見出し画像

開けたかったのはピアスか、それとも

長い髪を頭の高い位置でまとめ髪にし靡かせ、
耳元に心ときめく宝物をつけている女性。

肌にも目元にも唇にも、何も乗せていない私の目に
そんな女性がキラキラして見えたのはいつだっただろうか。



大人になった今でも注射すら怖い私が
ピアスを開けよう、と決めたのは19歳の秋。

「うん、よし。開けよう。」
そう決めた夜の次の日の朝、妙に行動力のあった私は、
授業前の時間に皮膚科に駆け込んだ。

バチン、と大きな音が鳴る。

耳たぶを保冷剤で冷やしていたのが功を奏したのだろうか。
痛みはほとんどなく、あっさりと両耳に穴が空いた。

学校へ向かう電車の中で、痛みが遅れてやってくる。
ジンジンとした鈍い痛み。

「今朝開けてきたんだー」
なんて友達に自慢げに話す。

「ピアスの方がイヤリングより売ってるしさ。」
なんて、オシャレしたい気持ちは嘘じゃない。

「イヤリング、きつく締めてれば長時間つけてると痛くなるし、
 ゆるく締めてると知らぬ間に無くなっちゃうし。」
これも、嘘じゃない。痛くてデートの途中で外したこともある。

でも本当は、そんな理由は大した理由ではなくて、
手早く少しでも大人になりたかったのだ。

ピアス開けてない大人だっていっぱいいるのにね、
と今となってはそう思う。

当時私は、8歳年上の人に恋をしていた。
19にもなって垢抜けない自分が悔しかった。

些細なことでもいい、今の自分から変わりたい。

自分のこの行き場の無い、何かがこもった心に、
新しい風が吹くような風穴を開けたかった。

ピアスを開け、ジンジンと痛む耳に私はドキドキした。
大人の階段を一歩登ったような、
清廉な身体を失ったときのような気持ち。

わたしはあの時、確かにそんな気持ちだったのだ。


画像1

今年できたこと何かなーって振り返ったら良い成長に気づけたので、
お祝いに今年最後に自分へ買ったピアスたち。

最後まで読んでくださり、ありがとうございます! コメントもいつでもお待ちしております。