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残り1000字で地球が滅亡する小説

 ルール
 ・本文中の文字数が1000に到達した時点で、何らかの要因によって地球は滅亡する
 ・空白や段落毎の字数カウントについては字数に加えない
 ・数字はなるべく英数字として表記する

 ある朝自室で目を覚ました高校生の遠山啓は、上記の通りの預言を承り、それが真であると確信した。これは大変だぞと啓は動揺し、しかしそんな馬鹿げた事理解される筈もなく、いつも通り通学をした。その道中で胸中の同級生、苑乃子と鉢合わせした。(115)

 「やあ遠山くん!今日はどうしたのかなそんな慌てて」透き通る声が啓の頭を駆ける。50cm以内にまで接近した美しい顔は。何度でも彼の胸を高鳴らせて……否!駄目だ!このまま見惚れていると無駄に字数を割いてしまう!啓は苑乃子を振り払い逃げる!走りながら彼は心の内で決意した。あと750字で死んでしまうとしても、先延ばしする事は可能な筈。なら己の人生を描写されないように生きればいいのだと。(305)

 そして彼は実際、そのように生き抜いた。元々交友関係が薄かった事も幸いし、この小説上に特筆する必要もないような、平坦な学校生活を送られた。苑乃子についてはは徹底的に、かつなるべく自然に避け続けてやり過ごした。そうして啓は何の特筆する事のない卒業を迎え、何の特筆もなく進学し、就職して、やがて滅びの宣告から10年が経過した。(465)

 いい調子だ。このまま何も特筆する事のない人生を送り、大往生できれば完勝だな。そう思いながら進む通勤者の濁流の中で、出会ってしまった。最も避けてきた相手、スーツ姿の苑乃子と。(551)

 彼女を一目見た瞬間、啓は全ての使命を投げ出してしまった。滅びを避けて生き永らえてきた人生がいかに空虚であったか、気づかされてしまったからだ。この小説に特筆する程に心が沸く事も、満たされる事も、彼は10年間否定し続けた。だが彼女は、苑乃子を否定する事は……(678)

 ああ苑乃子、苑乃子。思うだけで十文字滅びに近づく君よ。僕達今更出会ってはいけなかった、それがどうした!彼は鞄を投げ出し、全力で他人にぶつかる事も憚らずに彼女の方へと走る!まるで自分が風であるかのように啓は感じ、そしてこちらへと振り向く苑乃子は太陽に見えた。(806)

 「遠山君!随分久しぶりだね!」(821)
 「!……そうだな」(830)
 「というか寂しかったぞ~、あれから学校でもほぼ会えなかったし」(861)

 10年振りに合えた彼女はあまり変わっていなかった。覚えてくれて嬉しいとか、書き連ねるべき感情は多いけれども、そんな猶予はもうない。ならば彼がするべき事は、言葉を振り絞る事だけだった。最期に映った世界が輝いて見えたのは滅びの光の為か、あるいは苑乃子のせいか。

 「ずっとあなたが好きで(1000)

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