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を。 の ちょっとだけ過去に思いを馳せた話

ちいさなわたしの好きなもの
ビー玉、鉱石、お星さま。

金色と銀色のおりがみは
夜空に輝く小さな光の色のようで
いつも使えずにビニールの中へ入ったままだった。

「本日は初めに、今晩のこの街の空を観ていきましょう」
定刻になるとアナウンスと共に、
部屋の中心にある大きな機械が音を立てた。

辺り一面が青空でいっぱいのこの街になり、
次第にオレンジ色に包まれ、
そして吸い込まれるような夜の姿になった。

「皆さまの視界、左前方。北に見える七つの明るい星々。繋げるとひしゃくのような形になる、あちらが皆さんご存知の、北斗七星です」

見渡す限りの、星空。
普段見上げる夜空とはまるで違う、
煌めきを詰め込んだ宝箱のような光景。
これが、いつも見ている空の本当の姿。

目で見えるものが、全てじゃない。
そんな風に星たちから語られている気分だった。
そして宇宙の中で自分などちっぽけな存在だと
月並みな感想を作り物の空の中で抱いた。

星の美しさを愛でるようになったのはいつ頃からだっただろうか。

中学生の頃、ふたご座流星群を見るがために
毛布に体をくるめながら、
ベッド際の窓から頭だけを出して
何十分も空を見上げ、星を眺めていた。

ひとつ、ふたつ、みっつ。
じっ、とその時を待てば、
東京でも流れ星は見える。

「流れ星を見たい」
それこそがわたしのお願いごとであり、
何かを星に願うことはなかった。

まだテレビやネットは勿論、本すらない時代、
人々はこんな気持ちで空を眺めていたのだろうかと
柄にもなく過去に思いを馳せた。

かつての人々は毎日毎日、空を見上げ、星を眺め、
その変化や発見から暦をつくり、
時間の経過や方角を知った。

「あの星がいつもの場所からずれている」
そう気づくくらい、空を眺めていた。

たくさんの星の中から、
「あの星はいつも同じ場所だ」
そう北極星を見つけるくらい、空を眺めていた。

それほどに、夜空で輝く星々は人間の心を震わせる。
何千年も昔の人も、現代のわたしも
何千年、はたまた何百万年も前の光を眺めながら、
その光を美しいと愛でつづける。
その気持ちは単純でありながら尊いものだと、わたしは思う。

わたしは今晩も、仕事終わりの帰り道に
夜空の星を見つめるのだろう。


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