Safety-Ⅱの心理学
このノートは日本心理学会第84回大会(2020年9月)のErik Hollnagel氏による招待講演の内容に関するメモです。
導入
安全を大事にする→リスクや失敗に注目しがち
安全とは「危害や他の望ましくない結果から守られていること」
安全と心理学
マズローの欲求段階
哲学者であり心理学者であるニーチェ
The first principle is any explanation is better than none...The cause-creating drive is thus conditioned and excited by the feeling.
どんな説明もないよりはまし。このように原因を探る動因は感情に条件づけられ、高められている。
安全に対する人間の態度
未知(神の所業)→確率の問題→技術の問題
【1970s】グリーンマイル島の原発事故:技術の問題では説明がつかない
⇒ヒューマンエラー
【1980s】チェルノブイリの原発事故:ヒューマンエラーでも説明できない
⇒組織文化
何かが起こると人は過去を振り返って、違和感が軽減される説明を見つけようとするが、「安全」は過去の問題ではなく、今後の問題でもある。今後の問題に対して、過去の出来事からの知見を適用しようとする。
Safety-Ⅰ:なぜ問題が起こるのかを説明する
異例の出来事
(1)原因がある
(2)原因と結果には直線的な関係がある=原因が変われば結果が変わる
出来事⇒病因論(aetiology)⇒存在論(ontology)
「上手くいかないことと上手くいくことの原因が一緒ではいけない」と思う
人は1つの原因を求めようとする⇒1つの解決策につながる
ヒューマンエラー⇒人をトレーニングする、やり方を変える
組織文化⇒安全文化を導入
逸脱行為⇒コンプライアンスの強化
5つの一般的な神話
①すべての事故は見つけることができ、修正することができる原因を持っている。
②好ましくない結果はそれぞれ違った確率で発生する(ピラミッド型モデル)
③ヒューマンエラーはあらゆる事故の最大の原因である
④事故の調査は根本的な原因を見出す合理的な方法
⑤様々な手続きや標準を遵守すればシステムは必ず安全になる
WAI(work as imagine)/WAD(work as done)は常に違う
Safety-Ⅰ の問題
Safety-Ⅰでは、なぜ事故が発生するかを理解する必要がある
Safety-Ⅰでは、安全とは事故やインシデントが無い状態である
心理学的は、Safety-I は、好ましくない結果から逃れようとすること。
安全のない状態から逃げるのではなく、安全の状態に近づくには?
ヒューマンエラーの確率は80-90%、残りの10-20%は?
10000件のうち1件の問題がヒューマンエラーによるものだったとして、残りの9999の責任は何にある?
幸せな結婚を理解するために、離婚の研究だけをしていていいのでしょうか?
スイスチーズモデルのReason氏
"Safety is defined and measured more by its absence than by its presence."
安全はその存在よりも不在によって定義、測定される
Reason, J. (2000) Safety paradoxes and safety culture. Injury Control & Safety Promotion, 7(1), 3-14
Habituation 馴化
上手くいっているときには注目しなくなってしまう。気づくのはうまくいかなくなった時
なぜ物事はたいてい上手くいくのか?
人々は様々な調整を行っている
上手くいくこともあれば、上手くいかないこともある。
同じプロセスが同じ結果になり得る
調整を実現する4つのポテンシャル
(同)実践サイコロジー研究所は、心理学サービスの国内での普及を目指しています! 『適切な支援をそれを求めるすべての人へ』