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誰が組織文化を創るのか

◆はじめに

前回はVUCAの時代を迎え、組織が機能する条件がルールから組織文化に変わりつつあるという話をしました。VUCAの時代には具体的なルールで統制することは難しく、ルールは守れないという前提で、戦略を実行したり、プロジェクトを実施する際に、成功要因になるのは組織文化になりつつあります。

今回から、組織文化の変革や構築の方法を考えていきますが、そこではリーダーやリーダーシップが重要な役割を果たすと考えていますので、まずは組織文化構築において、リーダーやリーダーシップの役割を明確にしたいと思います。その上で、組織文化の構築方法そのものについて考えて行く予定です。


◆組織文化構築における役割分担

まず、組織文化の構築は誰の役割かという問題ですが、これについては、リーダーだけではなく、メンバーも含めてその組織の人全員の役割です。ただ、そうはいっても、必ずしもメンバーが「役割を果たすんだ」といってすぐに影響力を発揮できるわけではありませんので、それなりの役割分担が必要になってきます。

まず、どういう文化の組織にしたいかをもっとも明確に抱いているのはトップリーダーです。このように書くと、うちの役員は何も考えていないという反論があると思いますが、経験的に、それは諸般の事情で明確にしていないだけで、リーダーまで任される人はしっかりした組織観を持っているのが普通です。

この議論は別の機会にして、このような前提で一般的に考えられているのは、組織文化はトップが目指したい方向を決めて、その方向に向かって、ミドルやメンバーがマネジメントや業務の中でそれを実現していくというものです。

現実にスタートアップの企業の組織文化はそのようにして作られていくことが多いですが、企業として成長し、規模が大きくなるとなかなかそうはいきません。例えば、トップリーダーが「〇〇な会社にしたい」といっても、それに賛同する人もいれば、いない人もおり、組織としての共通の認識にはなりにくく、文化と呼べるところまでは行かないのが現実です。


◆組織文化の構築におけるミドルの役割

ここで、重要な役割を果たすリーダーがミドルです。組織文化の構築におけるミドルの役割は図1のようなものになります。

画像1

ここで、ポイントになるのは、(3)の統合です。この統合には、2つの種類があります。一つは、トップリーダーの想いで、もう一つはメンバーの望みです。傾向として、トップリーダーは目指すべき文化を抽象的に表現し、メンバーは具体的に表現する傾向がありますので、図2のような流れが基本になります。

画像2

ここで、組織文化という言葉のあとに()で示されているものがありますが、これはPMstyleが想定しているのは、シャインのモデルだからです。このモデルは、組織文化を3つのレベル

レベル1:人工的に創造されたもの
レベル2:信条と価値感
レベル3:基本的仮定

の階層で考えるモデルです。詳しくは次回以降に説明しますが、今回押さえておいて欲しいところは、ミドルーが組織文化構築の中核を果たす構築アプローチでは

メンバー:レベル1の考案と実践
ミドル:レベル2の考案とレベル3の明文化
トップ:レベル3のイメージ

が役割分担になることです。つまり、トップリーダーが想う組織の在り方があり、ミドルがその実現に向かっての信条や価値を考え、打ち出します。そして、メンバーがその信条や価値観を具現化する仕事の進め方や、仕事の環境の提案をし、実現していくことになります。

シャインの組織文化については、次回、詳細に説明する予定ですが、待ちきれない人はこちらをお読みください。

【VUCA時代のマネジメントスタイル考】
「組織文化について考える(2)~組織文化の3つのレベル」
https://note.com/ppf/n/n9dd55d232407


◆統合の流れ

トップリーダーの想いには、トップリーダーの個人的な望みもあれば、「企業や事業、あるいは戦略をうまく実行するためにこういう組織の特性が必要だ」と考えている考えもあります。ここは明確に区別しておいた方がよいでしょう。

