「韻」でグーグル検索1位!入力したワードで無限に韻が踏める「韻ノート」

全記事、個人開発者に直接インタビュー。個人開発の裏側を根掘り葉掘り伺うPRANET stories、第7弾です!

今回は「韻ノート」の開発者、細川さんにお話を伺いました。

韻ノート
日本最大級200万語以上の韻を踏む言葉を検索可能。母音検索や漢字での検索も可能で、気に入った韻を保存したり、韻の解説を見れるサービス。ラップ界隈でも、その認知度は非常に高い。

対談メンバー
細川(@takahide_h):韻踏むエンジニア、略して韻ジニア。HTML名刺、韻ノートなどのWebサービスをひとりで楽しく開発。著書「声に出して踏みたい韻」「微積で解いて得する物理」

松原(@dowanna6):PrAha Inc. CEO/エンジニア。今年は症状が軽い花粉症、変えたのは成分の含有量(韻ノートで検索した韻)

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開発者の細川さん



松原:入力したワードで無限に韻が踏める「韻ノート」。リリースから3年ほど経過しましたが、、、すごいですね、「韻」だけで検索して1位で出てきました!

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細川:ありがとうございます!有難い事にいろんな方に使っていただいてます。

松原:それにしても「韻」だけで検索1位ってすごいですね・・・

細川:「単語+韻」で流入される方も多いんですが、大体のワードでも1位を取れていますね。

松原:どれどれ「パイナップル 韻」・・・確かに1位だ!しかも上位4件が全部韻ノートですね。似た単語で韻を踏んだり、解説ページを作ったり、一つのワードからの派生コンテンツが豊富ですね

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細川:韻の解説ページは、僕が韻ノートの開発に着手する時点で競合サイトには無い機能でしたね。初心者の方だと単純に韻を踏んだ単語を教えられても「何をもって韻が踏めているのか」判断に困ると思うので、作ってみました

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松原:ははー、これは便利ですね。ココとココの母音が合っているから韻が踏めているんだよ、が分かるわけですね。母音の組み合わせを使ってさらに別のワードに繋げられるし、これはラッパーにめちゃくちゃ喜ばれそうなサービスですね

細川:ところが、一部の方にとってはそうでも無いみたいで

松原:え?

細川:リリースしてしばらく経ったら、一部のラッパーから「韻を考える楽しみを奪わないでほしい」って声が届いたんですよ

松原:なるほど・・・確かに自分で頑張って考えた韻が韻ノートで紹介されていたり、韻を考える部分が自動化されてしまうと、韻を踏むことの価値が下がると感じる方も居そうですね

細川:でも、実はそこから面白い変化が起きているんですよ。最近「語感踏み」が流行り始めまして

松原:ゴカンブミ?

細川:例えば韻マンというラッパーが居るんですが、彼のライムに「在原業平(ありわらのなりひら)」と「ありがとうございました」という韻の踏み方があって

松原:あれ、「ありわらのなりひら」と「ありがとうございました」って、母音が微妙に違いませんか?

細川:そうなんですよ。でも実際に聞いてみると韻を踏めているように聞こえるから韻として認められている。こういった韻の踏み方を「語感踏み」と呼びます。韻マンは以前Twitterで、普通に母音を合わせるだけなら韻ノートで出来るから、何か別の韻を探したいと言って「語感踏み」を使い始めた、と言っていました

松原:へー!韻に新しい形が生まれ始めたんですね

細川:韻を踏む作業の一部を韻ノートが自動化した事で、自動では実現できない何かをラッパーが生み出した。こうした変化を韻ノートが間接的にも作り出せているのは、作り手として非常に嬉しいですね

松原:プログラミングに関しても、メモリの割当てみたいな作業が自動化される事で、別の事を考えないと優位性が生まれない強制力が働いて、プログラミング全体のレベルが上がりましたよね。界隈そのものに変化を生み出すサービスになっているんですね、韻ノートは・・・凄い

細川:でも実は語感踏みも韻ノートで実現できるんですよ。子音の組み合わせや前後の一致みたいな条件は既に見つけられているので、あとは実装するだけで

松原:凄すぎませんか

細川:ただこれは実装するか悩んでいるところです。ここまで韻ノートがやると、また怒られるんじゃないか、と・・・

松原:怒られるんですかね・・・素人意見ですが、自動化されてこそ人が関わる部分の価値は上がると思うんですよ。「悪そうなやつらは大体友達」って優等生が言っても響かないというか。いくら自動化されても「誰が言うか」次第で韻の価値は守れる気がするんですが、どうなんでしょう?

細川:おっしゃる通りですね。「文脈のある韻」とか「この人が踏む事に価値があるオリジナルな韻」とか、より高度な価値が優劣を決めるレベルまで韻全体のレベルを韻ノートが上げられたら嬉しいなぁ、と考えています


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(白シャツを着ながらも恐れることなくミートソースを頼んだ)


なぜ韻ノートを作ったのか

松原:そもそも、なぜ韻ノートを作ろうと考えたのでしょうか?

