旅地理日記/静岡県三島市 初日の巻
総武線で東京駅に行く。新幹線より1時間ちょっと余裕をもって行った。カフェで読書をした。それで新幹線に乗った。こだま。指定席。
東京からは車両に二人だけだった。東京から5駅。東京、品川、新横浜、小田原、熱海、三島。1時間弱で三島に着いた。車窓を眺めるのも好きなのだが、本を読んだ。
最近は終始景色を眺める傾向はなくなったかも。というのは僕にとって旅先はバーチャルの日常で、ある種別荘に行くような感覚なのだと思う。そして道中の新幹線だとか高速道路とか、ビューンな感じが僕にとっての、日常を離れる非現実的なタイミング。
旅のどこかに、現実を離れるような、非現実性が欲しい気もする。それがこのビューンのようだ。「速いねぇ…」がどこかで欲しいような気がする。終始在来線でのんびり景色を見て、というのも素敵なのだけど。それよりかは今は、こっちになった。たまたま。
つまり決して急いでいるのではなく、在来線で2時間ちょっとを楽しむのもいいと思う。ただ、急ぎじゃなくて速く移動する。遊園地でアトラクションに金を払うようなものかな。それで気がすむわけだ。
三島に午後3時頃到着。新幹線の改札を出た。はじめは駅の作りがつかめなかった。南口に出たいので、在来線の通路を通る。地下通路みたいな感じだ。探せばエレベータなりあったかもだけど、ケースを持って階段。南口改札を出る。
駅前ロータリーは開けていた。それに繁華街的な景色があった。といってもこじんまりした感じの。Googleマップを見て、ホテルに向かった。
今回3泊。1万6千円くらいだったか、カードで支払い済みなので数字は忘れた。でも1泊5千円台ということかな。それで大浴場があって。ビジネスホテルなので個室。受け付けて、ちょっと落ち着いて、街を散策した。まだ3時半くらい。
三島駅の南側からすぐに、ゆるいくだり坂が伸びている。中心地方面へは坂を下るようだ。以前に何度かきたのだが、やはりゆるい坂の印象があった。
この日は夕方に、三嶋大社から伊豆国分寺跡を結んだエリア、古くから街があっただろうエリアを散策しようと思っていた。mapで色がついている範囲なのだが。
とりあえず、三嶋神社に向かおうとホテルを出る。その途中で気になるお店、食堂とか、なんとなく見つけておくつもり。
ホテルを出て緩い坂を下る。坂を降り終わって公園が目に入った。看板によると溶岩が露出しているそうだ。していた。それで池らしきものが見えた。川だった。公園内で湧き水が流れを作り、集合して川にいく。
うちの近所には台地があって、その下は湧水がある。それのどでかいパターンだろう。富士山の湧水がここに来ているらしい。
街中に綺麗な川があるって素敵。泉から水がじゃぶじゃぶ出て、幅1mくらいの流れを作っている。はっきりしたものは三つくらいだったか。それと池もあった。そしてすぐ横の川に流れている。
地図で見ると三嶋大社の前の道、おそらく現代ではメインになっている筋がある。十字路を左に曲がって大社方面に。道が綺麗。広い。落ち着く。品がある。
だいたい、お店が落ち着いているよ。比較してごめんだけど、看板だらけの街と違って目にも優しい。でも新しい綺麗な店ばっかりじゃない。僕は嫌いじゃないけど。街全体で、落ち着いた商売、長く続けているだろうお店がたくさんある。
ホント落ち着く街だなあ。街中にいくつか川があって、水が綺麗で水量がすごい。多分水量がすごい時にきたのだと思うが。
三嶋大社に到着。鳥居が、大通り沿いと横の通りにもあった。多分、横の方は古い通りの正面か。そこから国分寺跡まで道が伸びていて、古道の跡? 調べたら、鎌倉古道と出てきた。歴史ある道はこっちなのだろう。
メイン通り側から入った。三嶋大社は結構奥行きがあった。池というか庭というか、立派だった。お参りして通りに戻る。