トップリーダーに組織の目指す文化のイメージを聞くと、抽象的な答えが返ってくることが多いのですが、稀に具体的な答えを言うトップリーダーもいます。そこで、統合のために重要なことは、トップリーダーについては、インタビューの中で概念と形象を行き来し、とちらの視点からも行き来できるようにしておくことです。

また、通常、トップリーダーは複数いますので、トップリーダー全員のイメージを統合する必要があります。これは概ね概念化で事足りますが、このような統合を行うときにも、それぞれの望みに対して、概念と形象の行き来をしておくことが役に立ちます。

このようにして、統合した文化を示すと、トップリーダーも納得してくれますし、また、メンバーに対して影響を与えることもできます。

このような流れを示すと、ミドル自身の思いはどうなるのかと思われる方もいらっしゃると思いますが、実は、シャインのモデルの中で構築もっとも影響のあるのは基本的仮定を実現するためにどのような価値感や信念を設定するかというところで、これを中心に行うのがミドルということになります。

言い換えると、ミドルは、価値観を通じて、メンバーとトップの双方に影響を与えるミドルマネジメントを行うわけですが、こういうマネジメントを「ミドルアップダウン」と呼びます。


◆統合の例

上記のようなミドルマネジメントの例を考えてみましょう。

上で述べましたようにある文化が組織文化になるということは人工物や価値観が実行されるだけではなく、基本的仮定になることです。

一つ例として、ミドルがメンバーの仕事の仕方に関する望みを聞いたところ、さまざまな意見が出できましたが、統合的に分析したところ、仕事の中で、自分の仕事の結果に責任を持つことを望んでいることに気がついたとします。

一方で、トップリーダーは、何か新しいアイデアが出てきたときに、評価するのではなく、賛同し、支援する組織でありたいという想いを持っていました。

ところが、この組織には、

「自分のアイデアを外部に提案するときさには上司の合意があって初めて提案できる」

という暗黙の了解がありました。責任ということでいえば、社員が自分自身で最終的な責任を負わないことを意味していますが、トップリーダーの想いを叶え、メンバーが仕事をしやすくするには、この文化を変革する必要がありました。

そこで、ミドルは、トップリーダーの想いやメンバーの望みを統合し、目指すべき組織文化(基本的仮定)を

「誰ひとりとして自分自身のアイデアを評価できるのほど十分スマートではないので、ほかの人たちが支援し、賛同を示さなければならない」

として、トップリーダーの合意を取りつけました。その上で、この基本的合意を創り上げていくためには

「すべてのレベルの社員が自分が何をしようとしているのかを考え、常に「適切なことを成し遂げる」ことを推し進めることに責任を負う」

というという価値観が必要だと考え、メンバーにぶつけて、共感を得ました。そして、メンバーたちは

・自身の業務にこの価値観を反映させる努力をする
・スタッフが業務運用の仕組みを見直す
・半年に一度、組織としての振返りをする

といった取組をし、基本的仮定が暗黙の了解になってきました。


◆業務に価値観を持ち込むオーナーシップ

このようにして統合を進め、目指すべき組織文化を決めていきますが、それが組織文化となっていくには実践が重要です。実践には、戦略展開、事業の進め方、プロジェクトの進め方などさまざまなレベルや形がありますが、業務には業務の目的がありますので、組織文化ありきではできません。

そこで、重要になってくるのは、戦略目標、業務やプロジェクトの目的を決めるときに、組織文化を配慮することです。そのためには、メンバー全員がリーシップを持ち、そのような目的を探し、決めていく必要があります。言い換えると、

「顧客から信頼を獲得し、維持していくために、競合や顧客だけではなく、社会的な意義(パーパス)にも注意を払うことにほって、組織文化への適合を図る」

ことが必要です。

このようなリーダーシップをオーナーシップと呼ぶことがありますが、一言でいえば、組織文化を配慮して、文化を反映できる活動にするには、メンバーはオーナーシップを発揮する必要があるわけです。

オーナシップについては、詳しくはこちらをお読みください。

VUCAな時代に適応していくには「オーナシップ」が不可欠である
https://note.com/ppf/n/n6776c9b9150c


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