silver story #34

#34
相変わらずのまとわり付く空気とまだぎこちない歩みのせいで、二人より息が上がってきた。まだまだあの白い丸は近づいてこないが、怖さはなかった。
ただ両側の闇の中には、精霊や邪悪な何かは、蠢いているそんな気が漂う道で、とても一人では行くことは出来ないと思った。

「この道は、昼間はどんな感じですか?」
思いきって聞いてみた。
「昼間?昼は、木漏れ日がキラキラしていて、花や緑が綺麗な道ですよ。ただ、一人では行かないほうがいいと言われてます。」
「何かあるんですか?」
「子どもの頃から言われてますね。サヤもわかるでしょ。両側のアレが。」

そう言ってお母様は、電灯を照らしていた。
やはり、何かしらが居るんだなと思い、もうそれ以上は、聞かないことにした。

ザワザワ風に揺れる木々は、今夜の祀りに参加する精霊たちの身支度なのかもしれない。

夢の中ではスーッと動く感覚だったが現実は一歩一歩近づいて行くということで心の準備をしていくことができる。
早く行きたいというのもあるがやはり怖さとか、不安とかがいっぱいいっぱいになってきて、まだ楽しむ余裕が出てこない。

昼のあのまどろみの時間に戻ってくれたらと思うくらいだった。

両側の闇は、いっそうざわめき立ってきて、それはうねりのようになってきた。

気を許したら引き込まれそうだ。ユキさんの体をしっかりとつかんで前に進んで行った。

丸はだんだん大きくなり、広がり、視界にも闇より真ん中の光が大きくなってきた。

『うわっ。』思わず声が出た。
眩しくて目が開けられなかった。二人の姿も見えなかったし、どこにいるのかもわからなかった。そばにいるのだろうがその気配すらなかった。

あの時の夢と一緒だ。
恐る恐る目を開けると、眩しい光の中にぼわんと輪郭だけの祠らしきものが競り立っていた。

あの夢と違っていたのは、その大きさと息が止まるほど夥しい覇気が放たれていることだった。

#小説 #バリ

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