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スーパーかあちゃんへの道12

子供が成長するに連れ、「油断も隙もない」感じに仕上がっていくのは知っている。それにしても、この「隙」が日に日に短くなっている。

つい先日までは、私が夕ご飯を食べる間、テレビを見せておいたり、おもちゃで気を引いておけばおとなしくしていられたのに、最近の食事光景と来たら、私の右腕にぶら下がったまま全身をすりつけて泣き喚いており、私はその右手を無理に動かして口元の直前で落としてみたり、口の方をスプーンに近づけて、なんともお行儀の悪い感じで食べたりしている。あるいはもう、諦めて食べない。娘が寝てから食べる。

隣に座っている時でさえこうなのだから、もちろん茶碗を洗うなどの離れ業は不可能だ。私の太ももあたりに顔を擦り付けて、時たま訴えかけるような表情で見上げながら「抱っこして〜かまって〜」と泣き喚いている。む、無視できない…!

なんとか「隙」を作り出そうと、食事の際に白米を少なめにしておいて、茶碗を洗っている間、小さなおにぎりを食べさせる、という方法を試してみた。椅子に座らせておくと椅子の上に勝手に立ち上がって危ないので、止むを得ず机の前で立ち食い。

たまに振り返りながら茶碗を洗っていると、おお、1人で食べている!
味噌汁だろうとカレーだろうと放っておけば食事は手づかみ派な、野性味溢れる1歳児であるが、もちろんおにぎりも手づかみで、もしゃもしゃと口に運んでいる。
そうれ、今のうち!!と言わんばかりに、2倍速で洗い物やキッチン周りの片付けを始める。

そして、つい、ほんのちょっと、娘を振り返り様子を確認するのを怠っていた。しばし洗い物に没頭し、ハッとして振り返ると、なんとまだ米の入った器を手に、じわじわとこちらに向かっている。そしてその後ろには米粒の道しるべが…!

おにぎりだったはずの米は、ぐずぐずに崩されて、もはやただの盛り飯と化し、机→カーペット→娘の足の裏→カーペットの順で転移し、そこらじゅうが米まみれだった…!!しかもカーペットは毛足3センチのもじゃもじゃ系。ああ、こんなカーペットを敷いていた私が悪かった。悪いのは私。この私。あるいは誰でもないよ。誰も悪くないの。強引な平和理論。でもなんでもいい。とにかく気持ちを落ち着けて。

どこから片付けたらいいのやら、まずはカーペットの毛にこびりついた米を娘が踏むという二次災害が目の前で勃発するのが耐えられず、カーペットからとりかかる。
しかしそうしているうちに、娘は自分の服、手、口周りについた米を私になすりつけてくる。ぬおお、まずは娘からか。

今度は娘から米粒をもいでいると、集めた米をやわらかーく握りしめている私の手のひらに興味を持った娘がそれを開こうとする!やめて今それは。

立ち上がって手のひらの米を捨てに行こうとすれば「どこにもいっちゃだめ!」と言わんばかりに足元にまとわりつきぎゅうっと顔を埋めてくる。可愛いんだけどね、娘から私に転移した米がまた娘のおでこについているんだよ。
米の無限ループ…!

ミレーの「落穂拾い」のごとき体位とテンションで、我は米を拾った。
(『名画に学ぶ主婦業』参照↓)

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ようやっと我が家の米騒動が落ち着き、落穂ならぬ「米拾い」から解放された私だが、次の日は柿ピーをぶちまけ(口に入れたらアウトな分、米より過酷)、ストッカーの結束バンドの山をぶちまけ、綿棒をぶちまけた。私は「柿ピー拾い」と「結束バンド拾い」と「綿棒拾い」に明け暮れた。ひたすら拾った。

娘の急な成長に、我が家のインフラは全く追いついていないのだった。
油断と隙がありありの我が家で、娘は今日も虎視眈々と何をぶちまけるか狙っているのだ。くうう。

スーパーかあちゃんへの道は、拾えども拾えども、遠い。


応援いただいたら、テンション上がります。嬉しくて、ひとしきり小躍りした後に気合い入れて書きます!