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生産者を巡るということ

昨日は佐賀にある牡蠣の生産者さん、海男さんのもとを訪ねました。

海男こと梅津さんは、すべて独学で牡蠣のいろはを学び、独自の手法で美味しい牡蠣を養殖していました。

牡蠣の成長過程を完全に把握して、どのタイミングで海から引き上げれば、透明感のある味わいになるのか、はたまた濃厚でミルキーな味わいになるのかを熟知しています。牡蠣の殻の形状まで狙って生育できるというのですが、その理由を聞くと我々でもなるほどと思えるものでした。

そして、つい先日に行われた「にっぽんの宝物JAPANグランプリ」では見事最優秀賞のグランドグランプリに輝いています。

昨日は到着してすぐに船で漁場に連れて行っていただき、船上で解説を聞きながら生牡蠣をいただくと、ガツンとした海水の塩味の奥からミルキーながらもくどくなく透明感のある味わいを感じられます。牡蠣の種類も「ふわふわ」や「オトフセ」など、さまざまなものがあり一年中牡蠣が食べられるようにバランス見ながら生育させているようです。

そんな牡蠣博士である梅津さんは、美味しく食べる方法も熟知していました。
梅津さんのおすすめの食べ方は、生牡蠣にはタバスコを垂らした後に、レモンを絞るというもの。辛味と酸味がグッとキレを出して、後から牡蠣の旨みと甘味がじわーっと口の中に広がっていきます。いくらでも食べられそうです。

焼き牡蠣にすると、ぎゅっと詰まった牡蠣の旨味がドーンと広がり口福が訪れます。ここから梅津さんによる料理人さながらの牡蠣フルコースをいただきました。

〆には有明海の海苔を巻いた塩おにぎりと牡蠣の味噌汁。パリパリの海苔とふっくらと握られたおにぎり、塩の塩梅も絶妙で旅の疲れも吹き飛ぶ美味しさでした。
牡蠣の旨味に対して、旨みを重ねるような料理もあれば、いろんな酸味でキレを出すアプローチもあり、こんなに牡蠣を堪能したことはありません。自分たちもとても勉強になる組み合わせで、シェフも脱帽ものでした。

さて、僕らは牡蠣について教えてもらいながら、食べさせてもらいながら、梅津さんの熱い人柄と利他の精神に完全に心を奪われて、ファンになっていました。生産者の方を巡る理由はそのモノの素晴らしさに触れるだけではなく、作り手の考え方や哲学に触れた上で僕たちがその商品の語り部となり、お客様に伝えるためです。牡蠣や有明海の未来を考えて自らを犠牲にしながら戦っている梅津さんの話を聞いて、僕たちにできることが何なのかを考えさせられました。

生産者をめぐる旅は、気を付けなければスタンプラリーのように訪問報告で終わるようなことになりかねません。その場限りで終わらせることなく、僕たちのフィルターを通した料理とプレゼンテーションで、自分たちの言葉で生産者の想いを伝えていく必要があります。そう感じて背筋が伸びる想いでした。

これからも、僕たちは旅に出ます。
そこで得た体験を全てのせて料理を作り、美味しさだけではない感動をお客様に届けるためです。
そんな当たり前に思えるようなことを忘れずに、僕ららしく、僕らにしかできないやり方で感動を生む食体験を届けていければと思います。

海男さん
ありがとうございました!

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