袖触れるまで

250km。
これはいつもの。

残り120km。
月に一度の、私の楽しみ。

「なんで今日に限って残業長いの!」
深夜0時、家に帰ってきた私は、紅色のお守りを唇にさし直した。

深緑色の愛車に乗り込み、お気に入りの曲をかけ、エンジンをかける。

『目標地点を設定します』
中間地点、山梨県。

残り80km。
ようやく伊豆半島を突破。

残り28km。
時間に余裕がありそうなので、コンビニで2人分の買い出し。
スイーツに悩む私の目に入ったのは愛車色のプリン。

あと1km。
赤信号。バックミラーで前髪を整える。

あと0.05km。
「今晩は!」
誰よりも会いたかった、愛しい人。

荷物をソファに下ろし、ビニール袋を取り出す。
隣にいる彼もまた、同じように袋を取り出す。

「酎ハイ、お茶、カフェラテ、クリームパンに抹茶プリン」
「そんなこと、ある?」
左右対称に並べられた1680円分のそれらは
高級フルコースよりも幸せが滲んでいた。

午前2時半、0km。

◇ ◇ ◇

結局、ショートストーリーのままにしました。


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