ハラスメントだと叫ぶつもりはないけれど、

私は悲しかった、という話。


私は4月に職場を異動した。
異動先の先輩達のことは異動前から知っており、仕事もできる人達だし、人間的にも信頼できる人達だと思っていた。

しかし、職場の先輩が別の先輩に対してこんな発言をしていた。

「お前男が好きなの?女が好きなの?いい加減はっきりしろよ」

先輩達は笑っていた。発言した方も、発言された方も。
どういう文脈だったかは忘れた。上の発言も、一言一句そのままかと問われたら自信がない。先輩達にとっては単なる雑談だった。

それでも私は、私が言われているわけではないのに頭が真っ白になった。ショックだった。
理由は大きく3つある。

①  こういったコミュニケーションをする人たちだとは思っていなかったから。
②  性的指向や性自認をからかったり、ネタにするような発言は不適切であると、過去に業務の一環で発信していたことがあるから。
③  私自身がセクシュアルマイノリティ当事者だから。

まずびっくりした。まさかこの人達がこんな発言をするなんてと。
人間的にも仕事的にも、信頼できる人たちだと思っていたから。
その後無力感と悔しさ、そして悲しみが込み上げてきた。
(ああ、私の仕事は無駄だったのか。伝わってなかったのか)
発信の仕方が悪かったのかもしれない。馴染みのない人たちには伝わらない資料になっていたのかもしれない。
それでも1回きりでは無く、何度も発信していたつもりだった。
もちろん全員に伝わってるとは思っていなかったけど、よりにもよって信頼できると思ってたこの人たちに伝わっていなかったことが悲しかった。悔しかった。

最後に恐怖心が込み上げてきた。
私もいずれこのノリでいじられるのかなって思ったら、怖くなった。この人たちは信用できない、心を開けないと思った。

でも、その後しばらくは、このやりとりを忘れようと思った。
悲しいのも悔しいのも、そのままにしてたら仕事にならない。
聞かなかったことにしよう。そうしよう。

けれどその後、疲労や異動後のいろんな出来事が積み重なって(別記事でまた整理します)、出勤中にお腹が痛くなったり、先輩の言っていることが理解できなくなったり、先輩に話をしようとすると萎縮してしまったり、頭が全く働かなくなったり、先輩からの業務上の些細な指摘で泣いてしまったり、明らかに今までの自分だったらありえないことが起こっていた。

最後は、次の日までに仕上げないといけない業務の資料を開いた瞬間頭が真っ白になってパニックを起こしてトイレで号泣。泣き止めなくて職場の保健師さんのところに文字通り駆け込んで「助けてください」って言葉を絞り出してまた泣いた。

保健師さんに泣きじゃくりながら話を聞いてもらって落ち着いたけど、その後上司と泣きながら面談した。

先輩達への不信感が生まれた出来事を話すと、上司は困ったように笑った。笑ったのだ。
笑える出来事ではないから私は今こんなに泣いているのに。

笑ってた上司も、私が上記の①②の理由を説明したら、該当者には自分から注意すると言ってくれた。

けれど、なんでこんなに私が傷ついたのかは、やはり自分が(具体的に何とは言わないが)当事者であるからこそというところを少なくとも上司には伝えるべきと思ったので、他のメンバーには言わないように前置きをした後に打ち明けた。当事者だからこそ余計しんどかった、と。
上司からは「それは自然なことだし変だとは思わない」って言われたけど、言葉の真意がよく分からず、かといってもう尋ねる元気もなかった。

翌日、会社に行こうと思っていたし、行けると思っていたけど、自分が先輩の横で仕事する光景をイメージした途端涙が止まらなくなってしまったので断念。

その次の日はなんとか会社に行けたものの、先輩が視界に入った途端緊張で体が強ばり、上司に挨拶したらもう涙が出てきた。

やはり1番怖かったのは、アウティング。
自分が当事者であることは伏せてほしいとお願いしたけれど、本当に伏せてもらえたのか。先輩達にはどう伝わったのか。

上司からは、先輩達には上司から注意を行なったこと、先輩達にこれが問題のある発言だという意識はなく、特に気にしていなかったこと、気にしてなかったことがまず問題だと伝えたこと、当事者だからこそという部分は伏せたことが説明された。

安心した部分もあるが、やはり私の業務は伝わっていなかったんだなと分かって改めて悲しくなった。

それから何日か経って、先輩達とも話をしたけれど、「問題だという意識は無かった」と言われるたびに悲しくなった。

悲しいけれど、その悲しみを伝えないままだったら永久に理解されないままなのだと学んだ。

辛いし苦しいし怖いし不安だし痛みを伴うし、声を上げたからといって必ず事態が好転する保証はどこにもないし、むしろ悪化する可能性だってあるけれど、声を上げなければ何も変わらないのだと痛感した1ヶ月でした。

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