開けたかったのはピアスか、それとも
長い髪を頭の高い位置でまとめ髪にし靡かせ、
耳元に心ときめく宝物をつけている女性。
肌にも目元にも唇にも、何も乗せていない私の目に
そんな女性がキラキラして見えたのはいつだっただろうか。
◇
大人になった今でも注射すら怖い私が
ピアスを開けよう、と決めたのは19歳の秋。
「うん、よし。開けよう。」
そう決めた夜の次の日の朝、妙に行動力のあった私は、
授業前の時間に皮膚科に駆け込んだ。
バチン、と大きな音が鳴る。
耳たぶを保冷剤で冷やしていたのが功を奏したのだろうか。
痛みはほとんどなく、あっさりと両耳に穴が空いた。
学校へ向かう電車の中で、痛みが遅れてやってくる。
ジンジンとした鈍い痛み。
「今朝開けてきたんだー」
なんて友達に自慢げに話す。
「ピアスの方がイヤリングより売ってるしさ。」
なんて、オシャレしたい気持ちは嘘じゃない。
「イヤリング、きつく締めてれば長時間つけてると痛くなるし、
ゆるく締めてると知らぬ間に無くなっちゃうし。」
これも、嘘じゃない。痛くてデートの途中で外したこともある。
でも本当は、そんな理由は大した理由ではなくて、
手早く少しでも大人になりたかったのだ。
ピアス開けてない大人だっていっぱいいるのにね、
と今となってはそう思う。
◇
当時私は、8歳年上の人に恋をしていた。
19にもなって垢抜けない自分が悔しかった。
些細なことでもいい、今の自分から変わりたい。
自分のこの行き場の無い、何かがこもった心に、
新しい風が吹くような風穴を開けたかった。
ピアスを開け、ジンジンと痛む耳に私はドキドキした。
大人の階段を一歩登ったような、
清廉な身体を失ったときのような気持ち。
わたしはあの時、確かにそんな気持ちだったのだ。
◇
今年できたこと何かなーって振り返ったら良い成長に気づけたので、
お祝いに今年最後に自分へ買ったピアスたち。
△
最後まで読んでくださり、ありがとうございます! コメントもいつでもお待ちしております。