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短編 / 掌編

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#短編小説

歩む

 校舎を出る際、陽射しが少し傾き、それでもなお残る暑さに面食らった。今日は誰とも話をする気分になれず、早退するかのような早さで玄関を出た。何となく外の空気が無性に吸いたかった。  ゆっくり一人で歩いていた僕のリュックに、後ろから誰かがぶつかって来た。中学生の頃、3年間同じクラスで仲が良かった歩(あゆむ)だ。今の高校でも偶然同じクラスになった。 「あ、ごめん。」 「おう。」 「もう帰るの? 早いね。」 「歩も……」  随分早く帰るんだな、と言おうとしたが止めた。 「ああ、うん

跳ねっかえりの天使

 そっと窓ガラスを開ける音がする。彼女だ。そのままリビングに入ろうとしたのだが、窓を覆うカーテンが彼女の体に纏わりついた。更にカーテンの開き口になかなか辿り着けず、手でもがいたため、優雅とは言い難い様子でやっと入って来た。  彼女が僕の部屋に来る時は、こうして玄関からではなく窓から侵入してくる。他人が聞いたら犯罪者のようだと思うだろう。しかしその犯罪者紛いの行動を取ってやってくるのが僕の恋人なのだ。僕が許しているのだから問題はない。 「カーテンは開けておいてって言ってたのに