【実話怪談】忘れられない奇妙な体験
これは私の友人Aが高校生3年生の時に実際に体験した話です。
当時Aは車の免許を取ったばかりで、仲の良い友人グループとドライブも兼ねた、心霊スポット巡りが趣味になっていました。
その中でも関東某所にある廃病院での体験が最も印象に残っているそうです。
その廃病院は精神病院で、元職員による告発で違法行為が世に出たため、廃院となった場所です。
当時、それなりに有名な心霊スポットだったので、ホラー好きのAは期待に胸を膨らませていました。
病院付近にはコンビニがあり、そこに車を停車し、病院へ向かいました。
病院は閉鎖されてはいましたが、以前、誰かが侵入するためにエントランスのガラスを割っていたので、Aたちもそこから侵入したそうです。
夏ということもあり、夜でも蒸し暑かったそうですが、病院に入った途端空気が一変。少し肌寒さを感じたそうですが、Aたちはそんなところも「雰囲気あるね」と気にする事なく、院内を散策しました。
病院は数階建だったので1階から順に周っていき、放置されたままの医療器具やベッドなどを見つけては、友人たちと一緒にはしゃいでいたそうです。
しかし、3階を散策していた時、友人の一人(B)が突然
「静かに！」
と声を上げたそうです。突然のことに全員が少し慌てながらも黙っていると
「コツ…コツ…コツ…」
とハイヒールで歩く音が廊下に響いていました。Aはその瞬間、先客がいたのかと思ったそうですが、しばらく足音が続いたあとに
「ギィー…バタン！」
と鉄の扉をゆっくりと閉めたような音を最後に足音は全く聞こえなくなりました。全員が時間が止まったように呆気にとられていると、少し怯えた声で
「やばくね…」
とBが呟いたことを皮切りに全員が一斉に喋り出しました。「帰ろう」と言う人もいれば、「やばいからこそ、続けよう」と言う人もいましたが、結局は全員で散策を続けることになったそうです。
この体験をしてから、何か撮れるのではないかと、別の友人(C)が携帯で動画を撮りながら散策をしたのですが、暫くはなにもなく、先ほどのことを忘れて再びはしゃいでいました。
しかし、今度はCが突然
「声！声！」
と言い出しました。先ほどの事もあったので、すぐに全員が黙りましたが、Aには何も聞こえなかったそうです。Cの付近にいた人は顔色が悪くなっていましたが、それ以外の人はAと同じく何も聞こえなかったため、
「またまた〜」
と先ほどとは打って変わって、すぐに茶化す雰囲気になったこともあり、Cも気のせいかと、切り替えて散策を続けたそうです。
その後は、特になにもなく、あの足音はなんだったのかと話ながら廃病院をあとにしました。
車を停めていたコンビニへ戻り、飲み物やスナックを買って駐車場で駄弁っていると、動画を撮っていたCが
「やばい！やばいって！」
と声を上げたのです。
Cは何も買わずに動画を見返していたのですが、「声！声！」と言っていたところに、幼い女の子の鼻歌のような音声が入っていたのです。深夜だったこともあり、そのような音声は絶対に入らない状況だったそうです。
全員で音声を確認するとCは「だから言ったじゃん！」と気のせいではなかったことを主張し、初めて撮れた心霊動画に恐怖を感じながらも、その場の全員が興奮していたそうです。
しかし、撮れていた現象はそれだけではありませんでした。
Cがその後も動画を確認していたところ
「みんな、ちょっとやばいかも」
と先ほどより小さな声で、全員を集めて動画を再生しました。それは散策の終盤ごろに、ドアの閉まっていた病室に入る時の動画でした。ドアを開けて部屋に入る瞬間に、誰かがふざけて
「はい、お前呪われた〜！」
と最初に部屋へ入った人を茶化したのですが、その声の直後に
「フフッ…」
と成人女性の笑い声が入っていたのです。その日は男だけで行っていたので、明らかにその場にいる人の声ではなかったそうです。
笑い声の直前のセリフも相まって、全員の顔が青ざめたのを今でも覚えてるそうです。
動画を見たあとは、安全運転で気をつけて帰ろうと声を掛け合って真っ直ぐ帰宅しました。
よくある話だと、その後、誰かが不慮の事故に会ったりしますが、幸いA達の身にはそういったことなかったそうです。
しかし、Aは数年後に奇妙な体験をするのです。それはAが大学生になりお酒の席で怖い話をしようという流れになった時のことでした。Aはこの話をしながら、Cから当時送ってもらった動画を見せようと思い、一連の話をしたあと、データフォルダを遡りました。そこでAは目を疑うことになるのです。廃病院で撮った写真や動画のデータだけがフォルダから無くなっていたのです。携帯の故障でデータが消失することはありますが、その日のデータだけが消失するなんてことは、私も聞いたことがありません。
Aは不思議に思いながらも、Cから送ってもらった履歴を探してもう一度ダウンロードをしましたが、一つだけ履歴からも消えているファイルがあったのです。
それは成人女性の笑い声が入っていた動画でした。Aはどうしてもその動画をもう一度保存したかったので、一緒に行った友人達に連絡をとりましたが、返事は意外なものでした。
「そんな動画あったっけ？」
当時10人ほどで行った友人のうちほとんどが、そのように返してきたのです。そのほかにも「そんな動画があった気がする」程度の反応で鮮明に覚えていたはAだけで、動画も全員の端末から消えていたのです。
その後もAの身には何もなく今も元気に過ごしていますが、なぜAだけが覚えていたのか、そして動画はなぜ消えてしまったのか、その理由はわからないままです。