『黄金の刻』~服部金太郎物語~(演出/豊島圭介、脚本/高橋泉)鑑賞。セイコーブランド100周年を記念して制作されたドラマ。
この作品はその創業者である服部金太郎と彼を支え、一緒に夢を実現させる仲間たちとの触れ合いを描いております。

主人公、服部金太郎の青年期を水上恒司さん、壮年期を西島秀俊さんが演じました。原作は500ページ近くある巨編なので、2時間ドラマに収めるにはかなり詰め込んだ形に思えましたが、だからこそ役者さんたちの集中力や緊迫感がこちらにまで迫って来るような勢いがあり、力強く個性豊かに演じてらっしゃって、誰一人欠けず心に残っています。

丁稚奉公をしていた青年期の金太郎を演じた水上さんはとても清らかでまっすぐ。初めて懐中時計を目にした時の宝石を見るような眼差しが、とうとう運命に出会ってしまったな、と言うのを感じられて印象的でした。金太郎は勤勉で働き先からも目をかけられるほど真面目ですが己の夢に忠実で、日本一の時計商を目指すため、浪子(青年期、吉川愛さん、壮年期、高島礼子さん)に恋をしながらも町を去る。自ら初恋を叶えなかった金太郎だが、後に懐中時計がきっかけに出会い、大きな包容力で彼を支える女性、まん(松嶋菜々子さん)を妻に迎える。

金太郎は、青年期も壮年期も夢を叶えるまで、そして叶えてもなお、度重なる不運に見舞われている。若い頃は店の火事により時計以外の物は全焼、壮年期では関東大震災ですべてを失ってしまう。しかしそれらを乗り越えて来た。この物語は服部金太郎の歴史であり、ドキュメンタリーであり、時計をモチーフにした命の繋がりの物語だった。
偏屈で周囲から距離を置かれている時計職人、鶴彦(山本耕史さん)を先見の明で見出し、周囲に納得させ、幼なじみで互いに夢を追った善路(濱田岳さん)とも仲違いし、嫉妬や恨みから邪魔をされながらも後に和解できたのは時計一筋の金太郎が持つ確かな技術と妥協しないまっすぐさがあったからだろう。嘘がなく良くなかった行為に対しては頭を下げられる社長である金太郎。そんな誠実な人柄もあり、彼の許に善男善女の救いの手があり、彼らと一緒の刻を過ごす金太郎。まさに「黄金の刻」だろう。

剥き出しの時計はガラスと美しく彫刻が施されたケースに守られている。
そして、内部には寸分の狂いがない精巧な動きがある。心臓のようだ。若かりし金太郎が初めて目にした懐中時計の輝くような美しさはまさに命の輝き。そして、その命は受け継がれているのでしょう。
とても美しい作品でした。

※西島さんオンリーの感想
壮年期の金太郎の髪型はいつもの西島さんの髪型とは違い、分け目があって額が見えて珍しかった。立派な髭も蓄え、更に古希になる最初と最後の登場シーンでは見事な銀髪になっていた。とても美しくて、おじいちゃんとは呼びにくいので、おじいさま、と呼びます(呼ぶのか)
スリーピースのスーツ、襟の高いシャツ、サスペンダーをつけたズボン等、昭和初期の正装や職人風の洋服が非常にお似合いでした。
そしてここでも変わらず食いしん坊で、ごはん粒と共に過ごしている、と娘に指摘されてしまうきんたろさんは可愛かったです。


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