0035
「一度目は山で。女とやってる後ろから頭を岩で殴ったの」
「それで」
「まだ息が有って、でも怒らずに、『悪かった』って」
「ほう」
「これをやるって」
「何を」
「腕よ。右腕をくれたの、『きっとお前に必要になるから』って」
「ぶった切ったのか」
「彼が外したのよ、手品みたいに」
イベルタはその右腕を持ち帰った。時折大きく痙攣したが、優しい言葉をかけてくれるでも、熱い眼差しを呉れるでもなかった。だか、彼の温かさはそこに息づいてた。
「それを小さな籠に寝かせたの」
右腕は、嬉しそうにしているように見えた。
「だからこうするのがよかったんだって思ったの」
「でも、その男後で会いに来たんだろ」
「そうね、でも違った」
「違った」
「そう、だってそいつには右腕が有ったから」
「じゃあ赤の他人だろ」
「たしかに本人よ。でも別のハラバナルなの」
「なんだそりゃ」
「あたしも気味が悪くなって、だからまた殺したの。だって二人も要らないし」
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