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「他者ファースト」でコロナを超える!

 私たちは、すでに気づき始めている。戦後最大の危機と呼ばれる新型ウィルスCOVID-19(コロナウィルス)とは、人類に与えられた試練かもしれないことを。技術の進化によって地球を汚し、生き物を殺め、豊かさという名のもとに自分中心の利己的な生き方を選んできた人類に、地球が叫びをあげ、生きとし生きるものからブーイングを受けているかもしれないことを。

 市街地は封鎖や外出自粛で人出を失い、市民は家に留まり、職場はテレワークや交代勤務となり、経済が止まり、所得が減り、困窮の影がひたひたと迫り、これまでの生活が営めなくなるかもしれない不安はひととおりではない。筆者も預金の残高を確かめ、どれを取り崩せば、いつまでビジネスを継続できるものか、試算した。

 その傍らで思い出すのは、名著「夜と霧」でヴィクトール・E・フランクルが描いたナチスドイツの強制収容所に繋がれたユダヤの人々が一ひとかけのパンを譲り合い、分かち合い、鬼畜と化すことなく支え合った事実だ。

 あの極限の暮らしの中でも実践された「利他」の行いは善行の典型であり、ダーウィンが説く進化説の系譜に基づけば、本能ともいえる。自分が犠牲になっても家族が生き残り、コミュニティが生き残り、誰かの子どもたちが生き残れば、種を守れることができるという、種としての人類が授かった本能である。

 ペストを克服し、コレラを克服し、結核を克服し、SARSや新型インフルエンザウィルスを克服したのに、また新たなウィルスによって、生命や生活が脅かされている私たち。医療従事者でもワクチンや治療薬の開発者でもない私たちがこの危機にあたってできることは、「利他」という本能を呼び覚まし、智恵として実践することなのだ。

 例えば、ウィルスのキャリアにならないよう、できるかぎり外出をひかえること。健康であれば、医療関係者や持病のある人へサージカルマスクが支給されるよう、自らは手作りすること。トイレットペーパーも食料品も不必要な買いだめをせず、慎ましい暮らしを取り戻すこと。家族で支え合い、コミュニティで助け合い、困っている人に手を貸すこと。つまり、自分中心の利己的な生き方、暮らし方を改め、利己を超え、利他に生きる「他者ファースト」の働き方、暮らし方を実践することである。

 サイエンス オブ ハピネス(幸せについての科学)は、ひとりひとりが他者に奉仕し合えば、誰もが幸せになれることを実証し続けている。「利他」に生きるとは他者に奉仕する暮らし方、働き方を実践することであり、それは自他の幸せにつながると気づき始めている。

 パンデミックというこの苦難を「利他」の行動をトレーニングするチャンスととらえ、苦難の最中も去った後も、ひとりひとりが他者や社会に奉仕し、その奉仕をとおして自他をひいては社会全体を幸せにしながら、次の世代を育くむ。そんな「他者ファースト」の習慣を築き、未来の社会へと手渡していきたいものだ。

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