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人の家のシャンプーの匂いが好き

日がな一日パソコンと向き合う仕事なので、意識的に散歩するようにしている。しかも今はコロナ禍。週5で在宅ワークである。意識して身体を動かさないと色々とヤバイ。散歩コースは特に決まっていない。近くに川が流れているので河川敷を歩いてみたり、幹線道路沿いを歩いてみたり、気が赴くままに好きな音楽を聴きながらフラフラと歩いている。

日も沈んだ時間帯、住宅街を歩いていると生温かい空気とともにフワッと優しい香りが鼻に入ってくることがある。人の家のシャンプーの匂いだ。私はこの人の家から香ってくるシャンプーの匂いがとても好きだ。シャンプーの種類が美容院でしか売っていない洒落たやつではなくて、ドラッグストアとかでよく安売りされているザ・シャンプーみたいなやつだとなおよい。

この匂いはどこか懐かしい気持ちにさせてくれる。今どきの言葉を使うとエモい匂いである。家族の残り香を感じながらお風呂に入っていた実家在住時代、みたいに長いスパンのものから、友達の家にお泊りしてお風呂場で家族以外の存在を初めて感じた時、みたいに瞬間的なものまで。懐かしい思い出が蘇ってくる匂いだ。

考えてみると人のシャンプーの匂いを感じる機会って私にはなかなかない。一人暮らしだから自分以外の誰かは家にいないし、お互いお風呂に入った状態で一夜をともに過ごす恋人もいない。たまに友人を泊めたりもするが、私は匂いがしない無臭のシャンプーを使っているので、友人からシャンプーの匂いを感じることもない(たとえ感じられたとしても自分と同じシャンプーなのであまり感動しないと思う)。大人になってから着実に人のシャンプーの匂いを感じる機会はなくなっている。

シャンプーの種類にもよるかもしれないが、シャンプーの匂いは香水とかみたいに意図的に匂わせようとしている匂いではない。だから、その匂いを感じられたときは、その人のパーソナルな部分に触れられた気になる。人の家から匂いを感じられたときは、その家の一員になれた気さえする。散歩をしていて人の家からシャンプーの匂いを感じられたとき、一瞬でも誰かの家族になれた感覚が生じる。それと同時に懐かしい記憶が蘇ってくる。感覚と記憶、それぞれが化学反応を起こし、心になんとも言えない電流が走る。その電流は、寂しさを感じている心にはとても心地よくて。今日も今日とて、心地よい電流を求めながら夜の住宅街をふらつくオカマなのであった。

余談だが男性から生活感を感じる匂い(シャンプーの匂い以外だと柔軟剤の匂いとか)がすると少し興奮する。香水、整髪料みたいにとがったお洒落な匂いではなくで、ほわっと優しい匂い。生活感を感じると安心しちゃう。まぁそういう匂いがする人って高確率で既婚者なのですが。南無三。

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