0045
樹々共は高さを競い葉の大きさを争って森を創った。そして勝鬨のように鮮烈な花弁を開き豊かな果実を下げた。
それを目当てに虫共や鳥共が飛び現われ、獣共が寄って来た。それらは喰い排泄し生まれ死んだ。
様々を循環、凝縮、拡散させていく森はさながら荒野を侵食していく一つの生き物だった。
彼は一度も振り返らず土を抉り続けた。乾いた土と空気で満たされた荒野が、彼が見て触れる世界の全てだった。
しかし彼の背後には、彼の世界をしがみ噛み砕き吐き捨てて生の湿り気を撒き散らす生き物共の蠢きが在った。それを産み出したのは正しく彼自身であり、もはや後戻りはできないのだった。
どこかから一人の人間が現われた。男は手に棒切れ一本を持って険しい眼つきと慎重な足取りで森に分け行った。そして胸や腕に幾らか傷を負いながら一抱えほどの大きさの獣一匹と幾つかの果実を持って、覚束無い足取りでどこかへ去った。
しばらくして、最初に来た男とは別の男達が三人やって来た。
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