細川:僕はKICK THE CAN CREWというグループが大好きで。僕らが若い頃、ラップに興味のない人もカラオケで歌ったり、いろんな場所で流れてましたよね?彼らの曲は韻が固くて(しっかりと韻を踏んでいて)好きなんですが、その価値に周りが気づかないのがもどかしくて

松原:確かに芸術作品がどれだけ優れていても、見る側の水準が伴わないと価値が伝わりませんよね

細川:そうなんですよ。なので、日本全体の韻リテラシーを上げたい。より多くの人に、この素晴らしい作品を味わってほしい。そんな想いから韻ノートを作り始めました


ラッパーの頭の中をプログラムで表現した

松原:「韻を踏む」作業はどうやってプログラムで実現しているのでしょうか?何か特殊なアルゴリズムやライブラリを使っているんでしょうか?

細川:いや、もう単純にワードの母音を抽出して、同じ母音のワードを検索するだけですね。特にライブラリは使っていません

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松原:えっ、そうなんですか?母音を合わせるだけなら、韻ノートと競合サービスで韻の精度には差がつかないんでしょうか?

細川:母音を合わせるぐらいであれば競合サイトでも実現できているんですが、ここから先が韻ノートの強みです。まず、僕自身が韻を愛しています

松原:そういえば韻を解説するブログとか、書籍も出してますよね

細川:最近はKICK THE CAN CREWのメンバーのLITTLEさんと、YouTubeで一緒に韻について語る番組をさせてもらっています

松原:へー!好きなグループと対談するなんて、めちゃくちゃ嬉しかったのでは?

細川:彼らのライムなら基本的に全部解説できるぐらいには好きなので、もう感無量でした

松原:そもそも細川さんの韻レベルがめちゃくちゃ高いんですね

細川:いえいえ、そんな事は・・・ただ僕が韻を踏む上で考えている事は基本的に全部アルゴリズムで表現しています。例えば「ー」「っ」「ん」は母音では無いので、韻を踏む時には無視するんです

松原:例えばモノレールだと「モノレル」、続いて「お、お、え、う」って感じで母音で考えるんでしょうか?

細川:そうです。ただそれだけではなくて、単語に含まれていないけど「ー」とみなせる場合もあるんですよ。例えば「通行人」は「つーこーにん」の「ー」を抜いて「う、お、い」の母音で考えます

松原:通行人の服が、くーろーいー、みたいな?

細川:そうです。逆に「ー」を無視せず「う、う、お、う、い、ん」で韻を踏むと、うまく踏めているように聞こえません。この子音と母音の組み合わせの時は「ー」として扱い無視した方がうまく聞こえる、みたいなルールがあって

松原:なるほど

細川:ワードの候補を出すときも子音まで見て「どの言葉がよりうまく韻を踏めているのか」判断したり。実質ラッパーの頭の中がプログラムになっているような状態ですね。韻について深く知っていることが求められるので、そう簡単には真似できないと思います

松原:先ほど話題に挙がった「語感踏み」も、細川さん自身が当事者として流行を理解しているから作れるわけですもんね

細川:リリース後の変化に対応し続けるためにも、個人開発をする時は自分が好きなものを作るのがベストだなぁと思いましたね


個人開発だけで会社が出来そう

松原:韻ノートの開発期間はどの程度なのでしょうか?

細川:2ヶ月くらいでしょうか

松原:改めて今から作り直すとしたら、どんな風にプロセスを変えますか?

細川:もっと機能を絞ってベータ版の状態で出すと思います。作り込むと「使われるか分からない機能」が紛れ込んでしまうので・・・実際韻ノートでもいまいち使われない機能を作ってしまったことがあったのですが、少し時間をあけて個人開発を再開するときに「あれ、この機能なんだっけ」と自分でも思い出せなくなりましたね

松原:細川さんは韻ノート以外にも「HTML名刺」「mogmog」など様々なサービスを個人開発していますよね。もう手が回らない状態なのでは・・・?

細川:そうなんですよ。ちょうど最近、友人に手伝ってもらうようになりました

松原:やっぱり韻ノートに一番工数がかかるんでしょうか?

細川:いえ、最近新たに出した「ウマホ」というサービスに一番手がかかりますね

松原:まさかの4つ目!

細川:競馬も好きなので、競馬データのまとめサービスを作っていまして・・・あ、これも是非いつか紹介して欲しいです


松原:もう近々個人開発が会社になりそうですね

細川:そうなったら楽しそうですね


最後に

松原:今後、韻ノートはどのように成長していくのでしょうか?

細川:韻のことならなんでも韻ノート、ぐらいの総合的な韻プラットフォームにしたいです。まずはSNS機能でしょうか。ユーザ同士がお互いに交流できるような

松原:ラッパー同士がオンラインで交流する・・・めちゃくちゃ荒れそうな匂いがしますね

細川:荒れると思います(笑)やっぱりラップ界隈は喧嘩が起きやすいので、どうにかして健全なコミュニティを作りたいのですが・・・そこは今後も難しいテーマとして残り続ける気がしています。

松原:これからの韻ノートの成長を楽しみにしております。ありがとうございました!

細川:ありがとうございました!


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韻ノート


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