マガジンのカバー画像

逆噴射小説大賞参加作品(2018〜2020)

13
逆噴射小説大賞への投稿作品です
運営しているクリエイター

#伝奇

贄の雨傘

贄の雨傘

 秋雨が翁を打ち据えていた。
 その老人、修はこの日も骨組みだけの傘をさしては、訳もなく庭と畑を徘徊する。そんな修の背をひ孫の水作が叩いた。

「なんだい輝美」
「だからママは死んだってば」
「どうしてえ」

 輝美とは修の孫娘で、水作にとっての母の名前だ。今はもういない。なのにこうして母の名で呼ばれる、そんな修を水作が敬遠するようになったのは無理もないだろう。それでも水作が修に話を切り出したのは

もっとみる