真向かいが参道みたいな雰囲気。いかにもな様子、まではないかもだけど、ちょっと古い店舗とか並んでいそうなので歩いた。えびす参道というらしい。そこそこ古いお店があっていい雰囲気。新しいお店も少しある。
よく思うんだけど、古いお店ってそんなには潰れない。ただ高齢で店をたたむとか、開発でなくなるとか、そういったことで新しく変わっていくパターンが多い気がする。逆にいうと潰れない店だったわけで、地域に使われているとか、飲食店なら実力がある店だとか、そういうことだと思う。
時代の流れでそういうお店がなくなる傾向は寂しいし、その街の印象から歴史的な落ち着きや、人生の道のりみたいなものが消えてしまうのが悲しい。
しかし新しくお店ができて、品のある通りになるのなら仕方がないし、変わるのだったらそれもいい。要するに、品のある新しさになってほしい。消費とか豪華とか贅沢とかな、「more」なものではなくて。まあ個人の思い。
少し歩いて、伊豆箱根鉄道駿豆線(すんず)、三島田町駅前にきた。地元スーパーがあった。行きたい(結局行けなかった)。市電とかそれに当たるような地元の交通は、庶民の街を通っていることが多いので、そういったエリアはチェックしないとだ。
この駅の周囲は少しすっきりしているが、スーパーがあるくらいだから、かなり生活感のあるいい駅だ。駅前ロータリーがあり、駐輪場もあり、動線が感じられていい。
そこからまた歩く。中心地方面、三島広小路駅方面に向かう。本町というみたいだ。道中も川や店やいい雰囲気だ。お寺も多い。いい意味で駄菓子屋みたいな。
生活感はいい。駅も古びて生活感があっていい。駅前の広小路、変則的な交差点の景色がいい。道が五つくらい集合していて、僕のようなよそものが車で通ったら困りそうだ。
線路沿いの渋い道を行き、国分寺跡に向かう。石碑があった。律令制の時代から、ここに町があったのだ。また三島はこの地域の中心地だったわけだ。今の国分寺跡周辺が中心ではないが、裏路地な感じで良い雰囲気。
そこからまた、三嶋大社方面に向かう裏路地、鎌倉古道を進んだ。落ち着いた飲食店がよくある通り。時間がまだ5時前だし、休業中の札のお店も多かった。夕飯を食べたいお店を探しながら三嶋大社方面にいく。
結局夕飯は、地図で目星をつけておいた街の定食屋さん、みつわ食堂に入った。安いタイプのお店ではないが高くもない。品の良い庶民な店。黒酢の酢豚定食にしたが、肉とかいいものを使ってとても美味しい店だった。店構えは今時感がないけど、実力は見た目じゃない。
ラーメンなどの食品サンプルが飾られたウィンドウがある。ショーウィンドウを綺麗にしている。昭和な見た目でも、品の良いいい店だった。滞在中、また行くと思う。明日は定休日らしいが。肉も良いし、米の具合もハイレベルだった。粒がしっかりしてよかった。食感がちゃんとしている。味噌汁も良い。
店を出て、ゆっくり歩いてキョロキョロしながらホテルに戻る。水路、川、生活感、ビジネスにせかされない生活感だな。ホント、生き心地の良さそうな生活感。陽が落ちてくると、街や車の明かりが水面に綺麗。
ホテルに戻って、大浴場で温まって、部屋で今日の記録を書いている。今日の旅地理日記はこれで終わり。
三島は街が先にできたのだろう。路線は元の街を取り巻くように、庶民住宅街を通っていく。多分だけど、元の街と新興の居住区の隙を通っていく。
交通網より先に街がある。そこで想像すると、用があっていくのが街で、遊び場として出来上がってきたわけじゃない。布団屋とか履物屋とか、欠かせないものを手に入れるタイプだったと思う。
ターミナル駅周辺は、必要ごととはまた違った、経済の活性化のためにやってきた分があると思う。そのため騒がしい街に仕上がっていくのだろう。盛り上がっているから行くとか、そういう要素は濃いかもしれない。
それと歴史あるまちは水が沸いているところが多いかもしれないと思った。
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