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詰め合わせ

昨年末、長年の友人から、年末年始は病院で過ごすと連絡があった。
駆け付けられる距離ではなく、ただ無事を祈ることしかできない。

退院してからも、治療は続くと聞き、なにか元気づけられるものをと思い、街に出てあれこれ物色して、小さな詰め合わせBOXを作って送った。
お菓子、フェイスパック、ハンドクリーム、入浴剤、かわいいハンカチ、ふわふわの靴下…

私は人にものを贈るのが好きだ。特に今回のような詰め合わせには、わくわくする。自分はいつからこうやって贈り物をするようになったのだろうと考えたら、まさに今回の友人への贈り物が最初だったと気づいた。

30年ほど前、遠方に就職した彼女が、過労で倒れたと聞いたのは、電話だったか手紙だったか。携帯電話などない時代だ、たぶん固定電話だったと思う。
以前から、職場でのパワハラや無理なシフトなどの話を聞いていた私は、絶対にそのせいだと思ったし、心細いに違いないと思ったけれど、意志の強い彼女は、こんなことじゃ辞めないし、実家にも帰らないと言った。

とにかく、なにか元気になるものを送るから!といって、私は買い物にでかけた。
まずは食べ物。レトルト食品、お菓子、栄養ドリンク、飲むゼリー。ずっと寝ているというから、気分があがるようにかわいいパジャマ。タオル。楽しい本や雑誌、リラックスできる音楽CD。あらゆるものを手あたり次第に段ボールに詰めて送った。

しばらくして、彼女から連絡がきて「ありがとう。うれしかった! 元気出たよ」と言ってもらえた私はホッとした。

この成功体験が、私を贈り物魔にしたのだ。

全部が全部、気に入ったわけじゃないだろうし、不要なものもあったと思う。でも、こういうものは、瞬発力と何かしてあげたいという気持ちがだいじなのだ。あれはいるか、これはいらないか、くよくよ悩んで時機を逃す方がもったいない。極論だが「きにかけてくれる友達がいる」ということが伝わればいいのだ。

若いころは、どんなものを送れば喜んでもらえるかとか、こんなものもらっても嬉しくなんじゃないかと思うこともあったが、歳を重ねて、遠慮のなくなった私は、もう堂々と人に贈り物をすることにした。
美味しいお菓子をみつけたの。この化粧水すごくよかったよ。旅行先で可愛い付箋みつけたから買っといたの。

最近元気がないなと思った友人には、誕生日でもなんでもない日に詰め合わせを送ったりする。(なんでもない日おめでとう!)
コツは、あまり高いものを入れないことだ。日常使いの消えものを中心に、向こうがお返しを考えないでよい程度のもので、相手の好みを考えて入れる。もちろん、手紙を添える。返事が来ることもあれば、来ないこともある。そこは気にしない。こっちが送りたいから送るのだ。

贈り物魔になったおかげで、人生がより楽しくなったと思う。

この週末、冒頭に出てきた友人に、久しぶりに会う。贈り物もいいけれど、直接会える嬉しさにはかなわない。



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